秩父の森でのKシステム検討会 2014年5月31日 福島巖

  4年間に渡って取り組んできている新集材方式(Kシステム)の改善について、緑の募金の支援が得られることが3月に決まり早速秩父の森で検討会を始めました。
基本事項についてはほぼ確認できましたがどんな現場でも適用できること、もっと簡単に操作できるよう軽量化と利便性に重点をおいた改善が主な目的です。
検討会は見学が目的でなく、多くの林業従事者立会のもと問題点の発掘と解決をはかるものです。秩父市の東、定峰峠近傍の市有林を会場に、3回(4月27日、5月10日、5月25日)に渡って秩父市森づくり課およびボランティア「秩父森づくりの会」の協力を得て上げ荷、下げ荷の集材を行いました。

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上げ荷作業を行う下の現場に集合した関係者

 ボートウィンチの講習会
林業のプロである鴨下氏にお願いしてエンジン始動・停止、ブレーキ、スロットル、ウィンチ駆動方法など基本動作の訓練を行いました。秩父森づくり会のメンバーはチェーンソーの取扱いに習熟しており、エンジンが同じなのですぐに馴れることができました。第2回目には鴨下氏不在で会のメンバーだけで実施したが、少しサジェストするだけで問題なく運転できました。距離の短い所や木の向きを変えるなどの仕事はボートウィンチが得意とする機能であります。
和光機械工業(株)がもっと性能の良い、安い機種を開発しているのでこの将来性は明るいと見ています。
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鴨下先生のボートウィンチ取扱い講習

立木に疵を付けない
秩父市は材木としての販売も熱心で、集材できたものの内、長さが取れるものは4mに玉切して、販売に備えています。したがって、立木で販売対象になる木には赤テープで表示して傷をつけないように注意を払っています。K-BETSのほとんどの人はKシステムは間伐材の搬出という意識が強く立木に疵をつけないという注意が低かった。第1回目の指摘を受けて対応策を検討し鹿避けのプラスティック製ネットを2m高さ分、主要な木に巻き付けてトライ。表面の凹凸があまり良くないので次回は滑らかなビニール製布や鴨下氏提案の木の皮で作った背板を適用してみる。

ワンタッチフックのトライアル
S社提案の新方式をトライアル。ネジを使ったカラビナ方式の開閉では時間がかかっていたが、この方式だと引っかけるだけになったので時間が短縮できる。外れ止めをどうするか2回目の時はガムテープで間に合ったが3回目の荷下げ場面でも問題はなかった。ただ定峰の山は傾斜が緩かったので最終的には30°以上の急斜面で再度確認の必要がある。

発電機の容量
現在、駆動装置は発電機で動かしている。奥地に運ぶこと、設備が大きく設置スペースが必要なことなどから油圧系に変更すべく検討を開始している。発電機も当初32KVAの物を使っていたが20KVAに変更、問題なく推移しています。駆動装置の負荷が7KVA相当なので秩父市がテンプラ油を燃料とする10KVA発電機を所有しているのでこれをトライしてみたが容量不足で起動できなかった。

駆動装置の方向90度変更 
駆動装置は道路に設置して背面の立木などをアンカーにして固定していたが道路のスペースをかなり占有してしまい、狭い道や交通路を確保したい場合には問題が予想された。そこで90度装置を動かすことができるかどうかをユニックを使ってトライしてみた。2本のチェーン軸を別の立木に引っかけチェーンの主軸から直角になるように変更した。立木が近くにあったのでスムーズに変更できた。(下の写真)
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  応答性の改善
トランシーバーの連絡方法に問題があったので軽い、応答性の良い新型トランシーバーセットを購入した。ハンドマイクも改良型の腰に差して使える新型に変更して連絡がスムーズにできるよう改善をはかった。ただし声を拾って送発信を行うため周囲の雑音を間違えて拾ってしまうことがあり問題点として残った。緊急事態には笛を強く吹くのが最も確実であった。

上荷の作業性の問題点
今回の山は林道を作るために切り出した木材を道路まで搬出する作業でしたが搬出を想定して伐採してないため材木が勝手に転がっていて取り出すのに苦労した。このためボートウィンチの活躍の場が多かった。また下の図から分かるようにすり鉢型の斜面であったため木が横に転がり落ちるトラブルが2回あった。今後とも起こりうる現象であるためキャップの形を変える改良や人工的な落下防止器具の開発などを考える必要がありそうだ。
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下げ荷の問題点

5月25日の下げ荷の問題点は駆動装置をセットする場所に手ごろなアンカーになる大きな木が無かったため遠くにある木から引っ張ったこと。場所によっては何もない事も予想されるので台車など人工的な物体を考える必要がありそうだった。

傾斜が緩い斜面だったが伐倒した木材の方向がバラバラだったためにチェーンラインにそろえるのに苦労した。チェーンラインの設定場所と伐倒の方向に事前の配慮が必要であった。

秩父の集材作業
山林で生計を立ててきていた秩父地方でも近年の山林放置が問題になっている。山に生えている木を見ても針のような15cmにも満たない木が多く目についた。森づくり会の人々にとってはボートウィンチ、Kシステムによる集材は新鮮で、楽しい体験であったように見えました。ボートウィンチの操作にもすぐに馴れ、検討会にも積極的に発言している人が多いように感じました。

上がってきた17mほどのジャンボなスギを「シロナガス鯨」だと喜び商品として売るための玉切り作業を行っていました。ボランティアの活動でもここまでできる方がいるので「秩父森づくりの会」から多くのプロの林業家が育ったらいいなあと思います。
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切株に腰を下して昼食と休憩

秩父市の取り組み
市も森林の活用に積極的で、秩父地域森林活性化協議会を組織し、「森の活人」というサイトを4月から立ち上げている。この協議会は、秩父地方全体で森林の健全な育成、循環型社会の構築、林業再生による地域経済の発展を目指した取り組みを推進しており、さまざまな活動の中で、日本にある貴重な資源である木質バイオマスをより有効に使うモデルケースを作り出していくに違いない。

市の森づくり課スタッフ

秩父市は課長以下スタッフ全員が機械の操作や現場への関与など林業家顔負けの活動をしてくれました。課の業務として間伐材の利用促進を担っているようですが、会のメンバーと一体になって行動していたのは印象に残った。特に若い女性スタッフは女鹿のように山林を跳びまわり次から次と仕事を消化し、チェーンソーを操作したり、チェーンラインに木を付ける作業までやっていたのは驚いた。
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女性スタッフの伐倒作業

秩父検討会を終えるに当って

K-BETSが今回皆様に評価して頂いたのは1回目の問題点を2回目にはほとんど解決してしまったクイックレスポンスです。K-BETSメンバー以外、実作業の面ではKシステム誕生から実務面を指導して頂いた飯能のプロ林業家鴨下さん、機械操作面では専門家の生田先生が皆様に詳しく分かり易い説明をされたことも評価して頂きました。
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第1回目参加者全員の写真

上げ荷の動画:https://www.youtube.com/watch?v=K_zBPm4ojG8
下げ荷の動画:https://www.youtube.com/watch?v=E0GgvjOSyIE

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