鉄が地球温暖化を防ぐ  畠山重篤   文芸春秋社

筆者は宮城県気仙沼湾の漁師
 
昭和初期までカキやホタテの養殖で豊かな生活ができていた。
 しかし高度成長期に湾内が汚染され赤潮により水揚げが激減した。
 河口にダム建設の話があり反対運動を展開して抑えることができた。
 漁業を再生するため彼らは手探りで広葉樹を植林する運動を始じめた。
 世界の海を調査して養殖漁場は全て大きな河川の河口付近、海水と
   淡水が交わる付近に存在することを知る。

北大水産学部松永勝彦教授
 「海藻や植物プランクトンの育成には鉄分が必要である。
 北海道日本海沿岸の磯焼けしている場所では鉄分濃度が非常
 に少ない」
 小樽などニシン御殿が建っている所もニシンを煮るために木を切
 ってしまい山が禿げてしまった。その結果磯焼けが発生するよう
 な海になってしまった。
 植物プランクトンの生育には窒素、リン、珪素等の栄養素が必須
 条件であるが体内に微量な鉄分が無いと栄養素を体内に取り込
   めない構造になっている。

フミン酸とフルボ酸
   三価の酸化鉄は粒子が大きすぎて藻類の細胞膜を通過しない。
 二価の酸化鉄で水に溶けてイオン化した状態のものをよく吸収
 する。
 森の木の葉が落ち堆積すると土中のバクテリアが分解してフミン
 酸とフルボ酸という安定した有機物質を作り出す。
 酸で沈殿するのがフミン酸、酸に溶けるのがフルボ酸である。

古代からの製鉄産業は「たたら」で作られていた
 出雲などの中国山地や東北地方の太平洋側(釜石など)がその
 中心地であった。この産地から流れ出す川に沿って世界有数の
 漁場が存在する。
      ・・・瀬戸内海・・宍道湖・・三陸海岸・・・など

温暖化対策にコンブを活用
 松永教授の主張:北海道の面積2030%の活用することで二
 酸化炭素の5億t程度が固定できる。
 これは日本で放出する量の約半分に相当する。
 コンブは平均10kg/㎡生産できる。
 10kgから0.3リッターのエタノールの生産も可能で1500万リッタ
 ーに相当し全国で使用するガソリンの2割強になる。
 北海道で鉄鋼スラグと堆肥をヤシの繊維で作った袋に入れて海
 に埋没する実験をした。コンブの繁殖に効果大であること確認済
 みである。

米国ジョン・マーチン博士の研究
  陸上の生命体は微量な亜鉛、鉄、銅などの金属がなければ
 生存しないという学説を提唱した。
 南極パラドックス:南極海は栄養塩が豊富なのにプランクト
 ンが少ないことが謎だった。
彼は微量測定方法を開発して南極海域には鉄分が極端に
少ないことを証明した。
植物プランクトンは光合成を行い酸素とブドウ糖を作り出す。
命を終えた魚やプランクトンは海底に沈むが炭素を固定して
くれている。
骨や殻も水酸化カルシウムとして炭素を固定する。

鉄炭ダンゴ

 竹炭に鉄粉(使い捨てカイロ)と粘土を混ぜて焼結したダンゴ
 を海にまいた。電位の高い鉄が溶け出してイオンになる。
 こうすると底質の土壌が改質されて貝やカニがよく育つように
 なった。ドブ川もスティール缶の活用できれいになった事例が
 報告されている。

 

話題に上がる鉄と漁業の関係

  放置されている漁船の回りが好漁場になっている例が多い。

 昔から鉄橋のある周辺で貝や魚が多い。

  関西空港の周りにコンブが大繁殖していて注目を浴びている。

  空港を作る際大量の鉄鋼スラグを埋め立てに使ったのが原

  因らしい。

 中国の旅順港のように沈没船の多い所も格好の漁場になっ

 ている。

 中国から飛んでくる黄砂は鉄分を含んでいるので日本海な

 ど恩恵を受けている。

           福島 巖  記

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