セルロースを分解しディーゼル、アルコール等を作る新しい微生物

― 緒言 ―
色々な糖分や澱粉(サトウキビ、トーモロコシ等)からアルコールを作
る方法は以前から検討されてきており現にブラジル、アメリカでは工
場規模で実用化されている。

日本でも酒類の生産は大規模に行われているが、エネルギーの生産としては数
少ない工場で試験的に行われているのみである。それらの原料は現在食料にな
っている物が多いのでこれからは食料でないセルロースからアルコール作ること
が急務である。
その対象は木材、草、バガス、稲わら、死んだ植物(放置された
間伐材等)等である。これらが有効に活用されていない理由は微生物の研究開
発が充分に展開していないからである。
アメリカでは発酵に必要な微生物の探索や開発が強力に進められている。
その状況を佐野リポート等からまとめてみた。


1.セルロースを分解して糖を生産する微生物
  セルロース細胞壁の分解は熱と化学処理を伴い、従来難しい問題で
あった。またセルラーゼで分解することも実施されていたが、前処理
に手間がかかり大変であった。
 メアリーランド大学のSteve Hutcheson はチェザピーク湾で見つけた
バクテリア(Saccharophagus  degradanns)が強力なセルロース細胞壁の
分解能があることを突き止めた。
さらに効率よく糖に変更するために遺伝子を組み換えて、72時間で糖に変換
できるようになってきた。
この菌でアルコールを作る会社Zymetis社を2006年に設立した。


2.糖からエタノール、油脂等を作る微生物
 植物材料(セルロース)を分解すると出てくる糖のうち、グ
ルコース等は発酵するが、キシロースは発酵しない無駄な糖で
あった。つまりキシロースはイーストで資化できず、アルコー
ルに変える事ができなかった。
ゲーテ大学
(フランクフルト)Eckhard Bolesは大量の遺伝子データベ
ースを精査した。
その中からバクテリアから抽出した酵素を作ることの出来る遺伝子を見つ
けた。この遺伝子をイーストに注入し、キシロースも資化しエタノールを製
造することが出来るようになった。
E.Bolesはスイスのバイオ燃料メーカーであるButalco GmbHの共同
創立者でもある。
 MITのAnthony Sinskeyは微生物の未知の能力を開発し利
用している。土中にいる
バクテリアRhodococcus opacusには多
種類の糖と
毒物を食べる柔軟性のある食性があり、遺伝子的に
カタログ化してきた。そしてその菌はトリアシルグリセロール
を作ることができ、化学処理によりディーゼルに変換すること
ができる。
従ってセルロースを分解してできる糖(グルコース、キシロー
ス等)からトリアシルグリセロールを経由しジーゼルができる
見通しができた。
Sinskeyはその技術を活用する会社Metaborixを設立
1990)し、現在はADMとの合弁会社となっている。

3.セルロースから直接エタノール作る微生物
 ダートマス大学のLee LyndはMascoma社との共同研究で、
遺伝子操作によって高熱性バクテリアでエタノールを作る事が出来る
ようになった。従来セルロースを分解するためには高価なセルラーゼ
を使っていたが、一段でエタノールが出来ることで、製造コストは石
油に劣らないといわれている。

 4.セルロースから微生物を利用して酢酸を作り
  化学操作でエタノールを生産
ZeaChem社が開発したプロセスで、シロアリにいるバクテア
Moorella thermoacetica)を利用して木材から酢酸を作る。
エタノール発酵は炭酸ガスが出てしまうのでCの効率が悪いが、
酢酸の場合炭酸ガスが出てくること事はなくCの効率はよい。

酢酸から酢酸エチルを作り、酢酸エチルに水素添加してエタノー
ルを作る。
水素は残留リグニンを利用してガス化し水素リッチの
混合ガスとし、そのガスを利用し水素化する。エタノール発酵す
るより40%効率がよい。
この方式は京都大学エネルギー科学研究
所・坂志朗が報告している方法と同じであるが少し異なるのは水
素の作り方である。
坂は石油精製から水素を持ってくるといっているがその辺が異な
る点である。

5.光を利用して炭酸ガスを燃料に変える微生物
 アイオワ大学のJackis Shaksはハイドロカーボンを自然に生成す
るカビを発見した。
今後その遺伝子を分離することが期待されている。
また木の遺伝子と草の遺伝子を交配し、ジーゼル油を生産できる草を
作れる可能性がでてきた。
 UCLAでは遺伝子加工したバクテリアを使用し、炭酸ガスを餌
としてイソブチルアルデヒドを生成することに成功した。
これはイソブタノールの先駆物質である。これがきっかけになってこ
のバクテリアを利用して種々の石油系燃料の代替となる物質が出来る
可能性がある。

 ― 結果感想 ―
アメリカではセルロースの分解に積極的に新しい微生物の探索、造成
を行っており、成果を挙げている。この方式で車のディーゼル、アル
コールが生産できる可能性がでてきている。
セルロースがコーンにとって変わり、その上コストが更に下がること
を期待している。
 
          記  
廣谷精

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