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技術者がバイオマスを語る-コラム

バイオマスを技術者が語る-コラム

2010/2/27 土曜日

地球環境 46億年の大変動史   田近英一著   (株)科学同人

カテゴリー: 本を読んで   by editor5 @ 13:25:52

著者の田近氏は現在東京大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻準教授です。 
この本は、8章で構成されています。
1.生命の存在する惑星
2.大気と海洋の起源
3.地球環境の安定化の要因はなにか
4.生命の誕生と酸素の増加
5.気候の劇的変動史
6.スノーボールアース・イベント
7.恐竜絶滅を引き起こした小惑星衝突
8.そして現在の地球環境へ

 第1章では、太陽系の惑星を、地球型、木星型、天王星型の3種に分けて、
生命が存在できるのは、地球型惑星であり、その中でも大気と海洋の存在す
る地球のみが安定して生物の存在できる唯一の惑星であると述べています。

  第2章では、大気と海洋がどのように出来たかを説明しています。地球誕
生直後の6億年の状況がはっきりしないので、明確にはなっていないが、大
気の組成は、大幅に変化したが、海の組成はここ数億年間殆ど変わらないと
思われています。
 
 第3章では、顕生代の約5.4億年 ― 広く見れば原生代以降の24億
年の地球安定化について述べています。46億年前には太陽の明るさは現在
の約70%であったと推定されます。
それにも関わらず地球が凍結しなかったのは温室効果ガスの存在です。
温室効果ガスは、二酸化炭素の他に、メタン、アンモニア、水蒸気等様々あ
ります。

これらの働きにより地球は生命が存在できる環境を保持してきているのです。

この安定化のシステムがウオーカー・フィードバックと呼ばれる負のフィー
ドバックです。
 
 第4章では、生命の誕生から始まっています。38億年前が最古の生命活
動の痕跡と言われているそうです。しかし地球上に大量の酸素をもたらした
シアノバクテリアの発生につては、35億年前という従来の記録は必ずしも
確定はされてないと述べています。
しかし、私見としては初期の嫌気環境の参加の時間を考えると相当早くに、
シアノバクテリアが発生したと考えています。

22億年前頃に急激な大気中の酸素濃度の増加が始まっています。
我々の知る地球はこの辺からという気もします。

 第5章に、気候の変動史を記しています。二酸化炭素の濃度は顕生代を
通じても減少してきています。(カンブリア紀で今の20倍程度)酸素濃
度も、石炭紀には今の2倍の濃度と推定されています。
この時代、大陸の動きが活発でありそれに基づく様々な問題の出現もあっ
たようです。
例えばヒマラヤ山脈の出現による寒冷化等はこの象徴的な出来事でしょう。

 第6章では、スノーボールアースについて述べています。スノーボール
アースは、約6億5千年前(2度の全球凍結)と約22億年前に出現して
います。
原生代の岩石の解釈からは全球凍結が考えられながら、それはないとされ
たのは、凍結からの離脱のシステムが明らかになっていなかったからです。
1992年この問題を解決してジョセフ・カーシュビングが全球凍結を唱
えました。全球凍結しても地球の火山活動は継続します。
この間の火山からでた二酸化炭素は、地上の海、岩石等と切り離されるた
めに反応せずに、大気中に蓄積され、大気は高温となり氷は溶けだします。
この間は400万年程かかると推計されています。
氷の融解は数百年から数千年で終わりますが、ここで、凍結時の―40℃
から60℃へと約100度の大きな温度変動があります。
ここでの、22億年前の凍結の後に、原核生物から真核生物が出来、6.5億
年前の凍結の後に多細胞生物が出来たとも考えられます。
今後大いに考えてみるべき状況と思われます。

  第7章には、小惑星衝突による恐竜絶滅が述べられています。小惑星の
衝突に関する調査は現在まだ進行中で、これからも新しい発見がでてくる
ことが期待されます。
広島の原爆程度の衝突エネルギーの天体衝突は、年に数回程度の確率であ
るが、この場合は地上に達せずに燃え切ってしまう。中生代末の衝突程度
の衝突は、数十億年に1回程度の確率であり、顕生代にはこの他には衝突
はなかったと、言われています。
今後の衝突について、これからは考えておくべき大きな問題と思われます。

 第8章には現在の地球環境問題が記されています。地球の歴史から見る
と、現在は間氷紀である。ミランコビッチ仮説によると、氷期と間氷期は
約10万年の周期で繰り返されている。
ここまでは、人間活動には関係のない地球の問題でしたが、これからの地
球温暖化問題は、その関係を如何に取るかを考えなくてはならない。
二酸化炭素の急激な上昇はどのような問題となるか、我々も考えてみるべ
き問題でしょう。
        記  藤田良廣

