蔵前バイオ通信 第10号 2011年4月06日

*******************目次 ***********************
1.東日本大震災発生と原発事故
2.エネルギー生産のあり方について
3.バイオマスガスの小型発電機の開発(Ⅱ)
4.バイオマスタウン構想の成果
5.オーストリア大使館主催のセミナー
6.ホームページの内容と更新状況
A.コラム技術者がバイオマスを語る
B.ニュース&トピックス
 1次エネルギー呼び方の提案
7.世界のバイオマス情報佐野レポートから抜粋
(1)米国経済と石油離れ
(2)セルロースからイソブタノールを作る微生物開発
(3)欧州 2050年以降ガソリン/ジーゼル車を禁止************************************************


1.東日本大震災発生と原発事故


311日東日本沖合のプレート境界にて長さ500km、幅250kmにも及ぶ地層が一挙に
5m隆起して動き、M9.0の巨大地震が発生した。
これに伴って発生した15mを超える大津波によって想像を越える被害が発生した。

亡くなられた方々のご冥福をお祈りすると同時に被災された皆さま方に心からお
見舞い申し上げます。
福島第一原発もこの影響をもろに受けて冷却系統が制御不能に陥り使用済み燃料
から放射線が大気に放散される環境汚染被害が出ています。
問題解決の見通しは定かではないが長期間かかるものと思われます。この事故を
きっかけに世界各地で原発の安全性の見直しが行われている。
またクリーンエネルギー確保の点から世界のエネルギー政策そのものの再検討が
必要となってきている。
当NPOもバイオエネルギーをより一層みなさま方に活用してもらうべく活動を
続けています。


2.エネルギー生産のあり方について


今回の東電福島原発の事故は大きな問題、「原子力発電安全性の再構築」を全世
界に提起した。温室ガス発生の少ない資源として原子力に期待する流れがあった
が放射能汚染の取り扱いがいかに難しいかを露呈しその対応が複雑になってきた。
現在稼働中の原発施設の安全対策を緊急に進めると共に、より安全な自然系エネ
ルギーへの強力な推進を図っていく必要がある。
太陽光、風力やバイオマスなど発電資源を多様化しこれらの生産量をアップする
ことがまず急がれる。暖房、湯沸し、発電を同時に行う熱電併給を行ってエネル
ギー効率のアップを図る必要もある。これら自然系の小規模施設を網の目状にセ
ットすれば地域で完結できるエネルギー供給ネットワークが完成しコンビニに代
表される便利さだけを追求する生活ではなく、いくらかでも待つことが普通の数
十年前の社会に戻りましょう。石油が使えるのは後わずかです。

節電して身の丈にあった我慢する生活、屋外に出て汗をかき暖房に頼らない生活
をこの際再構築しましょう。


3.バイオマスガスを利用した小型発電機の開発(Ⅱ)


前9号でバイオマス小型発電機の話題を提供した。この話をある発電機メーカー
に提案したら早速共同実験をやろうと具体的な進展があった。
大地震が発生した
311日がその第1回実験の立会い日で、丁度バイオマスから得
られたガスでエンジンを駆動させている最中に大きな揺れが来て一時停止した。
しかし幸いデータはしっかりと記録でき、その結果は期待した通りの成績であった。
関係者の中にはよほど嬉しかったのか、電車が止まった中、20km近い道のりを歩い
て帰宅した人もいた。その詳細データはいずれ公表するが開発は少しずつ進んでい
ることは確かである。また政府関係者間では地産地消に適した小型のバイオマスガ
ス化炉には補助金をかけて開発してきたものの殆どが失敗しているとの認識がある。
タールも発生しないこのタイプの炉(NFK)の存在は間もなく市場に知れる事に
なるだろう。


4.バイオマスタウン構想の成果


総務省がバイオマスタウンの成果を評価している。全国で286市町村が補助金を
得て平成16年から活動しているがその進捗を管理する、その効果を測定するとい
った基本事項もフォローしていない所がほとんどだという。補助金で設置されたバ
イオ関連施設で効果を発揮できているのは約10%のみ。
莫大な予算を薄く広くばら撒くのが今までの政府の方針であるがこのような方法で
は何も成果が生まれない。開発や調査研究に多額の予算を重点配分し、その成果を
広く活用するような方針に変更すべきである。


5.オーストリア大使館主催のセミナー


「森からのエネルギー創出」と題するセミナーが開かれ300余人の出席で盛り上が
った。木材に関する生産システム、バイオマスの利用、新建築用資材などのカテ
ゴリーに分け、基調講演の後、オーストリアの商社・メーカーから技術と製品の
紹介があった。高燃焼効率のストーブや木造高層ビルの話など森林先進国からの
明るい参考になる話題が多く有意義であった。


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  6.ホームページの更新状況  
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—-  A.コラム技術者がバイオマスを語る 
—-(1) 森からの手紙 盛口満 創元社
飯能の理科の先生が身の回りで動き回る動物たちの風物詩。
ムササビの話などユニークである。

(2) 気候文明史:世界を変えた8万年の攻防 田家 康 
氷床や海底堆積物を分析した結果分かったことー想像以上の気温変化があった。 (3) 葉緑体人間は可能か 橋本隆一郎
SF的発想で話を展開、ヒトもシアノバクテリアを取り込んで光合成ができるか?
(4) 植物は根を張らないと大きく育たない。
米の「龍の瞳」や津軽の木村さんの「リンゴ自然栽培」に見られる根を大きく育てるこ
とがコツである。


—-
  B.ニュース&トピックス —-

(1) 再生可能エネルギーと持続可能エネルギー
佐野さんに定義の明確でない両者について調査してもらった。「持続可能エネルギー
は将来の世代のニーズを侵すことなく現在のニーズを充足することができるエネルギ
ーで、再生可能エネルギーと、エネルギー効率の二要素がある。」というのがある。
しかし再生可能の意味合いには問題がある。

1次エネルギーの呼び方について再生可能エネルギーは「バイオマス由来のエネルギ
ーに限定」し、非化石エネルギーは「自然エネルギー」と呼ぶことを提案した。


**********  7.世界のバイオマス情報 **********


(1)   米国経済と石油離れ
巨大な人口をかかえる中国とインドの経済革命が、世界の石油需要の25%を消費してい
るアメリカ人の生活を危機的な状況に追い込んでいる。石油代替として電気は太陽光
や風力で開発が進んでいるが輸送用代替燃料については目途がついていない。エタノ
ールは過度的なものであって決定打ではなく、再生可能な燃料が実現しなければ問題
は解決しない。
(2)   セルロースからイソブタノールを作る微生物を開発
イソブタノールは、エタノールより効率のよい自動車用燃料で、あらゆる比率でガソ
リンと混合でき、現有のエンジンを直接使用できる可能性がある。
セルロース系バイ
オマスの製造には複雑な工程が必要で直接合成できるような菌は自然界には存在しな
かったため人工的な開発(
ヒストリチクム菌が必要だった。先行メーカーからの特
許の問題など不安材料はあるが試作には成功した。

(3)   欧州 2050年以降ガソリン/ジーゼル車を禁止
欧州委員会がガソリンとジーゼルを使用する自動車を2050年以降は禁止する計画であ
る事を明らかにした。これが決まるとニアゼロ排出の輸送システムへの転換推進政策
が遂行しやすくなる。自動車メーカーなどは大反対の声明を発表している。輸送燃料
の長期的な道筋を提示することはエネルギー政策を進めるためにも必要な事である。
 

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