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2014/7/7 月曜日

「林業男子」山崎真由子著2014年7月7日 吉澤有介

カテゴリー: 林業・農業   by k-bets 編集長 @ 21:57:44

   このところ林業についてのルポや議論が、あちこちで目につくようになりました。本書も、先日の映画「ウッドジョブ」をきっかけに生まれています。著者は、もともと林業を全く知りませんでしたが、東京チェーンソーズの青木亮輔の活動を新聞で読み、この業界に興味を持ちました。編集者として素早く青木の著書を出し、三浦しをんの「神去りなあなあ」がベストセラーになると、青木と三浦の対談を載せました。なかなかの行動力です。

 本書では、林業に魅せられてこの業界に飛び込んだ異色の人たちの人物像と、産地の新しい動きを詳しく紹介しています。題名は「林業男子」ですが、林業女子も登場するので、これは「林業人間」としたほうが良いかも知れません。その一端をあげてみましょう。

 まず東京チェーンソーズですが、注目度の高まりとともに、青木社長はさらに新たなジャンルを目指しています。出資の申し込みも増えたので、補助金に頼らない確かなビジネスモデル「東京美林倶楽部」を考えました。一口5万円の出資金で森を育て、そこで育った木材を会員に還元するというファンドです。その企画は新入社した49歳の青柳孝(慶大法学部出身、JTBのエリート)が担当しています。また東大農学部卒の大塚潤子が、熱烈のラブコールの末に入社してきました。スーパー高学歴の活躍は新時代を感じさせます。

 林業コンサルタントの古川大輔は、東大大学院農学生命科学研究科を出ました。学生時代から全国の農山村地域を巡り、吉野の川上村で心を決めました。船井総研で中小企業を学び、独立して林業現場の経営支援に取り組んでいます。林業の川上から川下へと支援の範囲は広く、高野山の寺領の霊木を住宅に使うプランは人気が高いそうです。2010年に「林業女子会@京都」を立ち上げた岩井有加は、京大大学院在学中でした。森林科学科で学びましたが、林業問題を広く一般の人々に伝えたいと、さまざまな活動をしています。若い女性向けのフリーペーパー「fg」では、炭の話も特集しました。「林業女子会@**」の集りは、静岡はじめ各地に波及しています。

 ところがこの林業女子の元祖が、なんと飯能市にいました。74歳の栗原慶子です。大卒後、教師になりましたが、結婚した相手がたまたま林業家だったのです。もともと彼女はワンゲル部でしたから、山に入るのは好きでした。1984年に森林組合長から婦人部をつくるよう要請され、「東吾野林業婦人の会」を設立しました。林業の現場には入りませんが、地域の農産物や伝統食を勉強し、現在は「ときめ木」という名称で、全国の林業婦人グループと交流を深めています。全国林業グループ連絡協議会女性会議を結成して初代の会長となりました。その長年の功績と活動を評価されて、2013年度の農水省林産部門で、天皇賞を受賞しています。まさに元祖林業女子だったのです。
 京都の宮大工「(有)匠弘堂」は2001年に創業した若い企業です。社長の横川総一郎は、大学で機械工学を学び、家電メーカーを経て建築設計の世界に入りました。専務の有馬茂も化学工学の技術者でした。独学で棟梁となった相談役岡本弘の志を継いだのです。木の命を生かして、いいものをつくる。結局、林業の未来は人づくりにありました。

 岡山県に、兵庫県との境に西粟倉村という山村があります。総面積58平方キロメートル、人口約1600人という小さな村です。平成の大合同に参加せず、村としての独立を選びました。住民の多数決で、自立の道を選んだのです。土地面積の95%が森林で、その84%が人工林という、まさしく林業の村でした。

 2008年に、村は「百年の森林構想」を打ち出しました。その核となるのが、森林の保全管理から施業、間伐材を利用した商品開発と製作、そしてそれらのプロモーション活動、さらには西粟倉村のファンつくりなどです。
 村ではその企画を、森林経営コンサルタント(株)トビムシと共同で進め、地域商社「西粟倉・森の学校」を設立しました。その主な業務は、西粟倉村の森と人々の生活を繋ぐこと、地域でつくる家具や木工製品、農産物の販売、イベント、ツアーの開催などです。社長に迎えたのは、京都大学大学院森林生態学を出て、農産漁村専門のコンサルタント牧大介でした。速水林業の主催する「林業塾」の講師も勤め、受講してきた愛媛大学農学部を出て大阪の企業でサラリーマンをしていた井上達也29歳を誘って、営業を任せることにしました。まさに異業種から飛び込んだルーキーでした。ともに村に移住して自前の製材所をつくり、天然の無垢材の加工に乗り出しました。外部から迎え入れた人材の活躍で、試行錯誤の末に生まれた主力商品が、「ユカハリ」シリーズです。無垢材の長尺フローリングでしたが、当初は全く売れなかったそうです。スギとヒノキでしたから床材として柔らかいせいもありました。しかし正方形のタイル型を発売すると、無垢材のよさが認められて次第に売れるようになりました。森の学校には、Iターンなどで若い人たちが入社して、村は大きく動きだしています。林業に生きると決意した小さな村の真剣さと行動力は、まことに目覚しいものでした。

 この3月、東京の練馬区平和台の近くに新しい共同住宅「青豆ハウス」が誕生しました。全8所帯の賃貸物件ですが、入居者自身がカスタマイズとDIYで部屋を仕上げるという、大きな特徴を持っています。この床材に「ユカハリ」シリーズが採用されました。オープンデッキも西粟倉の材です。建設中から注目を集め、すぐに満室になりました。竣工した記念イベントには、のべ750人も訪れたそうです。未来の暮らしを提供して話題になりました。

 たまたま拙宅からも近かったので、早速見てきました。写真のとおり外壁のスギの木目も好ましい感じでした。なお詳しくは下記をご覧ください。

http://www.nishihour.jp/company/

http://www.aomame.jp/summary/ 
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「了」