Kシステムの基礎実験の概況  

  実験の目的


K-BETS
で提案している鎖を使った木材の収集システムを実際に運用してみて
どのような問題が出るかを調査したものである。

より実際に近い大掛かりな実験を考えて政府や支援企業の補助金をしていた
がこの2年間ことごとく受け入れてもらえなかった。

時間の空費も問題なので実験の範囲を絞り込み基礎事項の確認をなけなしの会
の予算を使って行なった。

日程と場所

10
12日(火)下準備:ハーフパイプの敷設、鎖接続、丸太の用意など。

10
13日(水)予備実験:丸太牽引、張力測定・分析

10
18日(月)本番実験:外部関係者公開、丸太牽引、状態観察

場所は飯能市にある駿河台大学内にある大学の森の中で行った。

dscn3566.JPG  dsc_0136.JPG

  駿河台大学               実験前の打ち合わせ 

この実験が始まるまでに

簡単な実験をするだけでも大変な準備が必要である。
当NPOの数人が飯能市に通い大学や山林関係者と接触して親密な関係を築いてきた。
実験場所の提供は駿河台大学に引き受けてもらい、ビデオ撮影や張力測定のデーター
処理などは都合がついた学生に手伝ってもらった。

チェーンソーを扱った木の伐採やボートウィンチの運転操作は地元の林業鴨下さんに
依頼し引き受けていただいた。

飯能市の職員の方々には各種アドバイスと実験当日何回かの立会いをいただいた。

dsc_0090.JPG  dsc_0153.JPG

 ボートウィンチの操作        張力データーをPCに取り込む

実験の段取り

飯能の1駅手前「元加治」駅下車、スクールバスに乗せてもらって高台にある
大学に向かう。
実験場所は運動場を越えた5分ほど歩いた山林の中に用意されていた。

大学の道具置き場にヘルメットや皮手袋などが準備されていてそれを利用させ
ていただく。
10時から太い丸太で作ったベンチに並んで清田リーダーから仕事
の指示と安全ミーティングを行い作業に入る。
メンバーは普段力仕事に馴れていない人が多かったのでチェーンブロックを操
作するのにも時間がかかった。

dsc_0166.JPG  dsc_0159.JPG

チェーンをチェーンブロックで引っ張る  荷重計をセットして張力測定

チェーンの取り扱いはどうだったか?

誰でも感覚的に鎖は重くて取り扱い難くとても山林の中の作業には向いていない
という感覚がある。

この点はどうであったか?
実験に使用した鎖は耐圧2トンのチェーンである。
20m
のチェーンを3ケつないで60mの距離を牽引した。
チェーンは長さを自由に細かく再分化でき、長くするのもカラビナなどで簡単に
調整できる便利さがある。

運搬するにはドラム缶のようなものに収まり取り扱いは簡単である。
重量は重いので車で運ぶが、上から下ろす時は重力で流れるように下がっていく。
上に引っ張りあげるときはウィンチのようなもので簡単に引っ張れるので簡単で
ある。
何より形がどのようにでも変化するので対象物にピッタリしがみつくことが可能
である(ワイヤーのように食い込むことが無い)。

カラビナを掛けることによりどこにでも物体を引っ掛けることができる。

どんな実験をやったか

 傾斜17°~25°の斜面で木材を牽引してチェーンにかかる力を測定する。
 チェーンの上端は大きな木の幹にワイヤーをかけて固定する。
 引っ張る動力は費用をかけないため我々の人力で行った。
 チェーンブロック(401)を2ケ交互に使って引っ張る。
 1m引っ張るのに40m分のチェーンブロックを回すのだから大変だ。
 チェーンとチェーンブロックの間に張力計をセットしてデーターを取る。
 牽引する地面の条件を
  a
)自然のまま
  b)
 FRP製ハーフパイプ(スキーやスケートの競技のように滑走面を確保する)を通す
  c)
 木の先端部分にキャップ(プラスチック製)を咬ませて抵抗を減らす
  d)
 切り株の間を通して木材の挙動を調べる
 等の課題をこなした。
 人力は時間がかかるので実験公開時にはボートウィンチの動力を使った実験になった。

dscn3534_edited.JPG  dscn3546_edited.JPG

   トレイの中で牽引する         先端にキャップを付けて牽引

どんな結果だったか

実験のデーターなど詳細は集計中であるがこのシステムの決定的な障害は
発生しなかった。

むしろ将来に期待できる明るい課題が多く出た。
チェーンは取り扱いが易しくロープのように木に食い込んだりしないし自
在に形を変えられる。

重い点は簡単な運搬機械を活用することで問題解消できる。
この意味でボートウィンチの活動の場が広がりそうだ。
山の中を自由に往来できるこの種機械の更なる改良に期待する。
輸入製のこの機械扱いがワイヤーのため設備保守に問題があったようである。
チェーンを取り込むことによりもう一歩取り扱いが便利でメンテし易いもの
に前進できるのではないか?

工夫や改良が必要なこと

滑りをよくするため4m長のハーフパイプをつなぎ合わせてトレイとして利用
したが幅が狭いこともあり木が外れたりパイプが捻れたりした。

キャップも2~3本まとめてできる大きめのものだったがかえって木の株に引
っかかって障害になることも発生した。

切断面は直角でなく鉛筆の先のように削るとか、ペン先のキャップのように1
本単位の鋭角なものにするとか工夫が必要である。

システムは単純な方が良いのでハーフパイプの使用も窪地のカバーなど必要最
小限にとどめる工夫が要求される。

 今後の取り組み

最終日の公開実験には福島県から花の木の菅野さま、森のエネルギー研究所の石山
さま、オリンピア工業の竹内さまなど10人ほどのお客様をお迎えして成功裏に実
験を終え
ることが出来た。
得られたデ-ターを解析し、本格的なシステムの構築に向けて更に大規模な実験を
進める予定である。
                福島 巖 記

カテゴリー: 技術者の現場レポート, 木材の収集システム パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です