藻の油の動力活用として 2014年10月8日 廣谷 精

  現在の日本のエネルギー状況と炭酸ガス排出状況

この頃天候は変だ。夏は気温が高く、そして冬は雪が多い。それは炭酸ガスのせいだと人は言う。昔は、炭酸ガスは280ppm(50年前)であったが、現在は400ppmにもなっている。石油、石炭を使用した結果であり、何とかして炭酸ガスを減らすことを考えなければならない。炭酸ガスの出ないエネルギーとして何があるか、原子力発電があったが問題が山積して実施できていないのが残念である。太陽電池もあるがそれは電気として太陽まかせで価格が高い。又風力もあるが安定的に吹いてくれるわけではない。それでバイオマスが登場してきているが大量なバイオマスが日本にはないのが問題である。
  円安の現状

今円が安くなっている。国内の製品は輸出が容易になってきているが、生活に必要な輸入品は高くなっている。3年前は80/ドルであったか現在(H26.10月)は110円/ドルである。H252013)年は13兆円の貿易赤字となった。これは大変な事である。何故そうなったかと言うと日本に必要な石油、天然ガス、石炭を輸入したから、いや輸入せざるを得なかったからである。又比較的安い石炭を多く輸入し、おかげで電気料を比較的安く維持した、その結果として炭酸ガスを高めにしてしまった。従って貿易赤字と関係ない、国産エネルギーを生むバイオマス、しかも炭酸ガスを減らすバイオマスを、炭酸ガスを食って油を造る、そして燃料を造る藻が望まれるわけだ。
  国産の藻のエネルギー

日本で一生懸命行っているのは(株)ユーグレナ、IHI、(株)デンソーであろう。(株)ユーグレナはユーグレナ(ミドリムシ)を培養し,そもそも栄養食品を作り出し商売をしていた。そこで脂肪が多いこともあり、JX、日産とタイアップし、水素化してBDFを造り、バスの開発、運転を始めた。IHIは神戸大が開発した榎本藻で「高速増殖型ボトリオコッカス」である。そのままBDFに使えるが、彼らが狙うのはジェット燃料であり、当然水素化が必要である。水素化すると脂肪酸の酸素の位置に水素が付加され、又二重結合の位置に水素が添加される。その場合酸化安定性、低温度流動性が良くなる。(株)デンソーはシュードクリシスティスを培養したもので、植物油の様にグリセリンと結合している。それをメタノール処理、アルカリ触媒を使用してのエステル交換反応を行いグリセリンを分離する。所謂FAMEである。そのままBDFとして使える事は出来るが、ジェット燃料にするには更に水素化を行う必要がある。

品質によるがコストは各社500/L程度(車に使用するためには)であり、それを下げる事は各社努力している。それは日本には厳しい規制、ルールがあるからで、外国で生産する方が容易にコストダウンとなり、各社種々考えているようだ。

アメリカの生産状況

米国はベンチャーが表に出ているが、後ろには大企業、資産家がサポートしているケースが多い。

Sapphire Energy; ニューメキシコ州南部で工場建設をし、ディーゼル、ガソリン、ジェット燃料を生産始めたようだ。藻の種類は不明であるが、2018年には一億ガロン(380,000kl)出来る計画がある。発電所の炭酸ガスを利用している計画と聞いている。DOE(米国エネルギー省)、ビル・ゲイツ、モンサントがサポートしている。

Sorazyme; 糖を注入する方式を採用しているが、藻の名前などは分っていない。アルコールメーカーと協力し、酸分解糖を使用し無菌の発酵槽を活用している。大量の生産を行い車の走行テストを行なった。

Synthetic Genomics; 最終工程としてはハイドロカーボンを目指し、ジェット燃料を目指すが、EPRとしては34を目指している。エクソン・モービルが高額の投資をしている。

各社米海軍を良いスポンサー、消費者とみているようである。

日本での航空業界、車でのテスト

EUは、2020年にEUで飛ぶ航空機は10%のバイオ燃料で飛ばなければいけないと言う法律を定めた。それで各社種々の試みを行っているが、JALは羽田から仙台まで藻燃料で飛ばす事を実施した。JX()ユーグレナが造った油と思われる。車としてはマツダ(バイオ燃料70%)、トヨタ・日野(バイオ燃料10%)、いすゞ(バイオ燃料5%)で各社それなりに実施している。

土建会社、建設機械による炭酸ガス削減

建設機械は車、航空機と違い華やかさはないが着実に炭酸ガスを削減することを行っている。その油圧ショベルをバイオ燃料で運転する事が実績となり注文に応えることになる可能性がある。

1) 日立建機(株);炭酸ガス削減に寄与する藻類バイオ燃料100%で、ハイブリット油圧ショベルの稼働試験~500時間稼働を達成した。これは油圧ショベルとしては500時間と言うのは最長の時間である。これはアメリカのSorazymeから購入したバイオ燃料である。これは発酵槽で光を使わずに糖を投入したもので炭酸ガスから造ったものではないのが残念である。しかし大量のバイオ燃料生産可能になっているようで、そのSorazymeとの関係を続けて行く事を希望する次第である。

2) その他の土建会社、建設機械メーカー

(株)小松製作所;コマツ、アダロ、ユナイテッドトラクターズが3社共同プロジェクトを行っている。インドネシアのアダロ鉱山で栽培したジャトロファからBDFを製造し、ダンプトラックにB20で使用している。2万tの炭酸ガス削減を見込むようだ。

他の土建会社;各社工夫して廃食油からBDFを造り活用している。

夢を実現する国家戦略を期待する

アメリカは産油国であり、この頃はシェールガスが出るようになり、それにもかかわらず藻油の生産に一生懸命努力している。日本は石油、天然ガス、石炭等何も無いにもかかわらず藻油の生産等に国として便宜をはかる努力をしていない。研究機関への資金援助や企業へのサポートを強化ししていくこと、使用面での各種規制条件を緩和するといった努力を期待している。(以上)

 

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