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2016/7/25 月曜日

オーストリアの地方都市クラーゲンフルトを訪問2016/7/24荒川英敏

カテゴリー: 社会・経済・政策   by k-bets 編集長 @ 15:12:48

2013年3月にロンドンで行われ建築技術展(Ecobuild 2013)に参加した時に立ち寄った、デンマークのヒートポンプ機器の専門メーカーGenvex社の開発担当者から紹介された、 オーストリアの地方都市クラーゲンフルトにある、住宅用換気システムの専門メーカーのPichler社を、7月14日に訪問する機会があった。

前日の7月13日の午後にロンドンを発ち2時間半後にオーストリアの首都ウイーンに到着、ロンドンとの時差でウイーンは1時間進んでいるんのでロンドン時間で見ると3時間半もかかった錯覚であった。入国審査を終えCity Airport Expressに乗車、僅か16分でウイーン中央駅に到着、更に地下鉄を乗り継いでホテルに到着したのは17時過ぎであった。

翌朝、ウイーン空港からの一番機で、アルプス山脈の上空を越えクラーゲンフルトに到着、タクシーで10分、Pichler社に到着した。同社は創業以来50余年、創業者は昨年社長を   退任、35歳の長男が後を継いでいた。当初はオーストリア国内向けの住宅用換気システムの専門メーカーとして地元に根付いたビジネスを行っていたが、1997年の京都議定書発効以来、市場の住宅設備機器の省エネマインドの高まりに合わせるがごとく、エネルギー効率の高いヒートポンプ関連機器の開発にシフトし、主要部品のほとんどのはEU域内で調達、金属部材はコイル状ステイールから加工処理は自社設備で行い、製品の組立、検査、試験等は2か所の自社工場で行っている。今日では従業員200名をかかえる中堅企業である。  商品はオーストリアやドイツを含むEU市場向けがほとんどで、高性能なヒートポンプ関連機器メーカーとして高い評価を受けている。

ヒートポンプの心臓部となるコンプレッサーは、これまで、日本、中国、韓国、台湾から調達していたが、コストは高くなるが、性能が良く、品質も安定しており、これまで故障もゼロの日本メーカーから調達している。やはりコンプレッサーや主要電子部品は品質を維持する為に、絶対日本製に限ると、開発部長さんが嬉しそうに話してくれたのが印象的だった。

Pichler社のヒートポンプ関連機器の中で、特に目を引いたのが、昨年開発された世界初の給湯、空調、換気機能を一つのキャビネットに収めたヒートポンプコンビユニットと言われる機器で、その発想のユニークさとコンパクトですっきりしたデザインにキャビネットの色使いには感心した。以下、ヒートポンプコンビユニットの製品概略を下記する。

ヒートポンプコンビユニットの特徴
・パッシブハウス(高断熱・高気密)仕様に対応。
・24時間換気、冷房、暖房、給湯機能を一つのキャビネットに収容。
・冷暖用と給湯用の独立コンプレッサーを持つ、2コンプレッサー方式。
・2個の室外機もキャビネット内に収容。
・屋内据え付け型仕様。
・冷媒の配管工事なしで、簡単な据え付けが可能。

ヒートポンプコンビユニットの主要な仕様
・換気能力:300㎥/h
・暖房能力:1300w/h
・冷房能力:1300w/h
・ヒートポンプ給湯能力:1600w/h
・給湯貯湯量:212 Liter at 65℃
・外形寸法:高さ2m x 幅 0.75m x 奥行 0.75m
・本体重量:260kg
・電源:230v 50Hz

ヒートポンプコンビユニットの内部構造図

夏でも30℃を上回る日が数えるほどしかなく、40%前後の低い湿度の北ヨーロッパの気候に対応した、オーストリア製のヒートポンプコンビユニットだが、日本仕様を想定した時、過酷な特に夏期の高温多湿気候への対応や地震対策と、様々な克服すべき課題がつきまといそうである。しかし、給湯、冷暖房、換気の機能をコンパクトに一つにまとめ上げ、   据え付け、取り扱い、保守を出来るだけ容易にすると言うコンセプトには驚きである。

