「水を守りに、森へ」シカの被害 山田 健 著 筑摩選書

シカ食害被害の状況を上記書籍から要約します。

1. なぜシカが増えたのか。
 

 ・戦後の日本のシカは、絶滅の危機に瀕した。
 
 ・戦後の食糧不足での食用と、占領軍兵士の狩猟圧
  (ストレス解消の目的)による。
 
 ・その反動で、過剰なまでの保護政策が採られた。
 
 ・その時期に拡大造林によって、鬱蒼とした森を伐採し、
   背の低い苗木を大量に植林した。
 
 ・植林後、5年、10年は、大量の草が繁茂して、シカの餌が大量に供給された。
 
 ・驚くべきスピードでシカが繁殖しても、当局は気がつかず、保護政策は続けられた。
 
 ・既に、充分以上に増えていた時期でも、オスだけの狩猟しか解禁しなかった。
 
 ・増え続けたメスは、3年~9年まで、妊娠して増殖し続ける。
 
 ・数年まえに、やっとメスも狩猟解禁となったが、猟師は高齢化して不足している。
 
2. シカの食害の実態と弊害の発生

 ・人工林の間伐がシカを増やす事態になる。間伐によって地面に生えた草が餌になる。

 ・間伐されて地面に生えた草は全て食い尽くされ、雨水が直接地面を削る様になる。

 ・雨水の直撃を受けた土壌は、表土流出が激しく進行する。

 ・表土流出によって、根っこの部分が露出し始めて、土砂崩れの危険性が増える。

 ・従来はシカの生息域でなかった1500m以上の高地に、えさを求めて進出する。

 ・2000m級の高山まで進出して、貴重な高山植物を喰い尽くし始めている。

 ・下層の植生が消滅し、それに依存していた昆虫なども絶滅する。

 ・その昆虫類に依存していた鳥類も激減する恐れがある。

 ・林地に留まらないシカが増えて、副産物の「ヤマビル」と一緒に農地に進出する。

 ・シカの群れごとに、好きな植物が違う。
   モミの皮。ヒノキの皮。ミズナラの皮。
  ミズキの皮。
  (筆者の目にした被害は、赤城のミズキの森が、数か月で全滅した。)

 ・シカの口が届く2mくらいの高さまでの枝は全部喰われてしまっている。

3.シカの被害実態調査は、いまだ進行中で、対策は手遅れ気味

 ・林野庁&各県の森林関係者は限られた予算の中で、被害調査をする段階である。

 ・被害を防ぐ対策は、試みられているが、成功例は、「柵を張りめぐらす」

 ・シカの食害を受けた土壌が、樹木の栄養源に影響を受ける被害度は調査の段階。

 ・表土の流出により、貧栄養の土壌になると大木が弱って倒れる危険性が増える。

 ・樹木が枯れたり大木の根が弱ると、山地の大崩壊の恐れが増えるが、調査の段階。

 ・表土層と樹木の減少によって、山林の水源涵養力が衰えるが、調査段階である。シカが山を崩し始めている現状を見た識者は、「これはもはや、国土防衛の段階だ」と危機感を表している。
      要約 渡辺 正樹

当NPOの吉澤は自衛隊に出動願って麻酔銃でシカを捕らえてそれを自衛隊の食料の一部として消費したらどうかと主張しています。
肉を食用にする食習慣を成立させないと積極的に捕獲しようとする動機が生まれません。
      (福島 巌)

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