蔵前バイオ通信 第13号 2011年10月01日

*******************目次 ***********************
1.再生可能エネルギー特別措置法が成立
2.孫氏の自然エネルギー財団設立
3.アルジェ研究会(藻関連)動き出す
4.林業再生モデル地区での生産性向上実践成果は?
5.小規模発電(50KW級)のコスト試算
6.ホームページの内容と更新状況
A.コラム 技術者がバイオマスを語る
B.ニュース&トピックス
7.世界のバイオマス情報佐野レポートから抜粋
(1)再生可能エネルギーの経済効果
(2)再生可能エネルギーの経済負担
(3)新型の知能ネットワークと蓄電装置

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1.再生可能エネルギー特別措置法が成立


この法案は太陽光、風力、バイオマスなど再生可能エネルギー(RNE)からの電力
を固定価格で全量買い取るもので欧州各国では既に実施されている(FIT)。
原案は買取り価格全て一律としていたものをRNE種類別に平均的なコストを考慮し
て決めることになった。この価格を決める方式も経産省ベースの調査会でなく国会が
承認した委員会で決めることになった。

電力会社や産業界の思惑を外した第3者的判断がなされるものと期待される。ただ推
進を阻む日本の事情がある。電力会社の安定供給に支障という理由で買い取りを断ら
れること。送電網が9地域ごとに最適の構造になっているため相互の譲り合いができ
ず例えば北海道の風力電力を東京で使えない矛盾がある。電気料金の上昇を抑えるた
めにRNE総量を規制しようとする動きもある。
20127月から始まる新法の成否は
これからの運用ルールによって決まる。


2.孫氏の自然エネルギー財団設立


ソフトバンク社長孫正義氏が設立した「自然エネルギー財団」がいよいよ動き出す。
世界の100人の科学者を集める構想からスタートし、その理事長にはスウェーデ
ン現役エネルギー庁長官のトーマス・コバリエル氏を抜擢した。世界に向けた
情報発信基地になりそうである。

同時に「アジア・スーパーグリッド構想」を打ち上げ、韓国・中国は勿論インドやロ
シアまでを含むネット作りを目指そうという雄大なもので海底ケーブルの利用も含ま
れている。政官で方針が定まらない中、民間から将来を見据えた積極策が出てくるの
は歓迎である。


3.アルジェ研究会(藻関連)動き出す


広谷理事がリーダーになって9月度会合が開かれた。海外と国内の藻類に関する各種
プロジェクト情報が紹介された。注目は
筑波大学渡辺信教授が中心になって作った
「藻類産業創生コンソーシアム」(開始
2011.4)で多くの企業・大学が参加している。
面積当たり生産性目標は油容量で:134l/ha・年である。会員の武藤さんが棚田を利
用した藻の栽培を検討中であるが具体案はまだ決まっていない。


4.林業再生モデル地区での生産性向上実践成果は?


農水省が21年度の予算を使って全国5ケ所のモデル地区で行った路網整備・先進林
業機械(タワーヤーダーやウィンチ付トラクターなど)の導入による林業生産性を実
際にやってみてどうであったかのか評価がまとまった。
例えば高知の例では生産性
7.6m3/人日(全国平均3.6 m3/人日)、コスト4,670m3/
(全国平均8,763
円)とほぼ倍増した。作業に慣れればもっと上がる可能性がある。
モデル地区がたった5ケ所であること、補助金に頼らないとこれら機械の導入ができな
いこと、この事業自体単年度で終わることなど問題点が浮き彫りになっている。東北大
震災で国家予算が縮小する中補助金頼りの推進には問題がある。全国の山林を活性化す
るには自立的に経営を安定化する仕組みを見つけ出さないと机上のプランで終わるので
はないか。


