遺伝子技術とクローン   生田 哲著        日本実業出版社

クローン技術とは
DNAを大量にコピーすること。ある生物の遺伝子(A)を別
の生物(B)に移す場合酵素という特別なタンパク質にやって
もらっている。この操作を組み換えDNA技術と呼んでいる。
一般的には外来DNAを微生物(大腸菌など)に入れて組み換
え体を作りこれを培養することが多い。
この培養によって同じDNAを大量に作り出すことをクローン
技術と呼ぶ。
DNAを切ったり貼ったりしてくれるのが酵素である。

制限酵素とは
DNAを切断する酵素が発見された。
バクテリアのリング状DNA(プラスミドと呼ばれる)の上に
ある酵素である。

バクテリアは抗生物質を与えても全滅しないで必死に生き残ろ
うとする仕組みが働く。例えば大腸菌のプラスミドには薬剤耐
性遺伝子と制限酵素を乗せていてこの役割を果たしている。
バクテリアに感染する微生物バクテリオファージが存在してい
る。その一つλファージが大腸菌を乗っ取ってしまいλファー
ジタンパク質を作って大腸菌は死んでしまう。
ところが大腸菌の特定のある種類ではλファージを殺してしま
い菌が生き残った。
この役割をしたのが制限酵素である。

制限酵素の仕組み
大腸菌で最初に発見された制限酵素をイコアールワンと命名さ
れた。働きを調べた結果DNAはある決まった箇所、ある一定
のパターンで切れていることが分かった。
例えばイコアールワンはGAATTC,またはCTTAAGの
文字を見つけたらきってしまう。
その後この作用をする酵素がたくさん見つかっている。

DNAの断片をつなぎ合わせる「DNAリガーゼ」が1973年ボ
イヤーとコーエンによって発見された。

「種の壁」と遺伝子組み換え
種の異なる生物同士は自然界では交配しないという原則がある。

遺伝子組み換え技術
プラスミドを制限酵素で切ると直線状になる。目的のDNAを
切り取って糊で貼り付ける。
これを混ぜ合わせるとまたリング状に戻って組み換えプラスミ
ドが完成する。これをホスト細胞に移すと増殖し、組み換えの
無かった大腸菌は死滅してしまった。

DNA技術の進歩
微生物に有用タンパクを作らせるためには目的とする遺伝子を
コードする必要がある。自然界から探してくる方法と人工的に
作り出す方法がある。
化学的に合成するには4ケの大きな障害があったが現在ではい
ずれも解決して30分くらいの時間でできてしまうまでに進歩
した。

動植物に組み替え遺伝子を使って品種改良する
哺乳動物へは品質の高い動物を効率よく繁殖させる。医療に利
用できる薬や栄養素を獲得できる。植物へは対病性、対虫性、
除草剤耐性、痩せた土地での農作物の栽培など改良点で貢献し
ている。

遺伝子組み換え食品
農業では昔から品種改良が行われてきているがこれも遺伝子に
変化を与えたもの。
世間で言われている遺伝子組み換え品は「種の壁」を越えたと
いう報道は間違いである。特定の性質をもつ遺伝子を1、2ケ
入れ換えて性質を変えるだけでその物の本質はなんら変ってい
ない。
アメリカではアレルギー物質の有無、安全性の確認のた
め組み換え品には膨大なデーターを要求されている。

クローン羊「ドリー」の誕生
受精卵が分裂した「胚」を代理母に移植する技術は農学分野で
は発達したが(牛など)成功率が低いのとどんな牛が生まれる
かが分からなかった。親と全く同じコピーを作るべく取り組ま
れたのが体細胞のコピー。
核を取り除いた未受精卵の中に体細胞の核を入れる「核移植」
技術である。こうして生まれたのが「ドリー」である。

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