目の誕生   アンドリュー・パーカー   草思社

私達は動物の進化について余り知識が無くて、カンブリア紀
に突然変異とも言うような大進化があったというような
事実さえ知らなかった。
地球の歴史の中で生命が誕生し進化してきたが長い間極
わずかな生物がいただけであった。
ところがある短い時間帯、ある瞬間に急激な変化が発生
して多くの動物の種類が発生した。

この時代をカンブリア紀という。

カンブリア紀は5億4千年前である。
最初の化石が見つかったのが英国のカンブリア山地であ
ったのでこの名前が付けられた。
火山の噴火や地震で瞬間的に埋没し閉じ込められて動物
は化石になった。
その後カナダや中国でも見つかり調査研究が進められた。

動物の種類を分類する最大のものが門である。
節足動物、脊椎動物といった分類で区分していて現在
38門が存在する。
数十億年の先カンブリア紀にはわずか3門だけであった。
カンブリア紀のわずか5百万年の間に爆発的な進化が進
み38門の全てが出現し、それ以降に誕生した新しい門
は無い。

このカンブリア紀大進化の原因が何であったかが追求テ
ーマであった。

動物は光の影響を強く受けてきた。
光は進化の推進力である。環境中には様々な波長の電磁
波が飛び交っている。視覚を得るには目と脳が必要で
ある。色は脳の中にしか存在しない。
ハエの細い毛が等間隔に並ぶと回折格子の原理で見る角
度により特定の色を発色する。
保護色に変化して敵を欺たり、メスにアピールしたりす
るのはこの原理を使っている。

目が頭部のどこに付いているかで世界の見え方が変る。
兎のように両側に付くと360度全て見渡せる。
前面に2ケあると立体的把握が可能になり距離が把握で
きる。カニのように目の位置を変えることもできる。

目の構造は単眼のタイプと節足動物に多い複眼のタイプが
ある。良く見えるためには大きな目が、はっきり見える
ためには焦点の合う小さな目が良く、お互いに矛盾関係
にある。脊椎動物の標準装備はレンズを備えたものである。

目を備えた動物は自分の種族が生き残るために、いかにして
子孫を殖やすか、敵の襲撃にどう防備するか、周囲の環
境変化にどう対応していくかが問題になる。
食うか食われるかの激しい生存競争が発生してくる。
三葉虫に見られるように硬い皮で体を覆い更に捕食用の
鋭い爪を供えるように個体が変化する。

著者はカンブリア紀大進化の引き金になったのは目が動物に
備わって個々の動物間に生存競争が発生しそれに対応す
るため様々な進化が促進されたと結論を出している。
その典型的な例として目のない三葉虫と目が付いて硬い
外骨格をまとった三葉虫がカンブリア紀の初期と後期に
いることで説明している。

進化のトリガーについて色々な説が提案されているが
「目の誕生」説は理論的であり納得するところ大である。
推理小説のようでとっても面白かった。
        記  藤田良弘 福島 巖
           

カテゴリー: バイオマス, 気候・環境, 自然 パーマリンク

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