竹ビジネスについて   2011年1月15日  吉澤有介

放置竹林の異常繁殖の猛威がすごくその対策がないかとの質問を受けました。
私も竹について関心を持っていますので参考になればといくつかの例を紹介させ
ていただきます。

1.放置竹林の問題点  厄介物から宝の山へ  

これは申すまでもありません。タケノコの不振で管理が行き届かなくなった
竹林は、まわりのスギ林や雑木林を侵食して、里山の生態系を大きく荒廃させ
ています。最近の気候温暖化でその猛威は勢いを増してきました。
地域の高齢化で人手不足も深刻です。
しかしタケは優れたバイオマス材料なので、地道に管理して育成すればかけ
がえのない地域の特産品にもなりうるのです。
ここは発想を変えて、地域の実情に応じた機械化を進め、まずは一斉に伐採し
て、次に計画的に竹林の整備を行い、持続可能な資源としての宝の山に変身さ
せることを目指したいものです。

そのための具体策はすでに充分実用化の段階にきています。

  2.タケの特性からみた活用法

(1)バイオマスとしてのタケ   
いまから荒廃した竹林の再生に挑戦するには、タケがいかに優れたバイオマ
スであるか、管理の見直しによって地域の宝の山になりうることに共通の認識
を持ち、かつその実現の可能性に確信を抱いて進めることが肝要でしょう。
目先の損得でなく、地域の皆さんの幸せこそが尺度になるのです。
里山の豊かさを取り戻すために、まずタケの特性について再認識することです。  

 (資料)「竹のバイオマスとその有効利用」 富山県中央植物園 内村悦三氏

(2)タケの利用法  

現在荒廃したままの竹林を前にしたら、その活用法などはとても想像するこ
とも困難でしょう。
しかしあらためてその用途を列挙してみると多くのヒントが得られるはずです。
  
ここには整備された竹林から生まれるさまざまな用途を示してみました。

 ・タケノコ 食品向け最近は中国などに押され、市場競争力を喪失してしまいま
した。竹林荒廃の主因とみられています。
しかしタケノコ採りのレジャーとしたら人気が出ませんか。

 ・丸竹   楽器、土木構築材など       
伝統的文化的に親しまれたものです。しかし用途が限定されるでしょう。

 ・割り竹  家具、日用品、工芸品など       
同じく伝統的なものですが、静岡県函南市ではタケミュージアムの構想が
      あります。    

 ・集成材  建材、フローリング材、食器、トレーなど          
これは集成技術が向上して用途が広がっています。

東京足立区の中小企業で、食育トレーを開発販売して好評です。
将来の地場産業として可能性があります。

 ・チップ  舗装資材、パルプ → 紙製品、タケ強化プラスチックなど、
工業生産は量の確保がポイントです。原料の継続的供給となるとやや不安です。

 ◎パウダー 飼料、肥料、食品、  これは地産地消で一番の狙い目です。 
別紙現代農業資料
A,Bにあるように、その地域の農業生産に大きな効果が
期待できます。
地域をあげて研究したいものです。

 ・繊維   タオル、寝具、衣類など健康効果があり、最近注目されています。
しかし国内での産業化はとうていムリです。
原料確保も含めて中国の繊維産業が担うことになるでしょう。

 ・抽出物  竹酢、抗菌剤、食品添加剤、一定の需要はあるので、地域特産品
に有望です。

 ・竹炭   脱臭剤、脱湿材、活性炭、地域特産品にできます。
また鉄粉との組み合わせで漁業向け栄養剤として注目されています。

プランクトンが増えるので沿岸漁業の救世主になる可能性があります。

 ・燃料   バイオマス燃料   
ガス化技術は実用化の段階にきました。当NPOがブースに展示したとおりで
す。
チップ化でごく小規模でもやれるので、地域のガス燃料を自給すること
も可能です。

