世界最大の持続可能な建築技術展[ECOBUILD 2013] 2013年3月11日荒川英敏

  ロンドン便り その21

昨年に続き、35日~7日までに亘って行われた世界最大の持続可能な建築技術展 ECOBUILD 2013 を見学して来ました。場所はロンドンオリンピックの柔道、レスリング、卓球、テコンドーの競技会場になっていたEXCELと呼ばれる多目的ホールで行われました。EXCELは交通の便は抜群で、ロンドン市内からもDLRDockland Light Railway)と呼ばれる無人運転の電車で10分~20分で行くことが出来、またテムズ川沿いのロンドン港の旧荷揚桟橋を利用して造られたヨーロッパ短距離便専用のロンドン・シテイエアポートに隣接しており、ヨーロッパ大陸からの参加者にとっては申し分のない会場だったと思われます。

ガイドブックによるとECOBUILD 2013 の参加企業は世界から1600社、12の部門で180の無料セミナーも開かれ、展示スペースも持続可能をコンセプトにした展示でイギリス政府、建築技術、デザイン、設計会社、建材メーカー、住宅メーカー、省エネ技術、再生可能エネルギー関係等と多岐にわたり、米国、カナダ、ドイツ、フランス、中国、韓国、台湾等の各国のブースも目に止まりました。しかし日本の国としてのブースはなく日本メーカーからの出展はダイキン、三菱電機の2社のみとさびしい限りでした。

会場で目立った展示はやはり太陽光発電関係の出展企業が140社と最大で、次に多かったのが太陽熱利用関係で出展企業数も110社でした。特に、太陽熱利用関係ではEvacuated Tube Heat Pipe Solar Thermal Collector(真空管ヒートパイプ式太陽熱温水システム)と呼ばれる製品でイギリス、ドイツ、オーストリア、イタリア、スエーデン、デンマーク等のメーカーの展示が目立ちました。この真空管ヒートパイプ式太陽熱温水システムは日本ではあまり普及していませんが、今日ではヨーロッパの太陽熱温水システムの主流となって来ています。
eco01.jpg

例えば、イギリスのSolar Panels Plus SPP)社の製品説明によりますと、従来型の太陽熱温水システムでは平型のタンクを屋根に設置して温水を得ていましたが、冬の日差しの弱い時は高い温度の温水を得るのは困難でした。SPP社のタイプは真空管ヒートパイプを使用することで外気温度に左右されず太陽熱収集角度も120度に広げることが出来、午前中の低い太陽光の入射角から午後から夕方にかけての太陽光の入射角が変化しても十分な太陽熱を取り込むことができる、下図のような構造になっていると説明していました。
二重の真空断熱された耐熱ガラスチューブの内側に熱を吸収し易い黒色の層を形成し中心に高純度の銅パイプで作られたヒートパイプを配置し、ヒートパイプの中に真空封入された熱媒液が太陽熱で熱せられ気化して約200℃の蒸気となり上部のヒートパイプコンデンサーに集まりヘッダー内の水と熱交換されます。その後熱冷媒は冷やされてヒートパイプの下部に戻り、このサイクルを繰り返しながら90℃の温水を作り出すものです。

eco02.jpg

太陽熱を吸収してヒートパイプ内の熱媒液が蒸発して液体に戻るようす

eco03.jpg

ヒートパイプを内蔵した真空断熱ガラスチューブと銅製のヘッダーの位置関係

日本では平型の太陽熱温水システムが主流であるが、真空管ヒートパイプ式太陽熱温水システムの場合、太陽熱収集能力が極めて高く設備投資の回収も短くなると思われ、日本の家庭で使用されるエネルギーの1/3を占める給湯に掛かるエネルギーをほぼ全て、再生可能エネルギーへの転換の一助となるべく日本での普及に期待したいですね。

  地熱利用ヒートポンプではイギリスやドイツ、北欧メーカーの展示が目立ちました。

イギリスの大手ガス会社のBritish Gasの子会社であるEcoenergy社がガスエネルギーとは一線を画した地熱利用ヒートポンプや木質ペレットを使ったバイオマスボイラーのPRに力を入れていたのが印象的でした。説明員によると住宅向けの地熱利用ヒートポンプの掘削費用はロンドン地域で垂直堀の場合£50(約6800円)/mで日本よりはかなり安いのではないかと思われます。

一方、近年ヨーロッパでは新築住宅の高断熱・高気密化の進捗で熱交換型24時間換気システムの義務付けが各国で行われ、換気システムも住宅の「住み心地」を左右する重要な住宅設備となって来ています。この為、換気システム関連の出展企業も多く見られました。この様な中で、イギリスのAIRFLOW社が発表していた通常の円形換気ダクトと楕円形換気ダクトがワンタッチで接続される継手はなかなかの物で、これを使うことで施工時間が70%も削減できるとPRしていたのが印象的でした。
eco04.jpgeco05.jpg

Expelair社のキッチン換気扇と一体化   Airflow社のヒーター内蔵型
        24時間熱交換型換気システム 

今回で2度目となるECOBUILD 2012を見学して感じたことは、日本は省エネ先進国と言われていますが、果たしてそうなのか甚だ疑問に思われるほど世界には特にヨーロッパ企業の多くの多岐に亘った持続可能な様々な建築技術に驚かされたのは私だけだったでしょうか。日本の積極的な参加を願っています。(了)

カテゴリー: 気候・環境, 科学技術 パーマリンク