  

2010/1/24 日曜日

山を育てる道づくり     田邊由喜男監修 大内正伸著    農文協

カテゴリー: 本を読んで   by editor5 @ 10:17:48

 安くて長もち四万十式作業道のすべて

高知県四万十町の田邊さんが町役場に在任中林道作りを始めた。
全国の林道を訪ね歩いて学び彼独自の道作りを完成した。

これが四万十式作業道として崩れない、低コストの作業道として評価されている。
田邊さん曰く
「いい林道は自然を豊かにする道具、悪い林道は自然を破壊したくさんのコンクリートを使う」

作業道の特徴は次の7点

1.       従来の林道との差
従来は車が走り易いことが第一でアップダウンの少ない道作りだった。
四万十式は車の性能がアップしているので山の起伏に合わせ、地形重視で
作る。

2.       垂直切土
道を斜面に切り込む時山側の「のり面」は斜めに作って崩壊や落石を防ぐ。
四万十式では垂直に切り込むことで返って安定するという。
これは上に生えている木の根が深く張ってネットワークで水分や土砂を守
っているが斜面は直接雨を受けて水が侵入、土砂崩壊を起こし易いという。
道作りの時切り込み深さは1.5m以内に収まるよう場所を選ぶのがコツ。

3.       切土重視から盛土重視へ
原則は半切、半盛で残土が発生しないようにすること。盛土は心土との境界
面で滑り易いので傾斜した境界面でなく階段状の床堀をする。
その後床ならしをして基礎をしっかり作りこんでいく。

4.       表土ブロック積みと根株積み
表土20cmの範囲には微生物や種が含まれているのでのり面の緑化材として上
手に活用する。根株も盛土にはさみ込んで路肩の強化や土留めとして使う。
現地で出る石も石組の基本に合う積み方をする。
現場で発生する物を捨てるのでなく積極的に活用すること。
のり面から草や樹木が生長して雨からの崩壊を守ってくれる。

5.       水を克服する
雨水処理が道を崩さない最大のポイント。最も警戒すべきは豪雨である。道は
谷側を低くして雨水を分散して落下するよう設計する。
カーブ地点も外側が低い形にして道の中に水を貯めない。
側溝を作ったりして水を道路に這わせない。

6.       沢水は「洗い越し」に
沢のような地形で水が集まり易いところはヒューム管や橋などを作って逃がさ
ない。豪雨のとき破壊の元になる。
石や丸太を積んで雨水は道の上を直角に流れるように工夫する。
できたら上側に一時的に水を留める小さな貯水池があれば良い。

7.       その他の構造物
盛土路肩に丸太1本を使った「丸太アンカー工法」は急斜面の横断などに使わ
れる。通常は丸太とワイヤーで2~3ケ所のアンカーをセットする。

この方式をとればコストは通常方式の半分で済んでいる。
その理由は
・測量や設計図面を使わない
・コンクリートやヒューム管など機材を使わない
・路面にジャリや敷石を使わない
・2人で道作りをやる
・残土が出ないので捨てに行く作業が無い

感想
この四万十式は現場の知恵の結集である。自然にやさしい方法で、人間の必要とする車道を作っていく事は研究者や官庁の人からは出ない発想である。
全国には様々な地形が存在するので各地域に合った作り方を更に工夫する必要がある。四万十式に加えて全国版林道方式の出現を期待する。
        記   福島 巖

  

2010/1/13 水曜日

バイオエタノールの本   日刊工業新聞社  B&Tブックスから

カテゴリー: 本を読んで   by editor5 @ 13:23:13

バイオエタノール(BE)の基本……木材からBEを作るのは何故難しいか

bioeth0031.jpgbioeth0041.jpg 

1.木材の組織
木は樹皮に近い部分は生きていて外に向かって成長している。
内部は死んで色々な物質が沈殿している。
木材の組織を導管(水を送る)中心に展開すると左図のようになっ
ている。細胞同士はリグニンが多く含まれる糊によって強固に接着
されている。
1次壁と2次壁はセルロースが規則正しく配列したミクロフィブリ
ルとリグニンによって強固に組み立てられている。

bioeth0021.jpg

2.木の成分構成

セルロースはグルコースが鎖状につながった高分子で木材の4050
%
を占める。平板状に積層されているので安定して水に溶けない。

デンプンも同じ成分だが構造がラセン状であるため溶ける。ヘミセ
ルロースは樹種により成分が変化する。
リグニンはベンゼン環を持つフェノール類で構成している。
糖類ではないのでこれからエタノールは出来ない。

