高温水蒸気ガス化炉

セラミックハニカムを蓄熱体として利用したリジェネバーナは1993年より国(経済産業省)の
省エネ対策の高性能工業炉開発事業において開発された。
そのバーナは現在鉄鋼、自動車、機械などの国内基幹産業で多数採用されCO2削減に貢
献している。
その実績を基に日本ファーネス株式会社(NFK)はさらなるCO2削減に挑戦すべくセラミック
ハニカム式高温水蒸気発生装置を開発した。
林地に大量に破棄されているバイオマス系原料を現地に近いところまで運び込み燃料化でき
る設備が実現できそうで当NPOとしてその早期実用化を期待している。

高温水蒸気ガス化技術を従来ガス化技術と比較すると前者は次の特徴を持っている。
(1) 高カロリーの生成ガスが得られる
ガス化の際に混入する空気量が非常に少ないため、空気が持ち込む窒素や、原料をガス化す
る際発生する二酸化炭素(CO2)など不活性ガス量が抑えられることである(図1)。
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(2) 生成ガスがクリーンである
高温水蒸気によって起きる水性ガス反応(C+H2O➞CO+H2)により、通常の炉で発生する
タールが抑えられる。
通常のガス化炉ではタールを除去するため改質炉が必要だがこの方式では不要。
(3) 装置がコンパクトで持ち運びができる
ガス化温度が高いので反応時間が短いのと改質炉が無いので装置がコンパクトにできる。
搬送が可能でトラックで現地に運こび原料をガスに処理できる(図2)。

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高温水蒸気ガス化では水蒸気を高温にする方法に特殊な工夫がなされている(特許)。
ボイラで発生した過飽和水蒸気を特殊な装置により1000℃以上の超高温水蒸気にできる。
この高温水蒸気発生装置は既に製品化されており、欧州に2003年に紹介された。
スウェーデン王立工科大学ですでに木質ペレットのガス化に使った実績がある。
欧州ではSuper Steam Enthalpy Intensifier (通称SI)として知られている。
現在SI-100(水蒸気量100kg/h)がNFKのガス化装置に使われて各種の木質バイオマスや
刈芝のガス化実験が行われている。
SIで加熱された水蒸気をセラミックハニカムの蓄熱体を通じて連続的に発生させる構造になって
いる。SIの中ではバーナから排出される高温排ガスがハニカムを通過し、排ガスから受けた熱を
ハニカム表面に蓄熱させる(上図バーナ上部、下図バーナ下部)、高温化されたハニカムにボイ
ラで発生した飽和水蒸気を通過(上図バーナ下部、下図バーナ上部)させ水蒸気を高温にしてい
る。このようにバーナ排ガスと水蒸気の熱交換を交互に起こし連続的に超高温の水蒸気をガス化
炉に供給している(図3)。

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生成ガスに含まれるタールの分解実験を行った結果を示す。この実験では空気を使った部分酸
化式ガス化炉で廃プラスチックをガス化して実験を行った。破砕したプラスチック片をガス化炉で
部分酸化してタールを含んだ生成ガスを発生させ、その生成ガスを供給ダクトの中を通し、その
ダクトの途中にSIで発生した高温水蒸気を吹き込むと、ダクトの内壁に固着していたタールは完
全に熱分解してガス化している、ダクト内壁はきれいになりダクト素材の肌を示している(図4)。 hitsg10.jpg

NFKは平成22年に横浜市内の某ゴルフ場の協力を得てこの高温水蒸気ガス化装置を使った
バイオマスガス化の実証実験を計画している。ゴルフ場で発生するバイオマス廃棄物(刈芝等)
を高温水蒸気でガス化し有用なエネルギー源としてゴルフ場内施設で化石燃料の代替エネル
ギーとして使う(図5)。

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K-BETSはこのプロジェクトの実施にあたり、日本のもの作りで長年経験している専門家がアド
バイザイーとしてNFKに協力し、先進型バイオマスエネルギー利用技術の普及に尽力している。
高温水蒸気を使ったガス化方式には農林バイオマス3号もある(図6)。

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高温度の生成ガスが得られ、ガスがクリーンでタールが無く設備がコンパクトになったことがN
FK方式の特徴である。水蒸気温度800℃ではタールの発生が懸念される。
お互いに競争して更にレベルの向上に取り組んで行きたい。

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