光合成とはなにか 園池公毅 2010.12.13 

   今年のノーベル化学賞を受賞した根岸博士が朝日新聞のインタビューで
 「これから、化学が解決していくべき課題は何でしょうか?」と質問を
 受けて「太陽がやっている光合成を、いまだに人工的な化学反応ででき
 ないことです」と述べている。

 人工光合成の話を聞きますがまだ夢のまた夢といった段階のようです。
 光合成とは「光によって環境中の物質から還元力を取り出しその還元力と
 エネルギーによって二酸化炭素を有機物に固定する反応である」というの
 が定義です。

光合成細菌
光合成生物の中で最も原始的なものが光合成細菌である。光の力で二酸化炭
素の炭素は固定できるが酸素を発生することはできない。
水を分解する還元力を持っていないためである。
還元するためには有機物や硫化水素などの力を必要としている。

光合成色素としてバクテリオクロロフィルを持っていて光を吸収している。

酸素発生生物の誕生
シアノバクテリアが生まれ酸素の発生が可能になった。
2種類の合成細菌が合体し、水の分解が可能になり、色素がクロロフィルに
変わる進化を行った結果これが生まれた。

細胞の中に光合成に特化したチラコイド膜を持っている。

葉緑体とシアノバクテリア
植物の中の葉緑体の中には何層ものチラコイド膜の重なりが見られこれが光
合成を行っている。これはシアノバクテリアが宿主の陸上植物(真核生物)
細胞の中に取り込まれた共生によって生じたと考えられている。

色素と光の吸収
葉には、ある安定したエネルギーレベル(基底状態)とその上のエネルギー
レベル励起状態がある。ある光の波長が励起状態と同レベルの場合光の吸収
が行われる。植物は主として赤と青色を吸収するため残りの緑色が反射され
緑色に見えるわけです。

光合成色素には3種類あるが、その構造は分子がいずれも二重結合と一重結
合が交互につながった共役二重構造になっている。
この構造は小さなエネルギー(=波長の長い)を吸収できることができる。

アンテナと反応中心クロロフィル
クロロフィル1分子で光の吸収はできるが効率良く働くために大掛かりな光
学系クロロフィルタンパク複合体ができている。
100分子以上のクロロフィル
でできていて働いた分子がそのエネルギーを反応中心クロロフィルに渡して
いく(この部分をアンテナ
/集光装置と呼ぶ)。
このようにして生物が使える形に変える反応が開始する。

呼吸の仕組み
ご飯を食べるとアミラーゼの働きでデンプンを糖に分解し更にピルビン酸と
いう物質を作る(解糖系)。
この過程で糖にリン酸が付いたATPができる。
これがエネルギー源として働く物質である。

ピルビン酸(炭素3ケ)はオキサロ酢酸と反応してクエン酸(炭素6ケ)を
作る。クエン酸は複雑なクエン酸回路を通過して再びオキサロ酢酸に戻る。
この回路の中で還元力として働くNADHを生成する。

回路とは何か
無機物の反応は電子のやりとりにより一方向に進行する。
光合成の場合ある物質Aが物質Bと反応して物質Cを形成すると同時に次の
反応を伴って別の物質を作り出しながら物質Bを再生していくというサイク
リックな動きを行っている。

小さなエネルギーを使って数種類の複雑な反応を行いながら進行しているよ
うで発見者や生成された物質などの名前がその回路に付けられている。

有機物の燃焼と呼吸による有機物の分解
燃焼の場合はエネルギーが熱となって一気に放出してしまう。
呼吸による有機物の分解はクエン酸回路を通すことによりエネルギーを小刻
みに取り出しATPとNADHを作り出す反応である。

還元する力は電子の移動によって行われ、常に酸化還元電位の低い物質から
高い物質に流れる。

光合成の時の電子伝達
呼吸の場合は解糖系とクエン酸回路でNADHという還元力を持つが光合成
は何も持っていない。光合成の場合は電子伝達が水の分解(酸素の発生)か
ら出発してNADPH(リン酸が付いたもの)へと移動する。
このNADPHが細胞の中で還元力として作用する。
プラス電位からマイナスの電位の流れですから通常では起こりえないことで
すが光のエネルギーを2回使うことでこのようなことが可能になったもの。

 光によって電子移動を行う光学系の仕組み
光学系Ⅱ:巨大なタンパク質複合体 「水を分解して酸素を発生する」部分
を担当する。

光学系Ⅰ:フェレドキシンというFeSクラスターが還元剤になって二酸化
炭素の固定や窒素同化反応を実行する。

カルビン回路
米国のカルビンたちが二酸化炭素を固定するメカニズムを明らかにした。
最初PGAと称する有機酸に固定され、さらに複雑な化合物が作られ、最終
的にデンプンになる。

二酸化炭素の固定反応は糖RuBPとCがくっ付きPGAができる。
この反応の触媒がルビスコである。

RuBPの再生反応:ATPとNADPHを使って再度RuBPを作る回路
がカルビン回路である。

ルビスコと光呼吸
この酵素は変わっていて葉のタンパクの3割を占めて地球上で最も多い酵素
である。活性度が低く反応時間がかかることと酸素とも反応する。
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光合成について要点を書きましたが内容は非常に難しい。
これを読んでも理解できないと思いますので是非本を読んでください。
何人ものノーベル章受賞者が研究を重ねてきて現在の知見が得られているが
まだ分からないことがたくさんあるようです。

遺伝子操作で部品を入れ替えて人工でできるような簡単な反応ではない。
また植物にPやFeがなぜ必要かも仕組みを知ればよく理解できます。

       記 福島 巖

カテゴリー: バイオマス パーマリンク

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