みちのくの原生林を巡る(その2) 2010. 7.4

 翌日、八幡平の西麓の後生掛温泉からバスを乗り継いでJR花輪線の鹿角花輪の鹿角花輪駅に出ました。
途中の豊かなブナの自然林は見事なものでしたが、昨日出会ったような巨樹はほとんど見当たりません。

みな直径30cm程度の若いブナです。
かっての林野庁が独立採算の名のもとに乱皆伐した後に自然回復した林でしょう。
トロコという地名もありましたが、これはトロッコがなまったものだそうです。
鹿角(かづの)からは弘前を経由して五能線の白神山地に向かうことにしました。
しかし次の列車までには2時間もあります。駅の隣の観光協会に立ち寄ってみました。
当番らしい老人が中年の女性の人生相談に乗っているようです。
話の中身は全くわかりませんが、これがコミュニテーなのでしょう。
十和田湖などの観光ビデオを見ているうちに女性が帰って、その老人が話に乗ってくれました。
ところが言葉が殆ど聞きとれません。
ようやく鹿角がアントラアということ、それを鹿島アントラーズが名前に頂いたのだということまで理解できました。 少し慣れたところでここの林業について現状を聞いてみました。
この秋田県北部地方は、昔から秋田スギの宝庫だったのだそうです。それが戦後の伐採とその後の拡大造林で、全部がダメになってしまったといいます。
大きな間違いだったとしみじみ語ってくれました。

 ようやく列車がきて、大館経由で弘前を目指します。
ところがこの沿線でみた人工林は、その多くが平地林でした。
しかも驚いたことに、それが手入れをされた様子が全くないのです。
密植されたままのスギが、全体に蔓もからまり、直径
10cmそこそこのひょろひょろの線香林になっています。
これは一体どうしたことでしょう。
日本の人工林は急斜面が多いために、機械化ができずにコスト高になるとされていましたが、このような平地林の林業までが放棄されていたのです。
問題の根はよほど深いものと考えこんでしまいました。
 弘前からは近頃人気の高い快速しらかみ号で、今夜の宿の十二湖駅を目指します。
曇り空の日本海は波一つない静けさでした。
深浦のあたりの海岸美は、なかなか見ごたえがあります。
 

 世界自然遺産の白神山地の入口にある十二湖駅近くの民宿では、一泊7000円なのに豪勢な海鮮料理には驚いてしまいました。
夕食はもちろん朝食にまでウニの山盛りが出てきたのです。
一週間後には定期健診を控えているのに、これではコレストロールは完全にアウトでしょう。 翌朝、宿の前に奥十二湖行きのバスがきましたが、これが地元や遠方からの観光客で満員でした。
何とか乗せてもらったバスは、白神山地に分け入って走ります。
15分ほどでナラやカツラなどの自然林のなかに次々に湖沼が現れてきました。

 ここは江戸時代にこの地方を襲った大地震のために、沢が各所でせき止められて33の湖沼が生まれたところなのです。
白神山に向かう崩山から見下ろすと十二の湖が見えるのでこの名がついたのだそうです。バスはこの湖沼地帯の一番奥まで入ります。
観光バスも続々と入ってきました。
 ここから遊歩道が始まります。
団体さんは観光スタイル、こちらは山仕度、もうごちゃごちゃですが、それぞれに別れてすぐ静かになりました。

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  鶏頭場の池               池畔のカツラの木

 とくに人気なのは青沼で、ごく小さい沼ですが青く澄んだ不思議な色をしています。そのあたりからお目当てのブナの原生林が始まりました。

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 青沼                   ブナの原生林  

しばらくは原生林の中を歩きます。ただブナの太さは1mまではゆきません。
ここはまだ海岸から僅か10kmくらいですから、白神山地のほんの入り口なのです。
八幡平西麓のブナにはとてもかないませんが、雰囲気はたしかに原生林です。
いかにもクマやカモシカなどの出てきそうな深山で、こんなに簡単に訪れることができるとは実にありがたい話です。
それこそお互いに大切に守ってゆかなければなりません。できればもう少し尾根道に入ってみたかったのですが、あいにく本格的な雨になってきました。目的の原生林は充分見たので大満足。
ここで白神に別れを告げることにして、ふたたび五能線に戻りました。
今度は上りの普通列車です。
しらかみ号も良いのですが、ローカル線はやはり古い列車でゴトゴトゆくのが一番ですね。
秋田で「こまち」に乗ると、もうあとは一気に東京を目指します。
途中の田沢湖近くの沿線に、はじめてスギの原木集積所を見かけました。
それが前に見た線香林の直径
10cmくらいの細い丸太ばかりが山のように積んであるのです。
どこかで皆伐したのでしょうが、柱にもなりそうにないので一体どのようにして利用するのでしょうか。何はともあれ今回は、JR東日本の「大人の休日」期間限定3日間乗り放題のおかげで、みちのくの原生林をたっぷりと楽しむことができた次第です。
記   吉澤有介    「了」

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