「競わない地方創生」久繁哲之介著 2016年9月30日吉澤有介

—人口急減の真実—
著者は、早稲田大学を出てIBM東京本社でマーケテイングを担当しながら、休日には広島にある実家の老舗飲食店の経営を補佐してきたという経歴を持つ、異色の地方再生プランナーです。つまり早くからドラッガーのいう「パラレルキャリア」と、国土交通省が提唱している「二地域居住」を実践してきました。そこで得た教訓が「競わない地方創生」で、建前でなく、不都合な真実を前提に物事を考える姿勢でした。本書には、地方創生と地方自治にビジネスの基本を生かしてゆく、実践的なノウハウが満載されています。
それを目次に従って紹介してゆきましょう。良い手がかりになること請け合いです。
1.人口減少対策はをビジネスの基本から導く 
お金で対策しても、皆がマネして皆が衰退する。世話を焼いて人を呼んだ富山朝日町。
人口減少対策と地方創生は、政策の質より人の質が原動力になる。
2.弱者(地方都市、中小企業)の経営は、強者とは正反対
強者は後からマネしても勝てるが、弱者はマネしたら必ず負ける。役所はマネばかり。
大企業は効率、中小企業は交流。感情を重視して顧客と協働する。値引きは麻薬だ。
3.弱者は、競争するな。自分が1番になれる軸をつくる
2位ではダメ。移住や消費で選ばれるのは1位だけなのだ。商品は独自の物語で売る。
新潟の割烹宿ますがた荘は、不利の立地を料理の質で勝負したが衰退一方であった。
ある冬、客が目の前の潟に集る白鳥に感動した。日常だった風景の価値に気がつく。
「白鳥の宿」を打ち出したらネットで1番になり、予約が取れないほどに繁盛した。
近くの公営運動場がいつも空いているので、合宿所としてPRしたら、これも当たった。
一人の客の声でも活かせる。何事にも関心を持ち、自分に有利な軸をつくることだ。
4.1番になる最良の方法は、協働という「働き方」
遊び心があると共感されて協働する仲間ができる。枠組を変えると競争なしでゆける。
働き方を魅力的にすれば地方に人材が集る。「東京本社を地方に移す」は弊害ばかり。
地方に仕事はある。求人情報は「本社所在地」別で、「就職地」別なら東京は15位だ。
5.学習しない公務員の高給が地方を滅ぼす
地方公務員は高給でも殆どが自学しない。それでも学習するIT技術者より年収1.8倍。
指示待ち人間ばかり。市民に目線を合わせられるか。「伝える」から「伝わる」に。
6.顧客価値は、顧客目線の遊び心から創造される
一方的に押し付ける役所は「アウトバウンド」。顧客と楽しむ協働は「インバウンド」。
当事者意識を持つこと。お金をかけない楽しみ方がある。公務員は実践者になれ。
7.現象でなく原因を考えると人口急減の理由がわかる
人口減少対策は、婚活、子育て、働き方の三点だ。バランスよく、積極的に攻める。
出生率は「学歴*コミュニテー」で決まる? 在宅勤務の魅力。夫婦で1.5人分稼ぐ。この提言は、東京中心で上から目線の増田レポートの、まさに対極をゆくものでした。了

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