地熱発電の可能性の検討 進藤昭夫

地熱発電の特徴(メリット)

①純国産の再生可能エネルギー

②発電時にCOを発生しない

③天候等によらず出力が安定

④年間を通じて設備利用率が高い


設備利用率の比較


太陽光  約
12%
風力   約
20%
地熱   約70%
 

地熱発電の賦存量と実績

日本の賦存量(理論埋蔵量)

-産業技術研究所の試算:
2347KW

-環境省
2011421日の調査:3300KW

現在の発電実績:約53KW

導入目標:95KW (既存+有望な開発地域、2020年まで?→NEDO地熱発電促進調査)

導入ポテンシャル(地形や法規制などの制約外):1420KW(環境省2011年)


1.蒸気発電

(1)ドライスチーム

蒸気発電を行う場合、蒸気井から得られた蒸気が殆ど熱水を含まなければ、簡単な湿分除去を行うのみで蒸気タービンに送って発電する方式

日本での実施例:松川地熱発電所(日本初)や八丈島発電所などがある。


(2)フラッシュサイクル

シングルフラッシュサイクル:得られた蒸気に多くの熱水が含まれている場合、蒸気タービンに送る前に汽水分離器で蒸気のみを取り分けて発電する方式。日本の地熱発電所では主流の方式である。

ダブルフラッシュサイクル:蒸気を分離した後の熱水を減圧すれば、更に蒸気が得られる。この蒸気をタービンに投入すれば、設備は複雑となるが、出力の向上及び地熱エネルギーの有効利用を図る方式

日本では八丁原発電所及び森発電所で採用されている。

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2.バイナリーサイクル
(binary cycle)
発電

地下の温度や圧力が低いため地熱発電を行うことが不可能であり、熱水しか得られない場合でも、アンモニアペンタンフロンなど水よりも低沸点の媒体(これを低沸点流体という)を、熱水で沸騰させタービンを回して発電させる方式。80℃~150℃の蒸気や熱水を熱源。

温泉発電(温泉水温度差発電)直接入浴に利用するには、高温すぎる温泉(例えば70120℃)の熱を50℃程度の温度に下げる際、余剰の熱エネルギーを利用して発電する方式。熱交換には専らバイナリーサイクル式が採用される。発電能力は小さいが、占有面積が比較的小規模ですみ、熱水の熱交換利用するだけなので、既存の温泉の源泉の湯温調節設備(温泉発電)として設置した場合は、源泉の枯渇問題や、有毒物による汚染問題、熱汚染問題とは無関係に発電可能な方式である。
-地下に井戸を掘るなどの工事は不要であり確実性が高く、地熱発電ができない温泉地でも適応可能であるなどの利点がある。

温泉発電の例
1)新潟県松之山温泉:2010年度から3年間、実用機の開発・実証-地熱技術開発及び産業技術総合研究所(NEDO )、
-媒体:アンモニア、源泉97℃の温泉水利用、NEDOが開発した超小型タービン発電機で能力は50kW100℃以下での既存温泉による発電の試みは全国初。
-事業費: 年間1億円程度(環境省からの全額委託事業)
参考:産総研では、低い温度領域(53120℃)での温泉発電の開発に有望な資源量を833kWと試算している。現在、2010年度の完成をめどに50kW級の温泉発電の開発が進められている。既存の高温温泉を利用して発電を行い、使用した冷却水を温泉施設の浴用

・給湯や暖房のために供給できるので、発電側に開発リスクがなく、温泉側ではエネルギーコストの低減になるため、発電事業者と温泉事業者双方にメリットがある。2020年には発電量約12kWになるとの予測。

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カリーナサイクル(Kalina Cycle)発電

バイナリー発電の一つ。アンモニア(沸点マイナス33℃)と水の混合流体を作動流体に用いた発電システム
一度気化したアンモニアは、再度水と混ぜて使用
従来のフロン等を用いた発電システムより約40
%高い効率で発電でき比較的低温な熱源による発電が可能

数百~数千Kw
の中小規模発電に適している。

この発電法は国内では、
2例あるが地熱発電との組み合わせは無い。アイスランドで2000Kwの例などあり。
<例1>住友金属鹿島製鉄所:転炉オフガス冷却温水(98℃)を利用し、88%のアンモニア水溶液にて、3500Kwの発電

<例2>草津温泉:
96℃の温泉を利用し、カリーナサイクル発電により
1000KW発電のプロジェクトが進行中

3.高温岩体発電

天然の熱水や蒸気が乏しくても、地下に高温の岩体が存在する箇所を水圧破砕し、水を送り込んで蒸気や熱水を得る方式(hot dry rockgeothermal power; HDR)

地熱利用の機会を拡大する技術として期待されている。既存の温水資源を利用せず温泉などとも競合しにくい技術とされ、38GW3800Kw)以上(大型発電所40基弱に相当)におよぶ資源量が国内で利用可能と見られている。

多くの技術的課題は解決しているとされ、また現在の技術ならばコストも9.0/kWhまで低減する可能性が指摘されている。

秋田県で、電中研とNEDOが、12Kmの井戸を掘って、水の注入と蒸気の抽出実験を実施。

• 2010
年には、オーストラリアのジオダイナミクス社が275000kWの大規模な高温岩体地熱発電プラントを建設が進められている。
(日本から電力中央研究所、東北大学、産業技術総合研究所、石油資源開発などが技術協力として参加している)。

初期コストと発電コスト

初期コスト高: (事業化が進みにくい原因)
(1)発電設備:1kW当たり約100
万円
(2)送電線の敷設費用:1km当り1億~1.5億円
(3)開発期間:探索・環境アセスから建設まで、約10年間


発電コスト:

(1)
9円~22/Kwh(資源エネルギー庁)
(2) 15年で設備償却を終えた後は、約10/kwh参考:九州電力の八丁原発電所(5.5万Kwx2発電所)は、原価償却後で約7/Kwh発電コストは化石燃料などに比べれば高いが、自然エネルギーの中では、太陽光など他の自然エネルギーに比べれば、コストは安い。

課題
①コストが高い:初期コストと発電コスト約16/wh
②開発リスクが高い:地下資源ゆえの探索リスクと期間
③立地上の問題:地元温泉業者などとの調整が難航(温泉との競合)
④自然公園法などの関係法令の諸規制:150℃以上の熱水資源量の80%が国立公園特別地域・特別保護区内。国立公園法で規制され開発できない。国立公園以外では、425万kw

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