英国に学ぶ住宅観 その2  Aug.4. 2011 荒川英敏

ロンドンたより3-2

景観
ロンドンをはじめとする都市では街区別に建物の高さや外観が統一され街並みの統
一を図っています。
住人は勝手に住宅の増築や外観の変更はできません。
住宅の外観は

 「街並みと言う社会資本」 を構成する重要な要素であるがゆえ、
全て自治体の許可
必要で、厳しく規制をしているのです。08.jpg

ロンドン郊外の地域ごとに住宅の高さや形が統一された住宅地 住宅街には看板と
いった類の物は無く、例外として売りに出される住宅の前に
”For Sale”
と書かれた連絡先の入った40cm四方の看板のみが許されています。
道路には必ず歩道があり街路樹と街路灯がセットになっています。
これはごく当たり前のことです。
残念ながら日本の道路では電柱で狭い道路を更に狭くし、看板、自動販売機や雑多な
物が道路の端を占拠している様を見ると、
英国の当たり前には程遠いのが現実です。 電柱の地中化率 
日本に帰国するたびに感じる事の一つに日本にはなぜ電柱が林立しているのかが不
思議でなりません。
英国はどこに行っても電柱を見る事がないのです。
これはロンドンの様な大都会でも田舎でもしかりです。果たして、電線や通信線は
いったいどうなっているのでしょうか。
これは電線や通信線は表通りでは地下の共同溝に収められ裏通りでも地下に埋設さ
れているのです。つまり電柱の地中化率が
100%と言うことです。              
日本でも電柱の地中化徐々に進捗している様で、例えば東京銀座や大手町、丸の
内界隈は確かに電柱の地中化率は高いのですが、それでもとても
100%には程遠く、
データによりますと日本で一番地中化率の高いのは東京千代田区
34%です。
東京都で見てみますと僅か
3%です。
ヨーロッパの国々では電柱の地中化率
100%はごく当たり前のことなのです。
私が英国に赴任した1970年代の後半からTVの多チャンネル化が進み特にケーブルT
Vの配線工事が全国的に行われるようになりました

不思議な事にこのケーブルの配線工事が何時どこでどのようにおこなわれていたのか
知る由も無くいつの間にか行われていました。
自宅の玄関前にも例にもれずケーブルTVの配線用の直径10cmくらいの蓋の付いた端子
が敷設されたいました。
この様に後から配線されたケーブルも地中に埋設される徹底ぶりなのです。
日本であればこの種の後からの配線も電柱の電線と同じように配線され写真XXの様な
見苦しい景観を作り出しているのです。
 日本がヨーロッパ並みの地中化率
100%になるには後100年はかかるのではないかと思
うのは私だけでしょうか。
英国人の住宅観・住宅の寿命 ゆとりある生活を支える大切なものが住宅です。
英国の住宅は構造体がレンガと石で出来ている為、基本的に朽ちると言うことがない
ので、家の寿命がとにかく長いのです。
住宅に関するデータを見ますと住宅の平均寿命は
英国141年、アメリカは103年、フラ
ンスは
86年、ドイツは79年、日本は30年で、英国のそれと比較するとなんと4~5倍も
寿命が違うことになります。
日本の木造住宅も例えば京都の町屋や地方の武家屋敷や農家の中には築後
150年以上た
った家もめずらしくはありませんが、これらは一般的な住宅とは一線を画すると思い
ます。

日本でも最近の上質な地産地消の木造住宅では耐震構造は当たり前、外断熱で高断熱
・高気密構造で熱交換機能が付いた
24時間換気システムが標準装備され、快適性を保
ちながら省エネが図られる高いレベルになっています。
この様な上質な木造住宅を定期的なメンテナンスをしながら家族構成の変化に応じて
、リフォームを行い代々にわたって引き継いで行けば、街並みは別として、住宅本体
はきっと西欧並みに長持ちするのではないかと思われます。
古い住宅ほど価値がある

通常英国人は買った家は大切に使い、メンテナンスをしっかりしながら次の世代に引
き継がせて行くのです。住宅の価格も古い年代物ほどその価値が認められ高く売れる
のです。
一般的な英国人は住宅を買う時は中古住宅選びます。
その理由として古い住宅ほど何代にもわたってのその住宅に住んできた前住人の知恵
と工夫が凝縮されており、
100年以上の風雪に耐え今日でも立派な住宅として佇まい
を保っている事実は丈夫な住宅の証でもあり、そこに何事にも変えがたい普遍の価値
を見出しているのです。
残念ながら年間約10万戸ほどの新築住宅はあまり人気がありません。

資料によりますと英国の住宅築年数で見みますと1918年以前に建てられた住宅が約
20%、1919年~1938年までが約20%、1939年~1959年までが約19%、1960年~1971年が約
17%つまり約
60%の住宅は築後50年以上経っており、25%が1972年以降に建った比
較的新しい住宅となるのです。
ちなみに私は1976年にロンドン西部のイーリングで、その時既に築後18年経ったテ
ラスハウスと呼ばれる長屋風
3階建庭付き住宅を購入しました。
ここで驚いたのは私のような外国人でも
英国の住宅金融公社(ビルデイングソサエテ
イ)でローンが組
め、家が買えたと言ことです。
購入後は
英国人が行っている様に芝刈り、ペンキ塗り、壁紙の張り替え、雨どいの詰
りの補修等のメンテをしながら
21年間を過ごしました。
その住宅は今日でも買った当時とまったく変わらぬ佇まいで、今年で築後
52年になり
ます
が周囲の住宅の中では最も新しい住宅の様です。

街路樹と住宅の庭の木々

ところで街並を保つ大切な要素である街路樹は夏には葉を沢山付け歩道や住宅を暑さ
から守り、秋口には落葉して晩秋から冬の間の僅かな日差しを歩道はもとより住宅に
も当たるようにかえで等の落葉樹が主で定期的に自治体によって枝落とし等のメンテ
が行われています
ちなみに小生の滞在先のイーリング区内には27,000本の街路樹があるそうです。
住宅の庭の木々は当然持ち主の責任で枝落とし等のメンテは行いますが、大掛かりな
枝落としや伐採には当局の許可が必要となります。
つまり庭の木でも立派な社会資本とみなされ当局によって規制されているのです。

e061.jpge07.jpg

街路樹のある風景-1          風景②-2:電柱がありません

e08.jpge09.JPG

風景-3                 風景-4 真ん中は1895年製のガス灯

カテゴリー: 技術者の現場レポート パーマリンク