英国の世界遺産カンタベリー大聖堂を訪問 2014年6月12日荒川英敏

  ロンドン便り その38

ロンドンから南東に約100km、ケント州のカンタベリー市にありますカンタベリー大聖堂(以下、大聖堂)を訪問して来ました。ここはイングランド国教会の総本山と言われている場所であり、いつも多くの参拝者で賑わっています。

英国でローマ人によるキリスト教の布教が始まったのが3世紀ごろと言われています。
当初はウエールズ、アイルランド、スコットランドへと布教が進み、597年にローマ教会よりイングランドに派遣された宣教師セント・オーガステインがケント州の海岸に到着、イングランドでの布教の最初の拠点としてカンタベリーに聖堂が建立されました。当時、英国はローマの支配下にあり、ローマ人の礼拝の場でもあったと言われています。しかし、11世紀に入り最初の聖堂が火災で焼失したため、1077年に再建され、その後周辺の建物も建てられ、今日の石造りの荘厳な大聖堂となっています。

最初の頃は、イングランドでもイギリス教会として、ローマ教会の教義を踏襲していましたが、1534年当時の国王、ヘンリー八世の離婚問題でローマ教会と折り合いがつかず結局ローマ教会から脱退、独立してイングランド国教会となり、今日に至っています。

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  世界遺産カンタベリー大聖堂       大聖堂の内部(奥に祭壇が)     

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タワーの複雑な模様のゴシック様式の天井    門前町

  カンタベリー大聖堂の特徴の一つに、総面積が1,200㎡に及ぶステンドグラスがあります。太陽の光を通して見るステンドグラスは本当に神々しくて、ステンドグラス一つ一つにも物語りがある様ですが、残念ながらそれらを全て理解することができません。もし理解できればきっと楽しみ方も一段とアップするでしょうね。当大聖堂に所属するステンドグラス修復の専門家は、他の教会や聖堂からのステンドグラスの修復作業にも携わっています。これらの素晴らしいステンドグラスの一部は世界中の博物館や美術館にて、貸し出し展示を行っており、昨年は、ロスアンゼルスのゲッテイミュージアムで、今年はニューヨークのメトロポリタンアートミュージアムで行われています。

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        様々なステンドグラス 

一方、石造りのカンタベリー大聖堂は1000年近い風雪に耐えて来ていますが、その裏には石工による絶え間ない保守修復があります。ここには付属施設として、伝統的な技法を  駆使して歴史的な石造りの建築物を守る術を学ぶ研修所があり、現在17名の石工が在籍し、ここだけではなく英国にある他の石造りの城や教会、聖堂の保守修復に携わっているとのことでした。この様に、どこの国でも世界遺産クラスの歴史的な建築物を未来に残して行くには、裏方の地味な技があってのことであります。翻って日本も素晴らしい木造の神社仏閣を未来につなげる為に、保守修復に携わっている宮大工さんの苦労を忘れることはできませんね。(了)

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