5.小規模発電(

50KW級)のコスト試算


自然エネルギー発電はコストが高くなる。会員の岸本さんが地域で実用化したい50KW
級の原価の検討を行った。太陽光、風力は設備利用率12%2030%と低いためコスト
は高くなる。地熱や小水力発電は設備費が高いが設備利用率は
5080%
程度と高い。
これらは設備さえ導入できれば人件費はそれほどかからない。木材を利用した熱電併
給型発電は材料調達・運転に費用がかかる欠点はあるが設備投資は安い。この労務費
はその地域の雇用を確保し、地域活性化の原資となる。
今後さらに詳細を詰めてバイ
オマス・ガス化発電の位置付けをはっきりさせたい。


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  6.ホームページの更新状況

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 —-  A.コラム技術者がバイオマスを語る —-

(1)アンテイキテラ ジョー・マーチャント著  文芸春秋
クレタ島近くの海底で発見された古代の文明機械の内容が明らかになってきた。
極めて高度な技術が使われ、精密機械・コンピューターである。

(2)「進化の運命」        
イモン・Cモリス              講談社
古生物学者の著者が語る人間が現れたのも進化の必然をたどって来た証である。

(3)
奪われる日本の      
平野秀樹、安田喜憲 著  新潮社
日本の森や水が外資から狙われている。

(4)
フリーフォール
        ジョセフ・E・ステイグリッツ著  徳間書店
グローバル経済が破綻した。新しい金融・経済システムの再構築が必要になる。
新しい社会システムが必要になる。


(5)
滞在先のおおカエデ伐採記録
              荒川英敏
英国では庭の木でも伐採する時には役所の許可が必要である。

(6)
英国に学ぶ住宅観       
      荒川英敏
長期間維持可能な家を作る。古いほど不動産価値があがる。

(7)
ロンドンの公園に蒸気機関が現れる 
     荒川英敏
1世紀前の蒸気機関車を使って回転木馬を動かしている。

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B.ニュース&トピックス —-

(1)
コスト計算の見方について        吉澤有介
バイオマス製造の原価計算をするに際してその費用が地域に循環するものか、外部流失か、
海外に流れてしまうか考慮する必要がある。

(2)蜜集めと受粉に忙しいミツバチ達     荒川英敏


(3)
電力独裁が国の将来を誤らせる       佐野

エネルギー政策は国防と同列の国家安全保障の核である。これが現在の発電・送電・販売
を独占している電力会社の損益によって左右されることは国の存亡を誤らせることになる。

(4)フクシマバイオ燃料1号”よみがえる土”の創出 小林 隆夫
福島原発被災地にバイオマスタウンを創設し、糖質原料の甜菜を育ててバイオエタノー
ルの製造を提案している。
http://www.kuramae-bioenergy.jp/news/?p=605


**********  7.世界のバイオマス情報 **********


再生可能エネルギーの推進に関する論調が多く報告されている。先進国のUEやドイツからの引用を3ケ取り上げる。
(1)再生可能エネルギーの経済効果
多くの研究が代替エネルギーへの転換に伴い雇用が増しGDPが増えることを示している。2020年までにEUの再生可能エネルギー市場で280万の雇用が生まれる予測で、マイナスの影響もあるが差し引き40万人のプラスになり、EUGDP0.24%押し上げる。
(2)再生可能エネルギーの経済負担再生可能エネルギーへの転換は21世紀最大の挑戦であり、経済性のあるエネルギーを確保するには、エネルギー効率の改善と再生可能資源の開発にさらなる研究が必要である。「再生可能エネルギーの拡大に伴って、当初はコストの増加を伴うが2015年の170億€をピークに減少に向かう。この額はドイツのエネルギーコストの約8%に当たり、その後は減少する。」
(3)新型の知能ネットワークと蓄電装置エネルギー供給システムは少数の発電プラントによる集中型から、再生可能な技術を利用した分散型に変る。日照や風力の不規則から生ずるギャップは、調整用や制御用のプラントで状況に応じて迅速に調整できることが必要になる。対応策としてはガスを使った熱併給発電所、蓄電施設、拡張ネットワークなどを組み合わせた過度的技術が考えられる。究極の形は高度な技術を駆使した知能的なネットワークである。具体的には対応力のよいスマートグリッドであるが、その実現には多くの開発努力が必要である。

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