原発のプルトニウムにはどんな問題がありますか

原発を今後どうするかが今後のエネルギー政策を決めるに当たって今話題になっている。その決定要因の一つは使用済核燃料(核ゴミ)をどう処分するかにかかっている。国が長期計画を作って進めてきた方向は再処理工場建設と高速増殖炉でプルトニウム(Pu)を作り出してウランの代替とし、燃料に使う目論みである。
核ゴミを直接地中深く埋め込むか上記核燃料サイクルをして新しい燃料にするかの2者選択である。そこでプルトニウムについて情報を集めた。

元素プルトニウムの誕生
天然に存在する元素はウラン(U)元素番号92までであった。1940年カルフォルニア大で実験を繰り返し人工的にそれより重い元素を作ることに成功した。94番目がプルトニウムでP239は核分裂を起こしやすい物質であることが分かった。それが利用されて長崎に原子爆弾となって落とされた。一時期現代の黄金と持てはやされたがその反面α放射線を発する厄病神であることも分かった。

使用済核燃料に含まれるプルトニウム
原発燃料棒のウランは核分裂を起こす極少量のU235(濃縮して3%)と99%の無反応のU238で成り立っている。炉内反応でこのU238がPu239に変化するために核ゴミの処理としてはPuをどうするかによって決まる。

プルトニウムの毒性
uは高エネルギーのα線を放出する。この放射線は周囲の物質と相互作用して化学結合を損傷する。人体の場合は遺伝子を傷つける。α線は貫通力(飛程)は弱いので紙1枚で簡単に遮蔽でき体外にある場合は被曝の問題はない。体内に入った時が大きな問題になる。飛程が数3040μと短いため微小部分で巨大なエネルギーが放出されるのでガンなどの障害になりやすい。もう一つは体内に一度入るとそこに留まって被曝を継続することである。酸化Puのような微粒子が空中に漂っていると呼吸で肺に至り肺胞まで入り込む。血液に乗って骨と肝臓に移動しほぼ一生離れることは無い。食品や飲料からの経口摂取もある。

戦略核兵器削減交渉の後
米国と旧ソ連の核兵器削減交渉が成立して莫大な費用をかけて核弾頭を解体した。濃縮ウランは原発の燃料として消費したが米60t、ソ連80tのプルトニウムは純度を下げる方法が無い。具体的な処理方法が無く、長期保存には安全性の問題があり世界にとって最大の問題である。

核燃料としての価値
ウランが高騰した70年代はPuを抽出することが流行であったがその後原発事故や新U鉱山の発見によりU単価が1/10に低下しPuに頼る必要がなくなってきている。

日本が進める核ゴミ再処理工場
再処理工場は放射能を扱う化学工場で
・原発1年分のゴミを1日で出す
・巨大放射能が集中するため大事故の危険性が大である
等の問題がある。

高速増殖炉は
・冷却に溶けた金属ナトリウムを使うため漏れたとき爆発の心配があること
・炉心にPuUの混合物を固定しているため事故が発生した時暴走して爆発、大災害に発展する懸念がある。
これらの観点から米、独などは核ゴミを直接処分する方向で高速増殖炉からは撤退している。いつまでも拘っているのは日本だけになった。世界からは核開発するのではないかと疑念を持たれている。

「プルトニウムの未来」 高木仁三郎 岩波新書を参考にしました。 記 福島 巖

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