%表示   セルロース      セミセルロース   リグニン
広葉樹系        40-55           24-40           18-25
針葉樹系        45-50        25-35           25-35
草本系          30-45           35-50           10-20  
               
トウモロコシ、稲わらなど

3.木からエタノールを作るとしたら?
セルロースやセミセルロースを糖化するには2つの方法がある。
「酸糖化法」と「酵素糖化法」である。

硫酸糖化法
1960年代に実行されたがコストと設備費が合わず見送られてきたが
ここに来て見直しが行われている。
酸の加水分解反応は数十分程度で終わるが生成した糖が過分解物に
なって収量が落ちることや酵母の発酵を阻害してしまう。
それらに対する対策が開発要素である。

酵素糖化法

50℃の温和な条件で行われ過分解物の発生もない。しかし糖化に
24時間以上の長時間を必要とし安定なセルロースを酵素に反応しや
すいように前処理が必要になる。

水や薬品を加え高温高圧で煮る蒸煮法や加圧蒸気下から一気に大気
圧に開放して繊維を解す爆砕法、機械で微細に粉砕する方法などが
ある。低コストで処理できる方法の技術開発が主要なテーマである。

 

糖化酵素の開発

セルロースを分解する酵素としてはセルラーゼ酵素群がある。
カタツムリやシロアリ、昆虫などの胃や腸に定着している微生物に
よるものである。最強の酵素力化を持つのは糸状菌のトリコデルマ
リーゼイが有名である。コストも
2000年当時から1/30にも低下して
おり酵素を使う障壁は小さくなってきている。

      記  福島 巖

  

菌が地球を救う! 小泉武夫     宝島社新書

カテゴリー: 本を読んで   by editor5 @ 11:51:58

               あなたのまわりの発酵菌が人を幸せにする
  

除菌社会は本当に健康か?
菌の無い場所はない。除菌効果を宣伝して色々な商品が紹介され
ているが果たして何の菌を除いているのか?

無菌状態になると人間の身体の抵抗力が弱くなって悪い菌にむし
ばまれる。
昔から日本人は菌と上手に付き合ってきた。
取った魚はすぐ腐る、その防止のため塩漬けにする(それが発酵
して) - 塩辛が出来上がる。
発酵食品大好き民族が日本人である。

菌の働きには2種類ある。
-
 発酵:微生物が人間のために良いことをしてくれる。
       (味噌、チーズ、酒や抗生物質など)
-
 腐敗:微生物が人間のために悪いことをする(病気など)。

ガンは菌力で治す
日本人の寿命が延びて高齢社会になってきている 
-
 食料が良くなったこともあるがそれ以上に貢献したのは菌力
(1)抗生物質ができて結核やガンなどの治療薬が開発された。
ペニシリンは青黴。

(2)化膿止めが可能になり大掛かりな手術が実施できるように
なった。
ガン治療薬は広く抗生物質が使用される、化学合成薬は
副作用があり問題である。

環境問題と食料自給
日本国民の捨てている食べ物(コンビニ弁当、給食残飯、家庭残
飯)2千万t/
カロリベースで食料の60%は海外依存である。
海外の水を使い燃料を使った船で運んできた物が破棄されている。

日本の河川を蘇えらせた環境発酵菌:
工場廃液に含まれる有機物によりバクテリアの異常発生―酸素の
大量消費―魚類の死滅という悪循環が高度成長期の副産物だった。

これを排水処理設備を作り、メタン発酵法や活性汚泥法など有機
物を菌に食べさせることにより解決している。
この技術は日本の誇りである。

生ゴミを燃やすな!
生ゴミは湿っているから不完全燃焼する。ダイオキシンが発生し
やすいので重油を使って高温燃焼している。
これらの焼却灰は処分場で埋め立て土壌汚染を引き起こしている。
生ゴミを菌の力で発酵させ堆肥に変え土に戻すことにより炭酸ガ
スの発生を無くすことができる。
 

菌力で水素を作る
ラン藻菌に光が照射され周囲に水があると水素と酸素に分解す
る能力がある。
光合成細菌は有機物の存在下に光が当たるとそ
の有機物を分解して水素を発生する。
これに生ゴミを与えればエネルギーを得た上でゴミ問題も解決
するといったメリットがでる。

