「再生可能熱インセンテイブの導入を提言」 2015 年9 月3 日 荒川英敏

(提言)日本でも英国で導入済みの再生可能熱インセンテイブ(RHI 制度)の導入を!
英国も太陽光発電に代表される、再生可能エネルギー(以下、再生エネ)での発電に対しての、固定価格買取制度(FIT)が実施されています。
一方、2011 年11 月より事業所向け(商業施設、宿泊施設、病院、学校等)で、再生エネで生成された「熱」の固定価格買取制度と言うべき再生可能熱インセンテイブ(以下、RHI 制度)が導入され、2015 年4 月までの42 ヶ月間で累計申込み件数は13,111 件、認定件数は9,520 件、発熱容量は1,565MW 熱に達し着実に増加しています。
2014 年4 月には、世界初の住宅向けのRHI 制度が導入されました。2015 年4 月までの13 ヶ月の累計申込み件数は40,318 件、認定件数は32,962 件、発熱容量は176,639KW 熱と急増しています。
これは、担当省庁であるエネルギー・気候変動省(DECC)の各都市を巡回しての地道なRHI 制度のPR 作戦と、これを受け入れる素地、つまり多くの事業所や住宅オーナーのCO2 削減への関心の高さがRHI 制度への申し込み件数増加につながっているものと思われます。
住宅向けRHI 制度では再生エネで生成された「熱」1kW 熱h 当り、木質バイオマスボイラーの場合には12.2 ペンス(23 円)、太陽熱温水器の場合は19.2 ペンス(36 円)、空気熱回収ヒートポンプの場合は7.3 ペンス(14 円)、地熱回収ヒートポンプの場合は18.8 ペンス(35 円)のインセンテイブが国から支払われます。この他に熱量計の取付、データの読取り、メンテナンス等の費用として一戸当り£200/年(約38,000 円/年)の補助金が向こう7 年間支給されます。
英国では、住宅の給湯・暖房の熱源にガスの使用が多く、英国の全エネルギー消費の28%を占めています。従って、住宅の給湯・暖房の熱源を、再生エネに転換させることは、英国が目標にしている、2050 年の全住宅の再生エネ化への重要なステップであります。その進捗の過程で、具体的には2030 年までに2300 万世帯の1/3 に相当する、800 万世帯の給湯・暖房の再生エネへの転換が一つの目標となっています。RHI 制度の導入は、英国の全エネルギー消費によるCO2 排出量を2050 年までに1990 年比で、80%削減する目標達成に大きく貢献することになるのです。
日本も、住宅の全エネルギー消費の54%は給湯と暖房に係わるエネルギーであります。この熱源の再生エネへの転換は、重要なテーマであるはずです。特に、国土の70%を占める森林の間伐材を熱源とする木質バイオマスボイラー、比較的設備費が安く国民にも理解し易い太陽熱温水器や空気熱、地中熱回収ヒートポンプ等対象に、まずは住宅向けRHI 制度の導入を提言致します。
英国で導入出来て、日本で導入できない理由はないと考えます。(了)

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