森からのエネルギー創出 2011年2月14日

オーストリア大使館商務部が主催して標記セミナーが開かれました。
300
名余の参加者を得て盛大な会になり後援の当NPOとしてほっとしたとこ
ろです。

オーストリアは人口800万人、北海道ほどの面積ですが1人当たりのGDPは
世界でトップクラス、バイオマスエネルギーの利用率はトップです。
森林国日本の先生として学ぶことが多く大変有意義な内容でした。

オーストリアの林業に関して
森林研修所所長から基調講演があった。
ここ
10年ほど前から林道を整備したり、林業機械を導入したりして生産性を上
げているので生産量が増えている。
その結果、木材の価格が段々下がってきているので、国民はストーブやボイラ
ーを買って使いこなしている。
50%近くの山林は小規模な、農業と兼務の人の所有者で研修所では事故を減ら
すための彼らを対象に学習を行っている。
毎年
6000人が受けていて確実に災害は減っているという。
若い人たちは週末には自分の森に入って過ごし、薪を拾って帰ってくる生活を
送っている。
昔の日本のように森は生活圏に完全に組み込まれているという。

 林業機械
  林業先進国の各種機械の紹介があった。架線を使い無線操作で集材をしている
  ところのビデオ画面は迫力があった。

木質資源の状況が変わってきた
  日本ペレット協会熊崎実会長の話。
  西欧の山林国に比べて資源はあるが活用されずに眠っているのが日本の現状。
  バイオの名の下に廃物系の木材は取り合いが激しくついに無くなってきている。

  そのため山の間伐材など低質材を使うべく集積基地ができつつある。
  値段も3,0005,000/で集まるようになってきた。
  この中間土場に集まった材料は品質がバラバラでこれらを如何に分類して、
  パルプ用、ボイラーやペレット用、発電用などに分けて使い込むかが課題で
  ある。

木質バイオマス利用にはフォローの風が吹いている
炭酸ガス排出税とか再生可能エネルギーの買取り制度などが提案されていて
バイオマスは使い易い環境ができつつある。

オーストリアなどのストーブやボイラーの燃焼効率が90%近いところまでア
ップしてものすごい技術革新がなされている。

これらの設備を日本に輸入して使われているがその効果が発揮できてない。
扱うノウハウを知らないため宝の持ち腐れになっている。
燃焼効率アップには乾燥したチップの管理が最低必要である。
これらのコンサルできる技術者が不在で日本国内のペレット使用量が伸びて
いない。

ペレットやストーブの紹介
炉の内部が石で作られている。これだとじっくり温まった石の蓄熱効果で夜
間に燃料供給を絶っても朝起きても暖かい。
私の祖父が毎日イロリの灰の中に石を入れてそれをボロ布で包んでカイロ代
わりに使っていたことを思い出した。
また燃焼管理には炉内の残留酸素を測定して完全燃焼するよう空気量を制御
している。
発生する灰などは集めて肥料として有効に使っているという。

木質建材
工学院大学中村勉先生の2050年の木造建築の話があった。
今世界で直面している問題は地球温暖化や資源枯渇などの環境問題と人口縮
小と老齢化など使う側の変化である。

これらの対策を考えるとゼロカーボンや再生エネルギーの効率的利用、木造
建築の普及などが進む。
このような点から小中学校など公共施設や集合住宅などは3階建ても可能な
木造に変っていくことが考えられる。

クロスラミナーパネル(KLH)
オーストリアの建材メーカーの木材取り込みの鼻息は荒い。
これからは木造ルネッサンスが始まり、ウッドエンジニヤーが引っ張りだこ
になるとのご宣託だった。

燃える、もろい(強度がない)、腐るなど木のイメージは良くなかった。
しかしここにきてロンドンやパリで9階建ての木造ビルができている。
これを可能にしたのはKLHで60mmほどの板をベニヤのように貼り合わせた
構造材の使用である。プレキャストコンクリートの木造版である。
耐火性、耐震性もクリヤーし吸湿性能も良いので住み心地がすばらしい。

今問題になっている高周波遮断も完全にできるという。
まずは床、壁材、屋根などに適用してみたらという提案があった。

理想の住宅は
小地域自給型が望ましい。可能な限り物は運ばない。
エネルギーも太陽や近くに流れている小川の流れを利用した小水力発電を
導入する。更には
地中熱やバイオマス、都市廃棄物、宇宙への放射熱の上
手な利用を取り入れること。
木造小学校は現状まだ2~3
%しかないが木造ラーメン工法で作った学校が
登場している。

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大使館の役割
  この会に出席して聞いた声:国が小さいとはいえ国の出先機関がこのような
  小企業のPR活動を支援しているのは画期的なことである。
     この詳細な広告はURL:http://www.advantageaustria.org/jp に載る予定です。 

      文責    福島 巖

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