日本酒 発酵技術の優秀さ……世界一高いアルコール度を達成し
ている
日本独自の醸造法:(1)米を原料にする/(2)麹カビを応用す
ること、で発酵原酒平均20%、最大23%のアルコール度を達成して
いる。他の酒類ではワインで813%、ビール37%などに比べて圧
倒的な高さを示す。
ウィスキーやウォッカなど高アルコール酒は蒸留して濃度を高めて
いる。何故これができたか? 
清酒酵母はモロミの中でアルコールを発酵するが自分で作ったアル
コールに冒されて活動が鈍ってくる。
しかし麹菌はリピットプロテインという複合蛋白質を持っていて細
胞内に貼りついてアルコールの働きをブロックする。
麹を使った味噌、甘酒、米酢などはガンを予防する、疲れた身体を
癒すといった健康に役立つ作用を持っている。
                   記  福島 巖

  

マグネシウム文明論       矢部 隆 山路達也     PHP新書

カテゴリー: 本を読んで   by editor5 @ 11:33:00

    - 石油に代わる新エネルギー資源 -
矢部さんは東京工大教授でレーザーの研究者、山路さんはテク
ニカルライターで矢部先生の話を1冊の本に仕上げた。

太陽光からレーザーを作る
自然界の光はバラバラの光の集合である。波長によって焦点の
合う位置が変ってくるので焦点には画像ができる。
レーザーは波長やタイミングが揃っているので極めて小さな焦
点に合わせることが可能である。

物質に電磁波のエネルギーを与えると励起状態になる。ここに
特定波長を出す材質(媒質)で誘起するとレーザー光が放射さ
れる。
現在レーザーを作っているのは半導体レーザー方式で特
定の波長を選択して使っている。
矢部さんは太陽光からレーザーを発信すべくネオジウムYAG
を媒質に選択した。更に効率を上げるためCr成分を添加する
ことによって600nm(ナノメートル)近辺の緑からオレン
ジにかけての波長を吸収して1064nmのレーザーの発射に
成功した。

4m当たりの太陽エネルギーは4kwあり、レーザーを使っ
て出力80wを達成したがわずか2%に過ぎず、当面の目標を
400wに置いて研究を継続している。

レーザー技術の応用
レーザーの特性である焦点を絞り込むことによって加熱温度を
上げることができる。研究室ではこのことを応用してマグネシ
ウム(Mg)の精錬技術を考えた。
MgOの沸点は3600℃であるが潜熱が大きいので2万度ま
で照射温度を上げることができれば気化蒸発して金属Mgと酸
素を分離することができる。

1cm当たり200℃のエネルギーがあればレーザー光を
1mmに絞ることで2万度相当のエネルギーを得られる。
またMgOを入れる耐火炉もスポット部分は高温になるが1
cm離れると100℃位になるので酸化防止のため、アルゴン
等不活性ガスで液体Mgを吹き飛ばすことにより炉が不要にな
る。

従来のMg製造技術
(1)含水塩化マグネシウムを熱分解してMgOにする。
これに塩素を加えて無水塩化マグネシウムにして電気分解する。
この方式が20世紀までの方法であった。

(2)ピジョン法(熱還元法)
主原料のドロマイトを1000℃で加熱焼成し、フェロシリ
コンで還元して作る。高温(12~15000℃)真空状態
でMg蒸気を作って冷却金属Mgを取り出す。

大量の熱を使うが純度が高くて安い。中国が石炭を使って作
り市場を独占している。250¥/kgが相場。
1tのMgを作るのに11tの石炭が必要である。

レーザーを使った製造技術
原料は海水から作る。海水の1.29%はMgでMgclとして
存在し無尽蔵に存在すると考えてよい。
2025年には世界は深刻な水不足を迎える。
海水を現在の「逆浸透法」で淡水を取り出すには莫大な電力
を必要としている。矢部先生は新方式のペガサス浄水化シス
テムを考え出した。海水を太陽の集熱器で80~90℃に上
げてローラーの高速回転で細かい水滴にして蒸発させる方式
である。淡水と同時に不純物を分離回収してMgclを得
る。300本の太陽光励起レーザーを並べれば50t/年の精
錬は可能である。

大量に作ろうとしたら例えば6万機の設備を並べればよいこ
とになる。
設備費用はかかるがランニング費用はほとんど無
いため製造コストは低く将来性がある。

Mgを燃やす
150¥/kgを切れば競争力が出て燃料として使える。
将来の車の燃料には水素燃料は貯蔵や運搬に問題があるので
リチウムイオン電池の電気自動車とこのマグネシウム空気電
池車の勝負になる。リチウム電池は充電スタンドをあちこち
に配置するにしても充電に時間がかかる。
Mg電池は500wH/kgは可能であり瞬時に電池交換が
できる。そして使い終わったMgOはリサイクルしてMgの
精錬用原料として繰り返し使えるメリットがある。

