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2017/11/7 火曜日

バイオ油生産における太陽光システムと発酵槽方式の比較 2017年11月7日 廣谷 精

カテゴリー: バイオマスの燃料利用,技術者の主張と提言   by k-bets 編集長 @ 23:23:35

2009年7月のパシフィコ横浜で開かれたセミナーで、渡辺信先生(筑波大学)が、藻(ボツリオコッカス)で油118t/(ha・y)出来るという話を聞き、ついに日本も産油国になれると思い感動した。それ以後バイオ油の情報を集め検討してきた。又中嶋信実先生(国立環境研究所)の講演を聴き(2013年1月)、微細藻類は油47-140t/(ha・y)造るという話を聴き、更に情報収集、勉強をしてきた。私は子供の頃、第2次大戦の末期の頃、飛行機を飛ばすには油が必要である事を教えられていたので、油を国産で造る事が必要と言う事が浸み付いていた。マスコミも藻で油を造る事を大々的に取り上げ、企業も実施出していた。(株)ユーグレナはユーグレナで、IHI&ネオ・モルガン研究所は榎本藻(ボツリオコッカスの一種)で、(株)デンソーはシュードクリシスティスで実施しだしていた。
しかし藻と出会ってから間もなく10年、各企業は薬、健康食、魚餌などの分野では儲け成功しているが、価格の低いエネルギー事業としてはまだなり立っていない。それはコストが下げられない事と、エネルギ-としての量を確保出来ないためだ。それは太陽光での生産性が低いという事である。ひとつは葉緑素の効率が低いという事もあるが、自然界では太陽エネルギーを藻に与える事が難しいという事だと思う。太陽エネルギーは1368W/m2 といわれているが成層圏外での話で、成層圏を通ると1000w/m2 と下がってしまう。しかもそれは太陽が真上にあるときであり、ずれると下がる。夏もあり冬もあり、雨の日もある。藻にとって適温が有り、低い温度を好むものも有る。年間生産するのは難しい話しだと思う。
HIH&ネオ・モルガン研究所がプラントデータを公表している1)。それによると生産性は10g/(m2・d)と記載されている。深さ0.3m、操業日数300日とすると簡単な計算で15t/(ha・y)となる。米国の種々の天然実施の文献を調べると27t/(ha・y)となる。容積当り、年間平均生産性を計算してみると0.02-0.05g/(l・d)となる。
油をエネルギーとして用意するには、たとえば車のディーゼル、飛行機のジェット燃料を営業運転するには数10万kl用意する必要がある。テスト運転、テスト飛行と違う。各企業が用意出来るのは数百klであり、数10万kl製造を出来るのだろうか。其の為に数万haの池を用意し、製造工程を管理し、温度管理だけでも大変だ。
太陽光藻池システムは太陽光エネルギーに制限されるので生産性を上げる事は難しい。その事に気が付いたのは米国で、太陽光を止めてエネルギーとして栄養源を与える発酵槽を活用しだした。Solazyme社(TerraViaに変更)はクロレラを発酵槽で培養し、油を造り海軍のジェット燃料基準を取っている。Alltech社は1200klという大型の発酵槽を造り、藻は従属栄養素の藻で、名前は文献2)に記載されていないが藻の生産量は年15,000tである。残念な事ではあるが目的は魚の餌であり、油ではない。しかし油も出来ていると推定1,500tできると仮定する。年間300日で操作すると5.3t/(l・d)となる。種々のデータを調べて発酵槽の生産性は1-6g/(l・d)となった。
ある人は発酵槽も良いけれど高い原料等投入しなければならないのでただの太陽光の方が良いという人もいる。(株)デンソーは油のコストは600-1000円/lと推定し発表している。そんな価格で良いのだろうか(目標価格は100円/l)。太陽光藻池システムは生産性が低いからで価格が高くなると思わないのだろうか。発酵槽は約100倍生産性は高く固定費は1/100となる。日本は土地の価格が高く、大きな負担になっていると思う。
日本では今発酵が厳しくなっているのも事実である。それは廃液の処理の、特にN,Pの処理が厳しくなっているが、それも原料の選択で解決できると信じている。米国のAmyris社3)はイーストを遺伝子組み換えを実施し、アルコールでなく油を造るようにし、ブラジルに100kl発酵槽で操作しだした。サトーキビ搾り液、又は廃糖密を原料としているのであろう。安い原料、大量バイオエネルギーを一気に解決した様だ。日本では太陽光藻池システムで東南アジアで工場を造ろうと言う企業もあるようであるが、それならば発酵槽で、イーストで油を造るシステムで進出する方が良いと思う。しかし発酵槽で油を造るシステムを検討した学者も企業もいないという事は残念な事であり、すべて油は太陽光に任せているのは残念な事である。   以上
文献
1)化学工学2016.No.5,V0l.80、p29
2)Algae Industry Magazine  Feb  15,2017
3)  JPECレポート 2015年度  第10回