バイオマス発電はなぜ必要か 2011年4月7日   福島 巖 

日本林業を本来の姿に復活させるには何が必要か

戦後政府の補助金政策により植えられたスギやヒノキの人工林が50余年を経て成長してきたが管理を怠ったため惨憺たる状況になっている。密植したままの樹木は太陽光を遮り山に入ると密林の暗黒状態をていしている。下草や小木が育たず落ち葉や枯れ草が提供する栄養素によって生活する微生物や昆虫などの生息環境にないため物質の循環が行われない。樹木の根が地中深く進入しないため木が育たないのと風水害で大きな被害を発生する悪条件を作ってしまっている。
山林に光が降り注ぐ環境を作ってやることが大切なことである。

山林の管理と間伐作業の必要性

  間伐には大径木を育てるための択伐や作業の効率上からの列状間伐等、目的とやり方により各種方法がとられている。京都議定書が発端となり炭酸ガス吸収源対策として政府の補助金を受けてここ数年作業が進んでいる。
しかしその実態は木を育てる環境作りというより金儲けのため効率優先の作業が行われている。
しかも伐採するだけで現地に捨てられてしまうものが多く、大雨が降ったと
き災害の原因になっている(林地残材)。
放置されて腐ってしまうとメタンガスなど温暖化ガスとしては炭酸ガスより数倍悪影響を与えるガスを生じることになる。

バイオマス資源としての活用

この山林に放置されている資源をエネルギー資源として活用していきたいということを目的の一つにして当NPOは取り組んでいる。
木材は本来建築や家具類、紙の原料など資材として大切に使われている。建設廃材などは燃料としてすでに利用されているが間伐の林地残材、小径木や欠陥丸太、端材や枝類についてもゴミでなく大切なエネルギーとして活用の道が残っている。

木材のエネルギーとしての位置付け

高度成長期以前には薪炭材が直接燃焼としてエネルギーの中心的な役割をしていたが化石燃料が安く、大量に輸入できるようになってからは石油、天然ガスと電力に取り替ってしまった。燃料として取り扱い易さ、煙や灰など環境の点、高カロリーが得られること、値段が安いことなどから薪炭材は存在理由を無くしてしまった。

しかしここにきて温室ガス排出規制、化石資源の枯渇問題などから燃料としての価値が見直されている。特に絶えず生産できる循環型資源であることと炭酸ガスの発生に対してニュートラルであることが将来性のある資源と評価されている点である。
これからの木材をエネルギー源として利用する条件としては

1)地産地消の原則であること:木材の運搬に必要以上のエネルギーを使わない。
他の燃料に対して単位重量・単位容量当たりの発熱量が低い。木材の水分%にもよるが重油に対して1/3(乾燥材)、1/6(伐採直後)であり燃料を使った輸送距離は最小に留める必要がある。

場所を移動しての加工も制限し、同一地域内(市町村)での産出・消費ができることが理想である。(地産地消)

2)薪、チップ、ペレットなどの形でストーブやボイラーなどを使った暖房目的の利用

ペレットなどに加工して燃料密度アップ、自動燃焼管理をする方法もあるがそれだけのコストをかける必要があろうか?加工することにより1020%のエネルギーが失われるとの報告もある。製材所などおがくずなどが副生的に発生する場所での活用は推奨できる。

3)電力と給湯
地域のエネルギー活用としての用途は公共設備の暖房やプール、温泉などへの給湯や発電して使い易い形のエネルギー変換を行うことが望ましい。

今後のエネルギーの動向

温暖化対策としての温室ガス排出抑制などを踏まえ、2020年、2050年のエネルギーがどのように変わっていくか世界中の注目が集まっている。日本政府機関もこれからのエネルギービジョンを発表している。
20113月に発生した東日本大地震と大津波による災害で福島第一原発がウラン型原子力発電の問題点を暴露した。今まで原発による大きなエネルギー供給を前提にシナリオが作られていたが大幅な見直しが必要になってきた。化石燃料に変わる持続可能な自然エネルギーの活用が益々重要になり次世代の中心になると想定されている。太陽光から直接熱を取ったり、太陽光発電を推進したりする方法、地熱や風力を利用するものなど各種ある。
しかし自然相手の難しさもある。日本で太陽光からのエネルギー獲得は夜間、曇り空を除くと稼働率で約
10%と見積られている。風力も風次第でバラツキが大きく安定性に欠ける。
その点バイオマス源のエネルギーは長期間に渡る光の缶詰と見ることができタイミングや数量は人為的に管理ができるメリットがある。バイオマスの活用も一つの注目点になっている。

バイオマスエネルギーの問題点


木質バオイマスの最大の問題点は集材・運搬に多額の費用がかかりコストバランスが取れないことである。
今は作業がペイしないため切った間伐材は林地残材として山に残されたまま捨てられている。作業合理化のためには日本の山に適した集材システムの構築など現場の努力と林業活動を強力に推進する地方自治体、山主、施業者が一体となった組織が必要になる。その上で大量に、コンスタントに仕事が継続できる基盤がないと事業を続けることが難しい。このキッカケを作るのは補助金制度であり、どのようにすれば道が開けるかトライ期間中は援助を与え、林業が盛んになり、専業で生きていける状態を作っていくことが重要である。

バイオマス発電の売電単価の考え方

自然エネルギーに対する買取り価格が話題になっている。太陽光発電や風力発電は初期投資額が大きいので優遇単価で売電できないと投資する人がいなくなってしまう。
日本の山から集材した木材、海外から輸入した大規模発電所向けの木材、建築廃材など木質バイオマスでもその取り扱いは違う。

 1)林業従事者に現金収入の道を確保するため伐採から集材、チップ加工、乾燥、発電を含めた全工程をカバーできる売電単価設定する。
間伐材発電に参入する人の数を増やすシステムを作り上げる。

 2)林業が活発になり大きな規模の発電が可能になることを考えて発電容量別に単価を分ける。
設備の建設費用、電気変換効率などは発電容量と密接な関係があり小規模発電のハンディキャップは大きい。

 3)発電は給湯設備を併設して発電の際発生する温湯を有効利用しないとコスト的に成り立たない。
これら発電、給湯設備を備える設備一式に対して優遇政策を推進すべきである。

 4)建設廃材などから作る電力は別体系を設定する。
収集にほとんど費用がかからないためと林業の再生と関係が無いからである。

 5)大手電力会社の発電への、海外からの輸入や国内でも遠方からの大量買付けによる集中使用は補助金の対象外とする。

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