「炭焼き伝承燃える心」国際炭焼き協力会会長 杉浦銀次

  -地球の「薬」、世界で効用を説く   20121010日  日本経済新聞 「文化」蘭に掲載された内容の一部

私は米寿を迎えた炭焼き爺、今でもあちこちに出かけて教えている。炭は使われなくなったがその優れた性質は高く評価され「地球の薬」として注目される。水質浄化、土壌改良、微生物活性、鮮度保持、融雪など用途は実に幅広い。

炭一筋の研究生活
太平洋戦争が始まった年森林総合研究所の前身に研究員として入所した。それ以来研究生活を続けている。炭は戦後のピーク時には230万トンも作られたが今は3万トン。炭を人類の未来に役立てたい。92年JICAの依頼で白炭窯の技術移転のためマレーシアへいく。同国は火持ちの良い白炭の焼き方の習得を急いでいた。カシやナラを材料に仕上げの段階で窯に空気を入れ1300℃の高温にして焼くのが白炭、備長炭がそれである。

地域・風土で技術様々
(1)伏せ焼
日本では地面に穴を掘り、木を積み上げた後、枝葉や枯草を隙間に詰め込みトタンで覆った後に土を被せる。タイでは平地にバナナの茎を5本並べてたき口にし、庭木の枝やトウモロコシの茎などを円錐形に積み上げ最後にバナナの葉で覆った後に土を被せた。竹筒を6ケ所位に差して煙出しにする。

(2)窯を使わない方法
世界の製炭法は炭窯を使わない方法と使う方法に大別できる。使わない方法は伏せ焼法、地面に穴を掘る坑内製炭法、大量の木材を積んで枝葉で覆い、その上に土を被せて焼くマイラー製炭法(欧米)がある。

(3)窯を使う場合
窯を作るのに粘土・石などを使う中国型と鉄板やレンガ、セメントなどを使う欧米型がある。日本は中国型に属している。その他連続して製炭する木材乾留法、おがくずなどを炭化する平炉法などがある。しかし日本のように炭を環境改善、環境創造手段と考える国は無い。

国際炭焼き協力会という組織を結成
タイ、ガーナ、ブラジルなどで普及活動を開始した(94年)。教える反面教わることも多かった。中でも韓国炭研究会の趙会長とは長い付き合いで釜山市の郊外にある竹塩を作る工場を紹介され見に行った。真竹に天然の塩を圧積して炭窯で9回焼く。最後に高温度で処理すると紫水晶のような美しい結晶ができる。その味はまるで命の源のような得も言われぬ味だった。
北海道下川町のタドン
下川町の炭を基盤にした産業・農業振興など徐々に国内でも炭の力が認められてきたが温暖化防止の手段としても効用は小さくない。その一つがタドンだ。炭の粉とでんぷんを混ぜてつくるタドンは火持ちが良く省エネ型のエネルギー源、アフリカでの普及に力を入れている。
記事の再編集 福島 巖

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