KIYOTA式 木寄せシステムのはなし(3)

5. スムーズな操業のために
(1)      スリッパ形のソリ
木の先端はチェーンソーで切りますから円筒形です。
ここにワイヤーを掛けて斜面を引きずると、先端部分が土を削りながら進むので土の抵抗
分だけ力が必要ですし、切り株や小岩に引っ掛かりやすくなります。
抵抗を減らし、引っ掛かりを防止する目的で、木の先端にスリッパ形のソリを噛ませます。
slipa_edited.jpg
スリッパの先端をボートの舳のように(あるいは弾丸のように)丸めておけば、引っ掛かる確率はほとんど無くなります。スリッパがあることで地面との摩擦係数も小さくなります。

(2)       ハーフパイプ(ガイドトレー)
そんな場合にはハーフパイプを使います。今、バンクーバーで冬季オリンピックが行われています。
ハーフパイプ競技では話題の国母選手が8位入賞を果たしました-あのハーフパイプです。
このアイデアはオーストリア大使館から頂きました。
halfppioe_edited.jpg
日本と同じように急峻な山地を持つオーストリアでは、FRPなどで作った半径20cm、長さ5m程度のハーフパイプを特製の金具で繋いで斜面に敷設します。上流から丸太を投入すればハーフパイプの中を丸太が流れ落ちて下流に搬送できるというすばらしい方法を編み出しました。
 山の長老によると、日本でも昔は「木修羅」といって、丸太を使った長いハーフパイプを組み、同じようにして木を搬送することが行われていたようです。
この場合は丸太で組みますから大きなハ-フパイプになりますし、構築するのに大変な労力を必要としますが、FRPなどの樹脂で造れば軽いので人間の手で運べます。
繋いだハ-フパイプを軽作業車や、ボートウィンチ(後出)で引きずって行って必要カ所に置けば簡単に設置できます。
FRPハーフパイプは、切り株や小岩を避けてうねうねと曲がってくれるので大変便利です。
オーストリアでは盛んに使われているようです。
私達の場合は、このハ-フパイプの中に鎖を入れて木を鎖に繋いだ状態で搬送します。
こうすれば、窪地やちょっとした小川も難なく乗り越えることが出来ます。
また、地面と木との摩擦係数も小さく出来ます。
ハーフパイプの中を上流から流し込む方法は、急斜面ではスピードが出過ぎて危険ですが、
鎖に繋いでいれば安全ですし、上り下りともに適用できます。
大きな窪地や小川があるような状況では、木が窪地などにのめりこんで先端が刺さり込んで動かなくなることが予想されます。
スリッパがあることで地面との摩擦係数も小さくなります。

次にKシステムでハーフパイプを使った場合の作業進展状況についてご説明致します。
tray_edited1.jpg
図のように作業進展とともに一定の長さの鎖を入れ子し、鎖のループが長くなるに従い、ハーフパイプ(ガイドトレー)も繋いで延長します。
ハーフパイプは必要な場所に部分的に設けることも可能です。
ハーフパイプは、動かないようにハ-フパイプについている金具にワイヤーを掛けて木などに繋ぎ、固定することが出来ます。

6. 丸太集材か全幹集材か 
伐採した木を丸太にして集材するのか、全幹(枝葉つき)で集材するのかは山の状況や、
経済性によって判断しなければなりません。
伐採して直ぐに枝払いをして幹だけ残して集材するには、チェーンソーで枝払いする必
要があります。
さらに幹を適当な長さに玉切りし、集材することもあるでしょう。
これらの場合林地での枝払い、玉切りなど作業量が大きくなり人件費が掛かります。
一方、全幹で集材できれば、作業道付近にプロセッサーを配置して、枝払い,玉切りを
機械で処理できるので、大幅な作業性向上が期待できます。
また、林地に残す残材を減らすことが出来るので、回収できる材積が大きくなります。
しかし木を林の中から引出すときに、枝が他の木に引掛かりやすく、作業性が低下する
可能性が高くなります。
プロセッサーは機械の価格が高いので、余分な償却費が掛かりますが、全体として能率
が上がれば有利になります。
どの方式を選択するかは、現場管理者の判断に委ねることになるでしょう。
 少し話題から脱線しますが「葉枯らし」という言葉をご存知ですか。
これも山の長老からお聞きしたおはなしですが、木の家を作るとき「葉枯らし」した材
を使うと狂いの来ない家が出来るそうです。
「葉枯らし」とは伐採した木を葉が枯れるまで林地に2~3ケ月置いておくと、葉が木
に残った水分を吸い出して水分30%程度まで乾燥が進むとともに、木は僅かだが成長
するというのです。
伐採直後の木は未だ生きていて、残った葉が炭酸同化作用を続けるという事でしょうか。

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