石油に代わる新エネルギー資源 ― マグネシウム
ニガリやカメラのフラッシュの原料として知られるマグネシ
ウムであるがエネルギー資源としてみた場合新しい展開が見
えて来る。

石炭:30MJ/kg 排出は炭酸ガスや亜硫酸ガス等
Mg:25MJ/kg 排ガスなし、MgはMgCOに変
換する

太陽のエネルギーをこのような形で淡水化をも含めて循環使
用できれば新しい循環型社会システムを形成することも可能
である。

まだブレークスルーすべき課題はたくさん出てきそうだが温暖化
が叫ばれている今日、地球の助け船になる壮大な夢である。

今後の研究の進展に期待しよう!

       記 福島  巖

  

2010/1/11 月曜日

銃・病原菌・鉄 ジャレド・ダイアモンド       草思社

カテゴリー: 本を読んで   by editor5 @ 15:32:41

―1万3千年にわたる人類史の謎 ―

 人類は7百万年前、アフリカの地に始まった
数十万年間はネアンデルタール人の世界であったが4万年
前から数千年間にクロマニオン人(原生人)に入れ替わった。
優れた技術と言語能力、知能を使っての侵略、殺戮によりネ
アンデルタール人は絶滅してしまった。

デルタール人たちは縫い針を持たず衣服を作れなかったので
寒冷の地には進出できなかった。1万3千年前に最終氷河期
が終了して現在につながる時代が始まった。

それから地域によって文明度に著しい差が発生してきた。
何故そうなったか?

人間の進出と同時に各地での大型動物は絶滅している。
しかしアフリカには残った。動物が人間の危険性を学習して
対処したためである。    

ニュージーランドのマオリ族とモリオリ族
1835年北島に住むマオリ族500人がチャタム島に住む
モリオリ族を襲い殺害奴隷にしてしまった。元々は枝分かれ
したポリネシア人。

マオリ族:技術や政治形態で複雑な社会を形成した。農耕作
業で自分の食物を作り少しずつ余剰の食物を貯蔵できるよう
になる。職人や族長、兵士などを養うことができた。
農機具や武器、工芸品を発達させていった。建物や砦なども
建造して非常時に対処できる基盤をつくった。

モリオリ族:狩猟採取民のままの生活を継続した。皆が平等
ではあるが毎日の生活に追われ蓄積が少ない。敵に襲われた
時に対応に苦しむ。

スペイン人とインカ帝国の激突
1537年ピサロ将軍がならず者集団2~300人を率いて
皇帝アタワルパに会見。カハマルカの地には8万人ものイン
カの軍団が警護していた。
ところが見たこともない銃声や馬、鉄剣に怯えて混乱し皇帝
も簡単につかまってしまった。国内は内乱状態になり、その
上天然痘が大流行して後継者も死亡し帝国は滅亡してしまった。

これは文字を持つことによって知りえた情報をたくさんスペ
イン側が持っていたのに対しインカは何の情報も持っていな
かったことが決定的だった。

白人とニューギニア人どっちが知能指数高いか
欧州社会:
文明社会では死因は疫病などで知や遺伝子関係には無関係で
ある。
子供はTVやラジオで受動的な過ごし方をする。
ニューギニア社会:
死因は殺人や部族間の衝突、飢えや事故など ― 頭の良い
人が生き残る。

子供どうしで会話や遊びを通じて刺激的な活動を行っている。
   ― 知能指数は文明の遅れた社会でも高い ―

食料生産と征服戦争
耕作民は出産間隔2年に対して狩猟民は4年。農耕社会は食
料の貯蔵で王国社会を築く余裕があった。大型家畜を陸路の
運搬に利用するようになり戦争も強くなった。

農耕社会の開始:メソポタミア三日月地帯BC8500年頃、
欧州西部BC5500年頃、米大陸BC3500年以降。

病原菌は家畜がくれた死の贈り物。天然痘やはしかは動物に
感染した菌の突然異変である。人間は抵抗力を付けて対処し
てきた。感染症の菌がはびこるのは充分な数の人口密集地帯
である。戦争で銃器に倒れる人間よりも伝染病で亡くなる人
が圧倒的に多く白人1人との出会いで国が絶滅してしまった
例がある。

