諸問題の解決にむけて

ホームページ開設にあたり、バイオマスに関する問題意識をまとめました。

諸問題の解決にむけて
バイオマスエネルギーが真に有効活用され、地球温暖化の切り札として効果を発揮するためには「政治」「業界の姿勢」「外交」「官僚の縦割り組織」「消費者意識」などが抱える諸問題の解決が必須です。

政治
政治家のリーダーシップ、と国家間の利害を乗り越える話し合いの重要性を訴えたいと思います。ブッシュ大統領と中国の対立に象徴される国家間の利害の対立にはうんざりしています。そろそろこの問題を乗り越え、真摯な話し合いと公平な負担を合意することが政治家としての最低限の責務ではないでしょうか。
そして、国内、国民に向けては、心ある科学技術者が奮い立ち、寝食を忘れて取り組むようなリーダーシップを是非とも発揮してほしいと思います。かっての池田隼人首相やケネディ大統領のように。世界としての、国家としての明確な目標設定、ゴールの姿、適切な開発費の投入、普及を促進する法整備があれば、世の中を変えることが出来るような発明や発見、技術開発が必ず実現すると思います。

業界の姿勢
業界が永年かけて築き、大切にしてきた利権の重みは理解できるが、地球温暖化に対してだけは歩み寄りをしてほしいと切望します。ブラジルにフレックス車(エタノールを何%混ぜても良い自動車)を輸出していながら、何故、日本ではエタノールを3%以上混ぜてはいけないのか、しかもETBEでなくてはいけないのか、誰しもが抱く疑問であり、ほとんどの人は業界の説明に納得していないでしょう。沖縄の宮古島をわが国の環境モデルケースにしようという取り組みが経産省、環境省等の主導で始まりました。島で採れたサトウキビからエタノールを作りガソリンに直接混合するE3を、島に19か所あるスタンドで販売しようとする計画でしたが、石油業界の協力が得られずとん挫してしまいました。発案者の小泉元首相が今年の2月に島を訪れ、「抵抗勢力に負けるな」と激励したとの報道がありましたが、激励の言葉だけではなく、自ら業界を説得してほしいと願わずにはいられません。
明るいニュースもあります。日本経団連が強く反対し続けてきたキャップ・アンド・トレード方式の排出量取引制度の導入を容認する姿勢に変わりました。奥田トヨタ自動車相談役のリーダーシップに負うところが大きかったようです。これで、各企業の技術者は全力を挙げて自分の会社が有利になるような技術開発に取り組み、いたるところで開発競争が起こります。オイルショックの時のように競争によって全体の底上げが出来、地球温暖化防止に役立ついろいろな新しい技術が開発され、結果としてわが国の競争力が高まると思います。日本の技術者は必ず実現してくれるでしょう。技術者とは本来こういった人種なのです。

外交問題
IPCC総会では世界の科学者達が声をひとつに合わせたが、引き続いて行われたCOP13では政治家達が声を合わせることはできませんでした。政治の世界の方が難しいことは理解できますが、あからさまに損得勘定が見え見えの議論はそろそろ卒業して欲しいものです。やはり、最大の影響力を有し、最大の排出国であり、世界の警察を自任しているアメリカが先に襟を正すのが筋でしょう。新しい大統領には是非アメリカが期待されているリーダーシップを発揮して欲しいものです。

官僚の縦割り
縦割りになっているわが国の官庁組織は地球環境問題を効率よく解決するためには大変不都合です。なぜなら、バイオマスを育成するといったスタートから、最終の消費、即ちゴールの段階までには、ほとんど全ての省庁が関係しています。現状ではそれぞれ異なった見解、政令・省令、別々の許認可行政があり、良いことでも縦割りの壁に阻まれて実行できない、あるいは説得に膨大な時間がかかるといった問題が多々あります。
直接混合対ETBE問題に対する環境省と経産省の姿勢の違いが典型的な例で、努力した人や組織が翻弄されることが頻発しています。
気持ちよく努力し、効率よく成果を出すために省庁間の話し合い、組織横断的な意志決定を多くの科学技術者達が望んでいます。

消費者も歩みよらなくては・・・・
日本の消費者は品質に対して世界一厳しく、神経質である。たとえば、自動車でも、日本以外であればまったく問題にならないような、ほとんど気づかないような微小な塗装傷でも見つけ出し、クレームにします。マスコミも問題にして責任を追及します。わが国が世界一の品質を作りだした原動力でもありますが、日本の技術者が委縮している原因にもなっています。日本の技術者は長年苦しめられてきた経験から、少しでも品質クレームの危険があるようなことには絶対反対の立場になってしまいます。エタノールを3%以上混ぜてはいけない、との判断の背景には、消費者の反応を恐れてのことという見方もできます。IPCCの試算によれば、炭酸ガス濃度を450ppm(現在は380ppm)以下に抑え込めれば地球平均気温の上昇は2°C以下になり人類への深刻な影響は避けられるとのことです。地球温暖化防止という課題に限っては、450ppmm以下のレールに乗せるまでは、多少のことは我慢しようという消費者の歩み寄りも必要ではないでしょうか。

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