蔵前バイオ通信 第43号 2017年1月15日

*******************目次 ***************************

  1. 技術情報検討会(吉川)
  2. 事業化推進検討会(清田)
  3. アルジェ研究会(廣谷)
  4. 熱エネルギー研究会(進藤)
  5. 林業システム研究会(渡辺)
  6. Kシステム開発プロジェクト(清田・米谷)
  7. 竹林プロジェクト(篠崎)
  8. バイオチクプロジェクト(渡辺)
  9. ホームページによる情報発信
  10. 世界のバイオマス(編集・宮地)

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講演会を開催しました(11月24日)http://www.kuramae-bioenergy.jp/news/?p=1145

テーマ「海のバイオマス藻ラビリンチュラ類からの油、ジェット燃料、健康食品生産」

講師 広島大學 大学院 先端物質科学研究科 秋 庸裕教授

刺激的で興味深い、貴重な講演でした。K-BETS会員以外の多数の出席をいただきました。また、懇親会に秋先生もご出席いただき、交流を深めることができました。

例会時の勉強会を開催しました。いずれも、有益で知識欲を満たしてくれるものでした。

11月30日 :「遠くて近い草原の国モンゴル紀行 -人々の生活とエネルギー事情―」

講師 宮地利彦 http://www.kuramae-bioenergy.jp/k_info_b/?p=797

1月6日  :「イギリスのEU離脱」講師 荒川英敏 (近日中にアップ予定)

1.技術情報検討会(吉川)

技術情報検討会では毎月一度、バイオマスエネルギーに関する直接的、または関連する技術、さらに政治や経済の動きを伝える様々な情報を取り上げて、討議しています。主として技術的見地から検討して、情報の正しさ(真偽)を判断したいと思っています。

最近では、NHKスペシャルでも取り上げられた福島原発の廃炉費用の内容について掘り下げてみました。除染、賠償費用については大分見えてきたようですが、廃炉そのものの費用についてはまだこれからです。国民負担が増える仕組みが出来つつあるようです。

その前の月には、閣議決定された「森林・林業基本計画」をまな板に乗せ、多角的に討議し、ちょっと深読み(?)してみました。これも問題は多そうです。

2.事業化推進検討会(清田)

K-BETSの新しい担い手となる新会員獲得方法について検討を進めています。
昨年11月にK-BETSでご講演を頂いた広島大学秋教授のお話をきっかけとしたコンブなどの海藻を育てて藻の餌とし、それを油の原料や魚の養殖のエサとする事業を新事業として取り組むかどうか議論を進めています。

3.アルジェ研究会 発酵槽での藻の培養(廣谷)

藻は太陽光をエネルギーとし、炭酸ガスを原料として成長します。藻からは健康食品、自動車燃料、ジェット燃料などが造れます。代表的藻はボトリオコッカス、ユーグレナ等です。しかし光、炭酸ガス依存による問題が出ます。光は季節的に不安定で、水を通りにくいので池の深さを30cm以内とし、土地の価格が高い日本でも、池を広くする必要があります。オープンで培養するのでコンタミの発生、火力発電由来の炭酸ガスを利用するには浄化などの問題があります。

一方、発酵槽での藻の培養では光と炭酸ガスが不要で、その代わり発酵槽と安価な餌が必要です。生産性は圧倒的に高い。これに、成功したのがSolazyme社(現TerraVia社)です。米海軍のジェット燃料基準を米国で初めて合格しました。クロレラでやっている様ですが、日本もどんどん実施すべきであると思います。 

4.熱エネルギー研究会(進藤)

イギリスが2011年から導入した事業所向けRHI(Renewable Heat Incentive)は、バイオマス燃料、ヒートポンプ、太陽熱、バイオメタンによって生成された温水熱エネルギー1kwhに対して1ペンスから8.9ペンスの熱のFITとも言うべきインセンテイブの支給制度です。その結果、昨年4月までに対象エネルギーは累計で3200Gwhまで達しています。更に、2014年から住宅向けのRHIがヒートポンプ、バイオマスボイラー、地熱回収ヒートポンプ、太陽熱温水システムを対象にスタートし、2015年までの1年間でRHIの申し込み件数は4万件を超え、そのエネルギー量も176Mwhとなり、確実に進捗しています。日本もそろそろ発電に対するFITだけでなく、イギリスのRHIの様に再生可能エネルギーによって生成された熱エネルギーに対して、インセンテイブを支給する制度の導入を検討する必要があると思われます。 

