リニア実験線見学記 2015年4月1日 吉澤有介

 先日たまたま機会があって、山梨県都留市にあるリニア実験線の見学センターに行ってきました。JR東海が推進しているリニア新幹線は、2027年までに東京品川と名古屋を時速500km、40分で結ぶという計画が認可されました。安倍政権のめざす第三の矢の一つともいわれていますが、その実状は一体どのようなものなのでしょうか。
山梨県立見学センターでは、二階のテラスから実験線を見下ろすことができます。ただ当日は、残念ながら実物の走行はありませんでした。しかし館内では、さまざまな展示をしています。
やや小ぶりな車体の側面に、液体ヘリュームタンクと超電導磁石がはめ込まれ、電磁誘導で直進する機構がよくわかります。線路ではなく、タイヤで走行し、時速130kmを超えると浮上して一気に加速してゆくのです。

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実験線(ガラス越し)            リニア車両
その路線は、写真にあるように両サイドのガイドウェイに、全線にわたって推進コイルがはめ込まれています。
また車両への給電は、パンタグラフではなく、非接触誘導集電方式です。地上のコイルに電流を流し、その上を車両が通ると車両のコイルに電気が発生するというわけです。超電導温度は、‐253度以下で実現したいとのこと。
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車両側面の超電動コイル         ミニリニア
その原理を体験できるミニリニアに乗ってみました。これは最初から磁気で浮いています。一人乗りでゆっくり動ききますが、なんとも変な感じでした。この場所で、携帯や時計などは無事でしたから、磁気防護対策は完備しているようです。健康にも影響はないとのこと。(モデルがお粗末で失礼しました)

ただここで一番知りたかった建設コスト、エネルギー消費量、運行コストについては、全く展示がありませんでした。もともとこの施設は、一般向けのPRのためですから、仕方のないことかも知れません。
別の資料では時速500kmで、1編成(12両)の消費電力は3.5万kw、ピーク時5往復(10本/時間)では27万kw、とされています。また建設費は、170億~180億円/kmだそうです。コイルの設置で高くつくのですね。それに、ほとんどがトンネルですから、これはまさに地下鉄といってよいでしょう。
このリニアについては、まださまざまな議論があるようです。そもそもこのような高速路線が必要なのか。利用する乗客は果たしているのか。肝心の採算が見込めるのか。電力が間に合うのか。環境や安全はどうか、などなどです。 これらはコンコルドの例があるので、気になりますね。
そのあたりの答えは、ほとんど見えてきてはいませんが、工事は南アルプスルートに向かって開始されました。現在公開されているデータとしては、2013年9月にJR東海が出したものがネットにあったので抜き出してみました。下記でその一端をご覧ください。
南アルプスルート東京・名古屋間(286km)の試算

超電導リニア     在来型新幹線
所要時間        40分      1時間19分
輸送需要量
(2025年)   167億人・キロ   82億人・キロ
建設工事費    5兆1000億円   4兆1800億円
維持運営費    1620億円/年   1030億円/年
設備更新費    580億円/年    330億円/年
以上

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