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2016/6/8 水曜日

「マンモスのつくりかた」ベス・シャピロ著2016年6月8日吉澤有介

カテゴリー: 気候・環境,科学技術   by k-bets 編集長 @ 21:26:00
  • — 絶滅生物がクローンでよみがえる—
    最後のマンモスは今から約3700年前に死にました。奇妙な鳥のドードーは1681年に姿を消しています。このような絶滅した生物たちを、今日の技術でよみがえらせることはできないものでしょうか。iPS細胞や、ネアンデルタール人の古代DNAの解析など、遺伝子技術は急速に進歩しています。恐竜はムリとしても、マンモスならシベリアの凍土から保存状態の良い標本が見つかっているので、もしかしたら復活できるかも知れません。
    本書では、絶滅種の復活に向けた科学者たちの取り組みと、関連技術の進歩について紹介しながら、なぜ絶滅種を復活させるのか、そこにどのような問題が存在するのかについて、さまざまな角度から深く考察しています。例えば危険な病原体も復活しかねないこと、復活できたとしても住むべき環境が用意できるのか、野生に戻したときに現在の生態系を破壊しないのか、それより現在の生物の絶滅を防ぐことが優先ではないかなどです。
    しかしこの脱絶滅研究は必然の流れとして動きはじめています。倫理的な問題を抱えながらも、脱絶滅の技術が種や生息環境の保全におおいに役立つ可能性があるからです。
    マンモスは、なぜ絶滅したのでしょうか。化石の記録によると、最後の氷河期に広く繁栄していたのに、気候の温暖化に伴い、およそ1万2千年前に多くの大型動物が絶滅してゆきました。ちょうどそのころに人類が全大陸に拡散しています。すべてが人類による狩りによるといえないにしても、大きな要因ではあったでしょう。種の絶滅は現在も続いており、人類の責任は大きいのです。マンモス復活プロジェクトが各国で始まりました。
    まず保存状態の良い標本を見つけます。著者はカナダの現地で、凍土から掘り出したばかりの骨から無傷のゲノムを取り出しました。その際に他の有機体のDNAによる汚染防止は完璧でなければなりません。それでも古代からの他のDNAが共存しているから厄介でした。マンモスのDNAの分離は、本来的に至難の技なのです。映画ジュラシックパークは良く出来た話ですが、琥珀は古代DNAを保存できず、現実にはありえないことでした。
    同じころ日本の入谷京大名誉教授らのグループもこの難題に取り組んでいました。理研の若山氏も核移植を試みています。しかしいずれもクローン作成には至っていません。発掘されたマンモスの細胞からクローンをつくる手法は、実現できそうもないのです。
    むしろ単純に交配による遺伝子工学の過程を利用してはどうか。もっとも毛深くて寒さに強い現存のゾウを見つける。それらを互いに交配して数世代も経てばマンモスになるでしょう。「戻し交配」という技術ですが、あまりにも時間がかかります。また代案として、ゾウのゲノムを少しずつマンモスのゲノムに変えてゆく方法も提案されました。ハーバード大学のチームが、マンモスとアジアゾウのゲノム配列を比較して、その重要部分を分子ハサミで切断・貼り付けして、編集したゲノムを持つ生物体を創造するというのです。もし実現できたとしても、そこで蘇った生命は、もとのマンモスとは同じではない。しかし、失われた生態系の一部でも復活できたら、そこには大きな意義があることでしょう。「了」