芦ヶ久保の日向山 2011年4月24日 吉澤有介

西武線小さな山旅(8)地方選挙の投票日は、朝から抜けるような青空になりました。
軽い山歩きには最高のシーズン到来です。そこで花の里で知られる芦ヶ久保の日
向山(標高
633m)をめざすことにしました。

例によって出発は11時、飯能で西武秩父線に乗り継ぎます。
高麗川の流れに沿った里山は、どの家も花々で飾られて輝いていました。
正丸峠の長いトンネルを出ると、果樹公園村の芦ヶ久保駅です。
改札口になんと熊除けの鈴が、一個
400円で売られていました。
こちらはうっかり忘れてきたので内心ドッキリです。まあ何とかなるだろうと、
そのまま階段を降りて村に入りました。
果樹園が散在する村の奥に、これから登る日向山が淡い新緑に包まれています。
山というよりは小さな丘といったところでしょうか。

  コースはいくつかありますが私のおすすめは、左手の大きな観音像のある霊園を
越えてゆく「風の道」です。
沢を一つ渡ってゆるやかな尾根の道に入ると、広葉樹の続く林ではスミレや、近
頃見られなくなったニホンタンポポが次々に出迎えてくれました。

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時折開ける木々の間から秩父の名峰武甲山が手に取るように見えます。
果樹園のすぐ隣の尾根なのに、全くの奥山のような静けさです。
これではいつ熊が出てきてもおかしくありません。
すこし心配になってきたので、手ごろな木の枝を2本拾ってカチカチと鳴らしな
がら歩くことにしました。
お天気はいつの間にか怪しい雲行きになってきましたが、しばらくは何とか持ち
そうです。
dscn3822.JPGdscn3828.JPG やがてひょっこりと村の車道に出て、急に眺めが変わりました。
山の斜面いっぱいに果樹園が広がっているのです。ちょうどプラムの花が満開に
なっていました。
車道を渡ると小さな神社があります。
ここが日向山への登り口になっているのです。

さあこれからというところに、ケモノ除けのネットがしっかりと道をふさいで
いました。案内板があって、「ゲートをあけて通行しても良いが、あとをしっか
りと閉めてください」と書いてあります。イノシシ対策なのですね。
ゲートを通り抜けてまた深い自然林に入りました。
ただ道の右手には電圧をかけたネットが続いています。プラムの林なのです。
そのまま優しい山道をしばらく行くと日向山の頂に出ました。

 日曜日なのになんと言う静けさでしょう。ここではじめて数人のハイカーに
出会いましたが、すぐにいなくなって私一人になってしまいました。
コナラやクヌギやイヌシデなどが芽吹いたばかりの広い山頂です。
しばらく雨がなかったようで、乾いた枯葉の上に腰を下ろすと心地よい暖かさ
が伝わってきました。時刻はまだ
1時半、おにぎりタイムで自然と眠くなって
きます。

 開けた南側の正面には、果樹園の上に二子山(882m)が聳えています。
その山頂の直下から深く切れ込んでいる谷が、昨年の夏にご紹介した兵ノ沢です。
一部に人工林もありますがほとんどが広葉樹の豊かな自然林の、実に堂々とした
私の大好きな山なのです。

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 降りは「花の道」に行くことにしました。ここには立派な遊歩道がつくられて、
カタクリ、ヒトリシズカやテンナンショウなどの山野草が見られましたが、まだ
すこし早かったようです。
それに意外と急勾配で健脚向け?なので、あまりおすすめできません。
それよりも村に戻る途中の桜の林が満開で、それはそれは見事なものでした。

 芦ヶ久保駅まではまた古い山道を下りますが、開けた果樹園のすぐ隣なのに深い
自然に包まれて、ここが村の中とは全く気がつかないほどです。
この村では果樹園の村の暮らしに、自然に親しむハイキングコースを実に見事に組
み合わせているのです。
今はイチゴの季節でした。果物も楽しめる半日のハイキングとして、家族連れやカ
ップルに人気なのも納得がゆきます。

 高齢者向きコースとしては、ここにご紹介した「風の道」から、日向山を越えて
農村公園に下ることをお勧めしましょう。
一般にはあまり知られていませんが、これは山慣れた連中が好んで通う、奥武蔵で
も稀な自然豊かな花の道なのです。皆さんもお出かけになってみてはいかがでしょ
うか。 「了」

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