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2017/5/23 火曜日

米国シアトルの最新 ZEH事情視察記 -Zero Energy House-   2011/5/11 荒川英敏

カテゴリー: 技術者の現場レポート   by k-bets 編集長 @ 20:28:08

訪問日程:2017年4月10日(月)~4月17日(月)
訪問先:米国ワシントン州シアトル

米国ワシントン州シアトル訪問を選択した理由ご承知の様に、米国はトランプ新大統領の就任早々のCOP21 パリ協定からの離脱宣言は、CO2 排出量で中国に次ぐ米国の離脱だけに世界に大きな衝撃を与えました。
このニュースを見ると、米国はCO2 削減に熱心ではない気がします。しかし、米国の住宅産業のZEH(Zero Energy House の略で年間の使用エネルギーがネットでゼロの住宅)はドイツのパッシブハウスや英国のゼロカーボンハウスの様なハイレベルの省エネ化とは一線を画し、独自の国レベルのLEED 認証(Leadership in Energy and Environmental Design の略で、建物と敷地利用についての環境評価システム)をはじめ様々な規制やコードを州で独自に作り、それらは任意であるが粛々と進捗させています。      この様な世界的なサステナブルな動きの中で、世界最大の米国住宅市場のZEH 最新状況を把握することは、極めて重要なことであります。米国シアトルを中心とするワシントン州は昔から日本の木材・建材産業や住宅産業と結びつきが強く、25 年ほど前の輸入住宅ブームでは、ワシントン州から日本の住宅産業が多く建材や住宅パッケージを輸入してた経緯があります。その関係で住宅産業の視察も好意的に受け入れてくれる素地があります。
また、ワシントン州は全米の中でもエコロジーに関心を持っている州のひとつでもあり、住宅産業も先進的なZEH に取組んでいる企業が多く見られるとの情報がありました。一方、シアトルには100 年以上も前から時代を先取りした物づくりの最高峰であります世界的な航空機メーカーボーイング社の本社工場や関連工場が至る所にあり、正に世界の航空機産業のメッカの様相です。
また近年ではIT によって世界を変えてしまった情報産業の雄、マイクロソフトの本社や関連企業、ネット販売で世界に変革をもたらしたアマゾンの本部、さらに世界的にコーヒー店を展開しているスターバックスの本部等、グローバル企業が目白押しで、世界を変えた革新的なアイデア溢れるシアトルは今、米国南部からの移住者が多く、高層ビルやマンションの建設ラッシュで、活気溢れる都市でもあります。
今回は、住宅・建築業界に焦点を絞り最新のシアトルのZEH 事情視察に行ってきました。

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米国での環境性能基準の今後の進捗についての情報交換をしながら、特に今回の訪米で2 種類のタイプがある24 時間熱交換型換気システム(MVHR)をどのように使い分けているか関心が高かったので尋ねると、Eさんは、米国では排気用の換気扇のみで、空気の取入れは窓を少し開けて行うのが一般的な換気です。最近の新築住宅で断熱性能が良い建物はHRV(Heat Recovery Ventilation 顕熱交換型)かERV(Energy Recovery Ventilators 全熱交換型)のどちらかが使われます。
どちらを使うかは、州の気候によって様々です。北部の寒冷地で夏もエアコンが必要ない地域では顕熱型が、南部の高温多湿の地域には全熱型が向いていると言われています。
しかし、同じ州でも気候が異なる地域は沢山あり、結局ビルダーがお客さんと相談して決めているとのことでした。ワシントン州はシアトルを中心とする西部地域は適度な湿度だが室内の湿度が高すぎる時は過剰な湿気を排出する必要があるので顕熱型換気が適しており、一方、ヤキーマを中心とする東部は夏は暑く、冬は寒くて乾燥しているので全熱型換気が適していると話していました。
業界団体MBA が推奨しているBuilt Green 仕様(SIPS-断熱構造パネルを使った高性能住宅)やLEED 仕様の住宅向けに顕熱型と全熱型の両方を推奨しています。
米国に住宅換気機構(Home Ventilating Institution– HVI)と言う換気システムの認証機構があり、米国で販売される全ての熱交換型換気システムはHVI 認証を取得する必要があります。HVI がホームページ公開している約1700種類の認証換気システムを見ると顕熱型が6割、全熱型が4割となっています。
広大な米国では多様な気候の州があり、換気システムを顕熱型(HRV)、全熱型(ERV)と区別して対応しており、ヨーロッパはもともと北欧の断熱性能が極めて高い住宅向けにMVHR が開発された経緯があり、米国とヨーロッパの違いに興味深いものがありました。

視察の感想  

米国はすべてが大雑把でZEH や省エネ住宅に対しても、とてもヨーロッパのレベルに達していないと思っていました。今回、米国ワシントン州シアトル地域の最新の住宅建築市場を視察して、その考え方を変えねばと実感致しました。
特に米国から1998 年に発祥した建物と敷地利用についての環境評価システムLEED 認証システムは全世界150 カ国で約20,000 件のプロジェクト登録が行われるまでに普及しており、内米国では約10,000 件以上のプロジェクトが登録されています。
日本ではグリーン・ビルデイング・ジャパンが設立され、まだ緒についたばかりですが、これからの普及が期待されます。ドイツで発祥したパッシブハウス規格やイギリスのゼロカーボンハウスは建物そのものの性能に言及してるが、LEED は建物及び敷地利用の環境評価まで言及しており、コンプレヘンシブ評価システムとしては世界最高クラスと言っても過言ではないと思います。
一方、ワシントン州の業界団体MBA で作成されたBuilt Green 認証は、ローカルの民間レベルとは言え、LEED 認証の最高ランクPlatinum(プラチナ)を目指している意気込みは大変なものだと思います。この様に米国は、国から州、民間レベルまでグリーン認証に熱心であることが確認できたことは、トランプ大統領の鶴の一声で、COP21 パリ協定からの離脱したことに大きな矛盾を感じ得ません。
今回の訪米で見聞した住宅造りの建材、技術、設備等の基本的なパターンとして:-

・SIPS(断熱構造パネル)
・SIPS 接続の簡素化
・木質枠トリプルサッシと窓
・コンクリート床の床暖房(ヒートポンプ熱源で室温+5℃の低温床暖房)
・太陽光パネル(10kw クラス)
・雨水利用
・電気自動車電源の活用
・簡素化された気密測定システム
・木質廃材の再利用
・窓の水平開閉による涼の取り込み
・平屋根

等が見られました。

SIPS、木質トリプルサッシと窓、大型太陽光パネル、雨水等を大胆に利用している様子に目が奪われました。
日本の住宅業界も、米国の様々な示唆に富むアイデイアを積極的に取り入れることを願っています。(了)