ヒートポンプコンビユニットのコンセプトが生まれた背景に、ヨーロッパの省エネ住宅の
推奨規格である、パッシブハウスやゼロカーボンハウスと言う高断熱・高気密・熱回収型24時間連続換気システム仕様の住宅の普及があることを忘れてはならない。日本の1999年の次世代省エネ基準や、2013年の改正省エネ基準に基づいた住宅の断熱性能では、ヨーロッパ推奨規格の熱需要15kwh/㎡/年に比べて90kwh/㎡/年(数字が小さい程断熱性能が良い)と遠く及ばないのが現状である。日本の一部の省エネ宅を除く、大半の住宅とマンションは、夏は暑く(冷房を入れても)冬は寒い(暖房を入れても)と言う情けない状態を思うと  ヒートポンプコンビユニットの日本での普及は極めて限定的と言わざるを得ない。

さて、久しぶりのオーストリア旅行だったので、以下の通り国の概要に触れてみる。
・地形:国の中央に3000m級アルプス山脈がある山岳地形である。
・面積:83,000k㎡(日本の1/5)、 人口836万人(日本の1/15)
・隣国:ドイツ、チェコ、スロバキア、ハンガリー、スロベニア、イタリア、スイス。
・別名:「森林大国」、「クラシック音楽大国」、首都ウイーンは「音楽の都」。
・首都:ウイーンは盆地を形成、人口は168万人。
・モーツアルト、ハイドン、シューベルトをはじめ世界的な偉大な音楽家を多く輩出。
・森林面積は国土の46.7%で世界6位
・GDPは3370億ユーロで22位、 一人当たりのGDPは39,404ユーロで35位。
(数字はWebより)
オーストリアの生んだ天才音楽家モーツアルトやハイドンの音楽を聴く夕べが毎夕、国立音楽堂で催されていると聞いていたので、是非参加してみたいと期待していたが、当地は  ホリデーシーズンの真っ最中、当日券が既に売り切れで残念であった。ウイーンの中心部は、ミニ渋谷を思わせる、なかなか活気のある都市で、6本の路線を抱える地下鉄網の発達には目を見張った。と言うのも単なる柵のある改札口や駅事務所もなく職員もおらず自動改札機もなく、正に出入りは自由。一旦プラットフォームに降りたが、無料と言うのもおかしいと思い、尋ねたら自動販売機で切符を購入せねばならないと言われた。改札を出た先にTICKETと書かれたドイツ語、英語、フランス語の選択が出来る自動販売機を見つけ、大人2.2ユーロ、子供・高齢者は1.1ユーロ(120円)とあったので、高齢者を選択した。切符をよく見ると購入時間が大きく印字されたいたので、車内で聞いてみると購入時間 から1時間以内に改札口を出ない場合と、切符を持っていない場合に、検札に引っかかれば罰金として購入金額の10倍が課せられるとのことであった。考えて見ると、自動改札  システムもいらず、駅員もいらず(どこかには駅事務所があり職員はいるはずだが・・・)乗客を信頼した究極の地下鉄ではないかと思った。東京の地下鉄でこの方式が通用したら、地下鉄側から見ると、かなりのコスト削減になり、乗客から見ると煩わしさがなくなり、運賃値下げでお互いに恩恵を享受できそうである。しかし、過剰サービスに慣れた日本の乗客を説得するには、困難を伴うであろう。(了)

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 地下鉄入口の自動券売機(独仏英対応)           柵だけの改札口

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地上部分を走る地下鉄車両                   ウイーン中心部の裏通りの賑わい

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人口9万人のクラーゲンフルト市役所                  クラーゲンフルトの中心部

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     16世紀に建立されたクラーゲンフルト教会とその内部