5.林業システム研究会(渡辺)

日本の林業の生産性向上を図って、輸入依存率を減らしていく目標を達成するには、現場に入って伐採と集材作業の段取りする以前に、林地の樹木の実勢を把握しておく3Dレーザー測定の技術を開発して、「現場の状況を見える化」していく事です。研究会では、この課題の情報収集をして、適切な支援策を検討します。また、空中集材システムの現状を把握して、今後の実用化へのポイントを研究し、実現可能な方策を各方面に提供していきます。

6.Kシステム開発プロジェクト(清田)

Kシステムは昨年、需要家の様々なご要望に対して、湯河原山林で3か所、真鶴白銀林道の10か所、北都留の2か所など多くの現場で伐採木の搬出に関わってきました。Kシステムの持っている潜在的な力や長所を確認できると共に、多くの課題も明らかになりました。今年は本格的な商業化に向けて、今までに得られた知見や今後の林業界の動向を勘案しながら、具体的にどう取り組んでいくかじっくり検討していく年としたい。 

7.竹林プロジェクト(篠崎)

①「竹炭シンポジウムin知多」が11月19日(土)に愛知県知多郡美浜町布土公民館で開催され、60名あまりの参加がありました。ありがとうございました。問い合わせが届いております。炭化炉「炭之助」が売れました。

②12月8~10日には東京ビッグサイトでエコプロ展があり、NPO法人竹もりの里と一緒に出展しました。東1ホールF-13ブースに、大勢のお客様がお越しくださり、竹炭と竹炭うどん、竹炭配合石鹸が売れました。

③3月上旬(平日)には茨城県石岡市の山奥で同様の「竹炭シンポジウムin石岡」を予定しております。現在準備中です。

8.バイオチクプロジェクト

バイオプラスチックを採用する「ニューブレスパイプ」の試作品を完成して、「東京ビッグサイトで開催のエコプロ2016」に展示しました。この商品を普及させて、樹木の再生に「竹炭の活用」が、有効である事をPRします。この商品化を実例にして、バイオプラスチックの利用商品の開拓を各方面に提案して、石油系のプラスチックを転換していく活動を進展させます。さらに、「竹ナノセルロース」の応用商品の開発を、引き続いて挑戦しています。

9.ホームページによる情報発信

主に吉澤有介(氏名記載なきもの)に要約して頂いた専門書と再生可能エネルギー関連情報です。
「鳥獣害」祖田修著 2016年12月22日 [人体・動物]
「生物はなぜ誕生したのか」ピ-ター・ウオード/ジョセフ・カーシュヴインク著 2016年12月8日 [バイオマス]
「重力波は歌う」ジャンナ・レヴィン著 2016年12月3日[科学技術]
「ザ・パーフェクト」 土屋 健 著 2016年11月15日[人体・動物]

10.世界のバイオマス情報 (編集 宮地)

産業性について
オレゴン州立大学が、林業によるバイオマスをエネルギー原料として利用した場合の収集、輸送、加工コストを含む経済効果を調査し、産業価値はあるが、公的資金の投入がなければ採算性は期待できないとしました。また、バイオマス関連産業による村興しは主に大きな輸送コストの負担で、期待できないという報告もあります。アメリカの政府監査院 (GAO) が先進の再生可能燃料基準プログラムを監査し、製造コスト、石油の値下がり、新技術の量産移行コストなどにより計画の達成は困難と結論しました。
一方、欧州委員会が2030年のバイオ燃料の生産を半分近くに減らす方針を明らかにしています。

実用化について
 ドイツのGlobal Bioenergiesが年間生産量100トンのバイオ燃料の実証工場で、バイオ原料から各種燃料を作る試験生産を行っています。同社は再生可能な原料から発酵技術を利用してハイドロカーボンを作る技術もったヨーロッパ唯一のメーカです。

基礎研究が進む
 ルール大学ボーフムで、生体触媒をベースにした燃料電池とコンデンサの複合部品が開発されました。原理は安定なポリマーゲルに組み込まれた酵素に、多量のエネルギーを貯蔵させる方法です。バイオ電気化学ベースの高機能、低コスト装置開発の出発点として期待できます。

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