列状間伐について 福島 巌

山林の伐採には、主伐と間伐がある。
高性能な林業機械を活用するためには一定の地域を皆伐するのが最も効率的でコストも安く仕上げることができる。しかしこの方法は山を丸坊主にしてしまうことで、自然環境を破壊し、防災の観点や植林など山林復活の点で問題が残る。 密集したままの山林では光が届かず林床の植生が失われるなどの理由で木が育ち難いので、樹木を大きく育てる目的で間引き作業を行っている。これが「間伐」である。育てたい優良木の周辺の空間を空けてやったり、不良木を除去したりする従来のやり方を 「定性間伐」と呼んでいる。このような従来の間伐作業には制約が多い。山間の急斜面での人力による伐採、集材作業は能率が悪くコストが高い。安全上にも問題がある。
 作業員の高齢化が進み、作業そのものが困難になってきている上に、間伐材の売値が安いため全国的に間伐作業が行われなくなってきている。まれに作業をした場合でも間伐した木材は山に放置したまま腐るに任せされている。

これにたいして高性能な林業機械を活用して高能率、低コストの間伐を目指して行われているのが「列状間伐」である。散髪に例えると「トラガリ」である。
機械を使って山の斜面を筋状に伐採していく方法で、状況に応じて「3残1伐」(3列を残して1列を伐採する)とか「4残1伐」等の 選択が可能である。

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「トラガリ」によって樹冠が開け、太陽光線が入り込んで下草が生え、樹木も枝を広げる空間を確保することになる。これを長期的に繰り返すことによって健全な山林の活性化がはかれる。
樹木の良否にかかわらず伐採してしまうので一部から抵抗感を持たれているが全ての木材が高級建材になるわけでもなく、伐採した樹木の良否に応じて、高級建材からエネルギー源などの使い分けができるようになれば、合理的な間伐方法として徐々に理解が得られるものと思う。

列状間伐には次のような環境が整備されていることが必要条件となる。
林道や作業路があって車両が入り込めること。
かなり大型の機械設備が整っていること。
材木を現地で定寸に切断したり、枝払いができるプロセッサーの使用も不可欠である。

作業が大規模になり投資も必要になるので小さな山林地主が狭い範囲でやろうとしても成立しない。各個人地主や山林組合が合意の上で対象地域を可能な限り広域に設定し、かつ長期的な計画の上で実施してはじめて成立する事業である。

われわれのNPOは、これからの林業にとっての最善の間伐方法が「列状間伐」ではないかと結論づけた。そして「列状間伐」が全国に普及し、全国の山林が生き返り、林業がビジネスとして成立するために、高価な輸入林業機械ではなく、我が国に合った小回りの利く安価な林業機械の開発提案や間伐材をエネルギーとして有効活用する方法を提案することでお役に立ちたいと日夜知恵を絞っている。
福島 巌 記

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