”日本の森林再生と国産材利用の意義” 林野庁 課長 渕上 和之氏 吉澤有介・本多信一

  飯能第7回森林文化講演会
講師 林野庁 林政部 木材産業課長 渕上 和之氏 

講演内容は、現状についての豊富なデータと具体的な事例で、地味な語り口ながら説得力のあるすばらしいものでした。飯能市の関係者にとって良い刺激になったことと思われます。その中から特に注目した点を、私なりにいくつか挙げてみましょう。

・わが国の森林資源について、これまでは森林全体に対して、人工林面積比41%という数字を見ていましたが、森林の蓄積量からみると、人工林の蓄積量はどんどん増加して、昭和41年には森林全体の30%だったものが、平成19年には60%にも達しています。さらに齢級別にみれば、今後利用可能となる高齢級の比率が4割から6割まで増加する見通しだそうです。利用を急がなければなりません。
・世界の木材の輸入量をみると、先進国が66%を占めているが、その中で日本がトップで全体の9%に達しています。残りが中・後進国の34%で、そこにいる中国は全体の16%という数字です。一方輸出量をみると、先進国が何と世界の75%です。木材は先進国の産業なのですね。日本はもちろんゼロです。

・立木価格については、現状ではあまりにも悲観的ですが、山元への利益還元打開策として、素材生産の効率化、加工施設の大型化、流通の合理化によるトータルコストの低減が必須です。

その供給体制構築の基本理念として、供給側はユーザーに対する契約を守ること。すなわち商品は、規格、数量を約束どおりに納入するという、あたりまえを実行することなのです。外材では当然のようにやっていることなのに、国産材ではそこが守られていない。従来からの慣行がいかにもルーズであるため、ユーザーから敬遠されているというのです。これは鋭い指摘でした。

・供給体制についても、産地を明示して品質を保証することです。愛媛県ではその体制を整えて、満を持して県産材の首都圏への売り込みを開始しました。

・森林・林業の再生に向けた改革のイメージには、厳しい現状分析を示して具体策を提言していますが、そのカギはやはり人材の育成にあるとのことでした。

・国産材利用拡大の方策として、合板生産の増強があります。合板技術が、従来の掴んでむく方式から、押してむく方式にすることで、芯材まで利用できるようになりました。合板工場も国産材に目を向けて内陸に立地する傾向が出ています。これは明るいニュースでした。

・木材利用の魅力についても熱く語っています。3,11の被災地の仮説住宅の4分の1は、地元工務店が木造で供給して好評でした。住み心地がプレハブと断然違うというのです。また北海道の牧場の牛舎を木造にしたら、牛がゆっくり休んで健康になったそうです。コンクリートでは結露して不健康だったのです。ほかにも木造の成果がたくさん紹介されました。

・公共建築物等木材利用促進法は、多くの抵抗を押し切って成立させたが効果は大きく、民間にも拡大してきました。港区のみなとモデルでは、「えこひい木」と呼んでいるそうです。

・さらに山村でのバイオマス活用にも触れ、アラブにおカネを払うよりは、地元におカネを回しましょうとの提言がありました。私たちの主張に沿っています。林野庁にも良識がありました。

ほかにも有意義な話がたくさんありましたが盛りきれません。 以上 吉澤有介

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講演は1.世界の森林を巡る状況 2.我が国の森林を巡る状況 3.我が国における木材利用の可能性が大タイトルでした。3.では木材利用の魅力について詳しい話がありました。IPCCCO算定方法には不合理な点があるので、訂正を申し込んでいる。木材は伐採時点でCO放出になる。木造建築等のCストックは認められない等、注目すべき話がありました。 以上 本多信一

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