地球を突き動かす「超巨大火山」佐野貴司著 2015年11月22日 吉澤有介

–   新しい地球学入門 -
地球誕生から46億年の現在でも、海底の拡大による大洋の形成や、大陸同士の衝突による巨大山脈の隆起といったダイナミックな現象が続いています。その地球の活動を実感できるのが火山の噴火です。しかしその火山活動も地球全体の運動に比べるとごく微小な規模に過ぎません。火山は偏在し、マグマは深くても地下100kmくらいで、地球の半径6400kmからみると、その情報は極めて少ないのです。火山学はなかなか進みません。

ところが最近、長い地球の歴史において大規模に大陸を動かしてきた超巨大火山がいくつも存在することがわかってきました。その調査はまだ始まったばかりですが、マグマがつくられ、大陸を引き裂く全マントル規模の大循環を知る新しい地球学が生まれたのです。著者は超巨大火山の数少ない研究者として、その生々しい現場を紹介しています。

1994年夏、日本から約1500km東の太平洋の深海底で、高さ30km、面積は日本の国土に匹敵する超巨大火山が発見されました。著者は2009年にアメリカの深海掘削船ジョイデス・レゾリューション号で、各国の研究者と2ヶ月の調査を行っています。この超巨大火山は「シャッキー海台」と呼ばれ、3つの山塊からできていました。掘削調査の結果、この巨大海台は1億5千年ほど前に噴火した火山島で、海面近くまで成長し、その後1億年かけて現在の水深3000mまで沈んだことがわかりました。その山塊は、溶岩の厚さや成分で調べてみると、単一の巨大火山でした。大きさは阿蘇山などとはケタ違いで、日本列島全体に匹敵し、太陽系最大の火山である火星のオリンポス火山をも超えていたのです。

このような超巨大火山は、地球上に100以上もありました。最大のものはパプアニューギニアに近い赤道直下にあるオントンジャワ海台で、その面積は日本の国土の4倍以上です。またインドのデカン高原も火山でした。その多くは白亜紀(1億4500万年~6600万年前)に噴火していたこともわかりました。ちょうど恐竜の時代と重なります。

恐竜の絶滅は巨大隕石が地球に衝突したことが主な原因とされ、その状況証拠もあります。しかしデカン高原の大噴火もまた、大絶滅の大きな要因だったのかも知れません。

超巨大火山の研究で、マントル全体の動きや、地球中心部の核の構造が解明されつつあります。地球の内部構造は次第に明らかになってきました。中学では、地球の内部を地殻、マントル、核の三層構造と教えていますが、実際はもっと多層で、マントルも大部分が高温の岩石であり、ドロドロのマグマは外核のごく一部にあるだけなのです。東工大の広瀬敬教授らは、超高圧実験によりマグマの成因に取り組み、大きな成果をあげました。
マントルでマグマが出来る場所は、中央海嶺、沈み込み帯と、ホットスポットです。日本の火山は沈み込み帯にありますが、ハワイなどは独立のホットスポットで、そこでのマントルが上昇してマグマになるメカニズムはブルームと呼ばれ、厚い大陸プレートを引き裂く力になりました。大陸移動の原動力です。大陸を分裂させている最も新しい超巨大火山活動は紅海の両岸で、大地溝帯の現場でその実状を見ることができます。本書は、地球の内部構造とその活動を追う、超巨大火山研究の最先端を詳しく伝えていました。「了」

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