文字を作った人と借りた人
文字を発明するのには大変な努力と苦労を要するので発生地
点は限られている。

多くの地方では借りてきて自分たちの文字に作り変えている。
最古の文字 シュメールの楔形文字 - BC 3,000年頃
           メキシコ先住民マヤ文字 - BC  600年頃
           エジプトの文字          ― BC 3,000年頃
           中国の漢字              ― BC 1,300年頃
筆記用具は先の尖った道具、から葦の先端を利用した尖筆な
どに変る。

シュメール人の発明:絵で表現した名詞を同じ発音の抽象名
詞として使うように改良。 
例 「鏃」=「生命」
文字は王や僧侶が書記に使わせ税として取り立てるための手
段であった。
 例「羊の数を記録」
狩猟社会には文字は無い、管理する余剰食糧がなく必要性が
薄かった。
インカ、ハワイ、トンガに文字無かった。

発明は好奇心の産物
エジソンの蓄音機:何に使うか不明だった。20年経ってか
ら音楽の再生に!

ソニーの半導体:米国の発明品だが真空管があったので使う
 必然性が無かった。
ソニーはそこに目を付けて技術の導入
 図り新製品を作った。

電球の発明もイギリスではガス灯全盛の時代で見向きもされ
なかった。

受容性の高低により技術は自己触媒的に発達する。

オストロネシア語圏
  インドヨーロッパ語を話す欧州人が世界各地に進出する前、
  広く分布していた民族はオストロネシア族であった。
  中国南部から台湾に移動しここが起点になって太平洋に拡散してい
  った。その背景には画期的なカヌーの発明があった。
  丸木舟だと横波を受けると転覆してしまう。浮き木を船体の両側に
  取り付けることにより安定性を増した。
  台湾からフィリッピン(BC3500)ボルネオ(BC300)太平洋各島
  (BC1600-1200)ハワイ(AC500)ニュージーランド(AC1000
  マダガスカル(AC500)と移動していった。
  これらの地域はポリネシア系の人種と言語により証明できる。

      記  福島 巖

  

セルロースを分解しディーゼル、アルコール等を作る新しい微生物

カテゴリー: K-BETS雑感   by editor5 @ 12:58:33

― 緒言 ―
色々な糖分や澱粉(サトウキビ、トーモロコシ等)からアルコールを作
る方法は以前から検討されてきており現にブラジル、アメリカでは工
場規模で実用化されている。

日本でも酒類の生産は大規模に行われているが、エネルギーの生産としては数
少ない工場で試験的に行われているのみである。それらの原料は現在食料にな
っている物が多いのでこれからは食料でないセルロースからアルコール作ること
が急務である。
その対象は木材、草、バガス、稲わら、死んだ植物(放置された
間伐材等)等である。これらが有効に活用されていない理由は微生物の研究開
発が充分に展開していないからである。
アメリカでは発酵に必要な微生物の探索や開発が強力に進められている。
その状況を佐野リポート等からまとめてみた。


1.セルロースを分解して糖を生産する微生物
  セルロース細胞壁の分解は熱と化学処理を伴い、従来難しい問題で
あった。またセルラーゼで分解することも実施されていたが、前処理
に手間がかかり大変であった。
 メアリーランド大学のSteve Hutcheson はチェザピーク湾で見つけた
バクテリア(Saccharophagus  degradanns)が強力なセルロース細胞壁の
分解能があることを突き止めた。
さらに効率よく糖に変更するために遺伝子を組み換えて、72時間で糖に変換
できるようになってきた。
この菌でアルコールを作る会社Zymetis社を2006年に設立した。


2.糖からエタノール、油脂等を作る微生物
 植物材料(セルロース)を分解すると出てくる糖のうち、グ
ルコース等は発酵するが、キシロースは発酵しない無駄な糖で
あった。つまりキシロースはイーストで資化できず、アルコー
ルに変える事ができなかった。
ゲーテ大学
(フランクフルト)Eckhard Bolesは大量の遺伝子データベ
ースを精査した。
その中からバクテリアから抽出した酵素を作ることの出来る遺伝子を見つ
けた。この遺伝子をイーストに注入し、キシロースも資化しエタノールを製
造することが出来るようになった。
E.Bolesはスイスのバイオ燃料メーカーであるButalco GmbHの共同
創立者でもある。
 MITのAnthony Sinskeyは微生物の未知の能力を開発し利
用している。土中にいる
バクテリアRhodococcus opacusには多
種類の糖と
毒物を食べる柔軟性のある食性があり、遺伝子的に
カタログ化してきた。そしてその菌はトリアシルグリセロール
を作ることができ、化学処理によりディーゼルに変換すること
ができる。
従ってセルロースを分解してできる糖(グルコース、キシロー
ス等)からトリアシルグリセロールを経由しジーゼルができる
見通しができた。
Sinskeyはその技術を活用する会社Metaborixを設立
1990)し、現在はADMとの合弁会社となっている。

