森林吸収源対策を見直そう?

「日本に健全な森をつくりなおす委員会」の提言書で森林吸収源対策について
温暖化防止対策として実施されている「森林吸収源対策」は、森林組合改革の
推進をさまたげるので見直そうといっている。

「森林再生」が、林業にとっては“低炭素社会格集に貢献する唯一の道である。
しかし現行の温暖化防止策として実施されている「森林吸収源対策」は、実施
する森林組合が「利益が出ない」との理由で伐採した材を林地に残してしまって
いることや、1600億円弱と巨額なために、森林組合がその“公共事業から抜け
出せない体制をつくってしまっている。
「林業改革Jを進めるうえではむしろ障害となっているので、ただちに見直すべ
きである。

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以下の様な趣旨であると、理解しています。

<要旨>
1. 森林吸収源の定義は、森林地において、適正な保全業務や育林作業を実施
している、森林面積で、「CO
2吸収」の役割をしているとみなされる。

2. 日本は京都議定書の6%削減のうち、36%分を森林吸収源による削減で
賄う。として、国連の了解を取り付けた。

3. 日本の人工林のうち、半分以上が手入れ不良の放置林となっていて、
(間伐などの)育林作業をしていないので吸収源とはみなされない。

4. あわてた政府関係者は、2005年頃から、急遽間伐作業を実施することに補助
金を大量に用意して予算のゆする限りの面積で間伐に金を出し始めた。

5. 補助金をとりたい事業者は、手あたり次第の間伐(残す樹木を慎重に選択せ
ず)作業を実施して、当面の食いぶちを得ることに狂奔している。

6. この実態をみても、林野庁を始めとした農水省関係者は、目をつむって、と
にかく、
2008年から2012年における「森林吸収源」となる森林面積の確保だけ
を、優先課題としている。

7. 心ある林業関係者は、この事態に危機感を持っているが、【50年を見据えた
森林育成】の課題に対する代替案を持っていないので、大きな声をあげる事が
出来ない。

8. 理想とするフォレスター制度、森林組合の育成からは、ほど遠い林野庁の政
策は、その場限りの政策の不備の典型であり「林業改革」の障害になっている。

以上のややこしい現実の結果が、「異常な切り捨て間伐」の全国的な普及です。
それでも、まったく間伐をしていない人工林にとっては、切り捨てであっても、適
切な間引きがされるのであれば、国民の税金を使ってでも、とにかく
2012年までは
間伐に対する補助金行政は続くことでしょう。

◎代替案【森林吸収源対策】としては、
・過度の間伐は制限する。(面積間伐率で30%以内)

・間伐後の林地残材の利用の義務付け。(間伐材の80%以上を集材して利用)

・木材利用に適さない木質材は、エネルギー利用を奨励する。
(チップボイラー燃料、木質ペレット製造、木質端材のガス化、バイオマス
  発電)

・以上の施策を実施可能にする、一括交付金の大幅な財源の移譲
 (森林管理の市町村に)

この森林の健全な育成と利用について、「森林吸収源」としての価値を、どのよ
うな制度で評価して、適正な税金の使い方をするか。
また、国際的な枠組みのなかで評価して、

「森林資源を人類にとっての利用法・制度」、「豊かな地球生物の生態系保全」
価値との両立を図っていくのか、重要な課題です。

日本の山と川と野、そして海の資源にも影響を及ぼす林業の健全化を、ビジネス
視点だけから見る危険性も配慮しておく必要があります。

  渡辺雅樹

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