 3.タケ活用のための効果的な手順の具体案  

理想的な竹林は、人が傘をさして歩けるほどの空間があるといいます。
そのレベルまで再生するためには、やはり適切な機械力の活用と合理的な手
順が求められます。
 

(1)放置竹林の伐採と整備 
これは人手だけではできません。まずはチエンソーで一斉に伐採することで
しょう。しかしこれはたいへんな仕事です。
できれば強力な破砕機で皆伐したいところですがまだ市販の機械はありません。
機械メーカー「筑水キャニコム」社が高性能のブッシュカッターを出しています。
改良すれば竹林の皆伐に使えそうな感じがします。
まずは竹ヤブの大胆な皆伐を進め、あとは翌年のタケノコから計画的に整備す
ればよいことです。
   

 (2)タケのパウダー加工   
タケの利用としては断然これがおすすめです。集落ごとにすぐにでも活用で
きるからです。
タケはパウダーにすれば、チップよりも格段に用途が広がります。
ただし粉末のなかに針状繊維が残らない、ミクロン単位までの破砕が条件です。
この条件をクリアした機械が最近続々と発表されています。
リースにすれば負担はかるくなります。そのいくつかをあげてみましょう。
  

 ・(株)大橋  (佐賀県) チッパーシュレッダー    (資料AB    
処理能力
100120kg/hr、長さ5mのタケが2分で粉になる。本体価格150万円  

 ・丸大鉄工(株)(浜松市)パンダ処理能力500kg~1000kg /日、小麦粉程度ま
で細か粉砕する、価格
400万円                
(新聞記事 資料
CDE ) 
 ほかにも数社ありますが、価格よりも処理能力と粒度を良く確認する必要があ
ります。
    
10cm径、高さ5m程度のタケならチエンソーで伐採、あとは粉砕機で処理します。
人手で引出して破砕機に供給するだけで、作業は自前で実施することができるで
しょう。

 (3)タケパウダーの利用 

まず地元の集落で、飼料、肥料として利用することです。その事例は添付の各
資料にご紹介しました。余分な手間や運賃をかけない地産地消が一番です。
 
竹粉による直接的な収益を狙うのでなく、農業・畜産分野での品質向上と、差
別化による間接的な効果を期待しましょう。
きっと大きな成果が得られるに違いありません。
参考資料を紹介します。

・竹のバイオマスとその有効利用    富山県中央植物園 内村悦三 氏 
(竹についての総合的に解説したA4 5枚の好リポートです)

・竹肥料・竹堆肥で使い切る      現代農業20094月号より    
(千葉県の桑山さんの発酵竹パウダーの記事で、佐賀県の粉砕機メーカー(株)
 大橋を紹介)

・竹・生&ボカシ施用でうまいミカン   同じ 20107月号より    
福岡市の鎌田さんの竹粉ボカシを施肥した記事で、同じメーカーの粉砕機を使用)

・浜松市の粉砕機メーカー紹介     中日新聞20061215日ほか
 (浜松市丸大鉄工(株)の竹粉砕機による鶏の飼料の事例などを紹)   
・放置竹林伐採実験現場の状況     米谷さんご提供の写真1
(これは筑水キャニコムの事例)
現地のニーズに合った竹を原料とした商品化が、最優先される課題ですが、どう
しても、クズや不適材が大量にでることは避けられません。
その竹の残材を、ガス化に適した粒度に加工すれば、[k-bets]が開発支
援をしている「超高温水蒸気式ガス化炉」を利用することで、価値のある混
合ガスになりますので、近隣の施設に使ってもらうことが可能になります。
なお、このガス化の後につながる施策としては、混合ガスで運転できる発電機の
設置を第3段階として、進める必要があると思います。
電気にすれば、どこでも確実に電力会社に販売する事ができるので、苦労する需
要先を探しまわる必要がなくなります。

【放置竹林の処理をする大変に有益な活動】に対する支援としては、このバイオ
マス発電の電力を、優遇する固定価格で買取れば、多くの地域で竹林対策に有力
な支援策に繋がります。

地域での地元に密着した活動が第一ですが、第二には、それを資金的に循環でき
「技術と事業」の提案と支援、そして、国や地方の制度による「資金援助の仕
組み」
3拍子がそろって、初めて有効な対策の効果が出るものと考えています。

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