3.セルロースから直接エタノール作る微生物
 ダートマス大学のLee LyndはMascoma社との共同研究で、
遺伝子操作によって高熱性バクテリアでエタノールを作る事が出来る
ようになった。従来セルロースを分解するためには高価なセルラーゼ
を使っていたが、一段でエタノールが出来ることで、製造コストは石
油に劣らないといわれている。

 4.セルロースから微生物を利用して酢酸を作り
  化学操作でエタノールを生産
ZeaChem社が開発したプロセスで、シロアリにいるバクテア
Moorella thermoacetica)を利用して木材から酢酸を作る。
エタノール発酵は炭酸ガスが出てしまうのでCの効率が悪いが、
酢酸の場合炭酸ガスが出てくること事はなくCの効率はよい。

酢酸から酢酸エチルを作り、酢酸エチルに水素添加してエタノー
ルを作る。
水素は残留リグニンを利用してガス化し水素リッチの
混合ガスとし、そのガスを利用し水素化する。エタノール発酵す
るより40%効率がよい。
この方式は京都大学エネルギー科学研究
所・坂志朗が報告している方法と同じであるが少し異なるのは水
素の作り方である。
坂は石油精製から水素を持ってくるといっているがその辺が異な
る点である。

5.光を利用して炭酸ガスを燃料に変える微生物
 アイオワ大学のJackis Shaksはハイドロカーボンを自然に生成す
るカビを発見した。
今後その遺伝子を分離することが期待されている。
また木の遺伝子と草の遺伝子を交配し、ジーゼル油を生産できる草を
作れる可能性がでてきた。
 UCLAでは遺伝子加工したバクテリアを使用し、炭酸ガスを餌
としてイソブチルアルデヒドを生成することに成功した。
これはイソブタノールの先駆物質である。これがきっかけになってこ
のバクテリアを利用して種々の石油系燃料の代替となる物質が出来る
可能性がある。

 ― 結果感想 ―
アメリカではセルロースの分解に積極的に新しい微生物の探索、造成
を行っており、成果を挙げている。この方式で車のディーゼル、アル
コールが生産できる可能性がでてきている。
セルロースがコーンにとって変わり、その上コストが更に下がること
を期待している。
 
          記  
廣谷精

  

2010/1/6 水曜日

「天と地と人の間で」 鷲谷いづみ著  岩波書店

カテゴリー: 本を読んで   by editor5 @ 18:35:12

これは大河ドラマの話ではありません。
著者は東京大学農学生命科学研究所教授,
専門は植物生態学、保全生態学です。
これは雑誌「科学」に6年間にわたって連載したエッセイをまとめたものです。
これまでの自然科学は、専らモノとコトだけを対象とした「要素還元主義」に基
づいた研究が求められてきました。
しかしここにきて地球や生命の由来とその来歴を探る強い思いや、深刻な環境保全
への危機感から、狭い専門領域を超えた社会とのかかわりを求める新しい動きが始
まっています。

著者は数少ない野生動植物研究者としてフィールドワークを重ね、社会と自然を見つ
めながらその「怒涛を打つ」というほど急速に進む生態系の不健全化に警鐘を鳴らし
ています。
そのいくつかを挙げてみましょう。
「早まる春と速まる絶滅」では、さまざま
な生物の固有の季節が大きく変化して、絶滅の危機が増大しているとの
ことです。

これは気温の上昇だけでなく、激しい気象変動が生物の生存を危うくしているのです。
分布域の限られた野生生物が、その生活史に合わなくなった環境に適応してゆくた
めに
は、分布域を変えるか新たな適応進化をしなければなりません。
しかし分布域を変えるにもその移動ルートは開発などによって分断され、適応進化に
はそのあまりにも早い環境変化に、遺伝的な変異や世代交代を重ねる時間がまるで
足りないのです。
環境と経済の調和が求められていますが、その歩みは遅々として進まないため、これ
までの生物多様性は雪崩のように崩壊することでしょう。
「暴かれたエイリアンの強さの秘密」では、グローバル化により新しいパ
ラサイトが次々に侵入し、それがヒトなどの寄主に大きな脅威を与えてい
ます。
新型インフレンザはその一例なのです。
人口が都市に集中して寄主の密度が高く、しかも天敵のいない新天地で猛威をふるい
ます。それは急増した外来生物種でも同じで、多様なニッチでおとなしく過ごしてきた在
来種に比べて、競争力や繁殖力が際立って大きい。
まさにインベーダーそのものです。

一部の産業の利益のために意図的に導入された外来種が、各地でたいへんな被害を
もたらしています。
これはまた遺伝子組み換え生物にも起こりうるリスクですから、その生態系への制御の
見通しのないままでは絶対に進めてはならないことなのです。
「生態系の未来について」では日本の生物相が世界に例をみないほど実に
豊かであること、それはトンボと両生類の種の多さにあらわれているそう
です。

もとの自然が豊かだったことに加えて、水田農耕がその生物相の保全に大きく貢献し
ました。
それが人工林はじめ水路のコンクリート張り、農薬や過剰な化学肥料による汚染など
で著しく損なわれてしまいました。
また遺伝子組み換え種子が導入され、単調な群落化が進んでいます。
そこではもう生態系の健全性は失われ、食の安全安心も保証の限りではありません。

その反省がようやく認識されはじめたのですが、遺伝子研究者に比べて肝心の環境
保全研究者は極めて少なく、研究投資の方向が狂ったままなのです。

自然はテクノロジーで克服できると思っているひとたちは、本当の自然の手ごわさを
知らないのでしょうか。

        記   吉澤 有介

  

見えない巨大水脈ー地下水の科学  井田徹治   講談社ブルーバックス

カテゴリー: 本を読んで   by editor5 @ 16:24:01

水は貴重なものです。
水に恵まれた日本に生活していると、水垣町であることを忘れてしまう人が多くて、
時には国際的なトラブルにもなりかねない場合もある。
 私たちが必要とする水は、
地球上の水の97.4%の海水ではなく、わずかな表流水と地下水です。
その淡水も大部分が氷河等の直ぐには使えない水であり、実際に使われているのは、
0.01%の表流水と0.66%の地下水です。
面積あたりの降水量が多い日本では、次々に降る雨による水に起因する大量の漂流水
に恵まれていますが、これは世界的にも稀なケースです。
 この本では、表流水に比べてその量が多く、海外ではむしろ使用の中心となっている地
下水について述べています。
名水の味の比較では、Na,K,Ca,Mg,HCO3,Cl,NO3,
SiO3のの溶存物の内のSiO3を除く8種のよう存物での、ステイフダイアグラムを作り、
更にトリリニアダイアグラムを作成して水の味の評価をしています。
日本名水100選の水の評価が記載されています。
 地下水の調査は現在も続行中で、地下水の枯渇による全地球的な問題になる日も近い
と予測されています。
           記  藤田 良広

  

グリーン・ニューディール  ヴァン・ジョーンズ   東洋経済新報社  

カテゴリー: 本を読んで   by editor5 @ 16:07:45

本書の中心テーマは、「地球環境問題」と「米国経済の弱体化と格差の拡大」を
採りあげて、2008年の夏の時点で書かれている。
著者の名前は、日本では知られていないが、アメリカの雑誌「タイム」では著者を
「最も影響力のある100人」(2009年4月時点)に選んでいる。
「グリーンカラージョブ」は著者の発案で、環境負荷の少ないグリーン産業に転換さ
せて、新規雇用を政府の関与によって創出する。職を失った階層の人々が、経済
的恩恵を受けるような「グリーンカラー・エコノミー」の実現を目指す。
という内容である。
「グリーン・ニューディール」の言葉も、この本が最初の様である。
2009年にスタートした「オバマ政権」の再生可能エネルギーの大幅促進政策は、
この本の内容に沿った方向で進んでいる。
日本の新連立政権の関係閣僚も、その影響を大きく受けていると思われます。
この著書の力を入れているところは、環境問題を重要課題としながら、その対策の
方法を社会的弱者の雇用の創出を重視する具体策を、数多く提示しているところであ
る。
日本の状況にそのまま当てはめるのは無理があるが、環境対策を雇用増加に面から
採りあげる論理は参考になる。
再生可能エネルギー関係では、やはり太陽光発電と風力発電に関する事業の面が
多く記述されているが、バイオマスエネルギーに関する内容は、表面的なものに
終わっている。
著者は、環境活動家として、アメリカの第一線で活躍し、自治体政府とのつながりと
提言活動を重視して影響力を発揮している。アメリカ流の「NPO活動」の実践な
ど、数多くの事例を紹介して、雇用創出の実践活動を行っている。
バイオマスエネルギーの技術促進と事業開発を目指す当NPOメンバーの
参考になる個所もあると思います。
鳩山新政権の動きをみていく上でも、アメリカの「グリーン・ニューディール」の
情報は欠かせないでしょう。
                        記  渡邊 雅樹