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バイオマスについて

  • コラムバイオマスについて
    技術者のプロの目線で

バイオマス(化石資源ではない、現生生物体構成物質起源の産業資源)について

目次

  1. バイオマスとは // シロアリ / / ガス化発電 / 炭を見直そう / お米 / 林業へ工業を /
  2. 諸問題の解決にむけて // 政治 / 業界の姿勢 / 外交 / 官僚の縦割り組織 / 消費者意識 /
  3. バイオマスとは

    バイオマスは光合成によってつくり出される生物由来の資源で、代表的なものは植物です。石油や石炭などの化石資源には限りがありますが、バイオマスは太陽と水と炭酸ガスそして植物がある限り永遠につくり続けることが出来ます。

    カーボンニュートラルとは...バイオマスは有機物であるから燃焼させるとCO2が排出される。バイオマスの中の炭素はその成長過程で光合成で
大気から吸収している。そのためバイオマスを使用しても大気中のCO2を増加させてないと考えられる。

    光合成によってつくりだされるバイオマスをエネルギーに換算すると、世界人類が使用している全エネルギーの8~10倍もあります。ところが、バイオマスが成長する場所(森林など)と私たちが生活する場所が離れていたり、かさばっていて、石油や石炭などの化石燃料に比べて扱いにくいなどの理由で今まではあまり利用されてきませんでした。
    ところが、近年、地球温暖化を防ぐ切り札の一つとして注目を浴びるようになりました。

    バイオマスは、サトウキビに代表される「資源作物」、間伐材などの「未利用バイオマス」、生ゴミなどの「廃棄物系バイオマス」に分類されます。

    資源作物サトウキビ、トウモロコシ、パームヤシ、お米
    未利用バイオマス間伐材、稲わら、バガス(サトウキビの搾りかす)、トウモロコシの茎芯葉、藻
    廃棄物系バイオマス生ゴミ、廃食油、剪定枝、廃木材、家畜のし尿、下水汚泥

    いずれもエネルギーとして利用しやすい形に変換する必要があり、代表的な変換方法が「発酵」「ガス化」「発電」「固形」です。

    どのようなバイオマスに注目し、どのような変換方法で有効に活用するか、世界中の科学技術者達が懸命に取り組んでいます。興味深い研究が着々と進んでいます。

    利用形態主なバイオマス原料用途
    直接燃焼木質系、各種廃棄物発電、熱利用
    混焼木質系、農業残渣発電
    ガス化木質系、各種廃棄物ガス燃料、発電
    炭化木質系炭、土壌改良材
    エステル化植物油脂バイオディーゼル燃料
    メタン発酵農業畜産残渣、生ゴミガス燃料
    エタノールとうもろこし、さとうきび他バイオガソリン燃料
    堆肥化農業畜産残渣、生ゴミ堆肥、肥料

    私たちが調査し検討した中から期待できそうで面白い事例をいくつか紹介しましょう。

    シロアリ

    現在、世界で最も大量に利用されているのがサトウキビとトウモロコシですが、大規模な耕作を必要とするために森林が破壊されたり、食料の値上がりを招くといった問題を抱えています。
    そこで注目を集めているのが廃木材や稲わら、サトウキビの茎や葉などの「未利用バイオマス」です。未利用バイオマスの課題はセルローズやリグニンといった、硬くて丈夫な細胞を如何にして、サトウキビのように、短期間で発酵させることが出来るか、です。
    そこで注目されたのが「シロアリ」です。白アリは木材を食べ、消化し、栄養にしています。白アリが体内に宿している特殊な微生物が固いセルローズを分解しているのです。このシロアリが体内に宿している微生物の力を利用しようという研究です。牛の胃袋の微生物も同じ効果が期待できるという説もあります。

    藻のイメージ 水中の植物、藻の研究も盛んです。陸上植物よりも光合成の効率が良い藻の存在が発見されたり、直接油を生成する藻、水素を発生する藻等々、期待が膨らみます。

    ガス化発電

    高温の水蒸気で木材のセルローズを破壊し、ガス化し、このガスで発電する方法です。
    高度な技術を使って、質の良いガス(エネルギーを沢山含んだ)を発生させ、ガスでエンジンを回して発電しようとする研究です。発電用のエンジンとして、スターリングエンジンの可能性なども見直されていて、わたしたちのNPOが支援をしています。
    間伐材や稲わらなどが発生する現場の近くで効率よく、競争力のあるコストで小規模な発電が出来るかどうかが実用化の鍵です。

    炭を見直そう

    炭のイメージ 炭はエネルギー密度(体積当たりのエネルギー)が大きく、扱いやすい利点があります。 間伐材が発生する現場で効率よく大量に炭を作る方法が実用化されつつあり、活用方法の知恵と工夫があれば、見直されるでしょう。

    お米

    お米のイメージ お米離れ、生産調整、休耕田などなど、悪いイメージばかりのお米が見直されつつあります。稲作という農業は、調べれば調べるほどすばらしい農業ということがわかります。毎年つくることが出来(連作が可能)、日本の気候風土にぴったりと合っています。
    何よりも水を大切に使い、環境にやさしい素晴らしい農法です。数千年にわたって先達たちが残してくれた優れた栽培技術があります。将来突然やってくる食糧危機に備え、放置され、荒れるにまかせてきた休耕田を活用しようとする試みが始まっています。キーワードは「まずいお米」です。味は落ちるが収量の多い稲を植え、採れたお米を発酵させてアルコールを作り、ガソリンに混ぜて自動車用燃料にするのです。
    そして、いざ食糧危機になった時は、そのお米を我慢して食べるか、美味しいお米に植え替えます。 農林水産省が旗振り役になり昨年度から北海道と新潟でプロジェクトがスタートしています。日本の特色を生かしたものであり、ぜひ成功させたいプロジェクトです。

    林業へ工業を

    林業へ工業をのイメージ いろいろと調査し、検討すると、わが国の最大の問題は「森林資源を有効に活用できていない」ところに行き着きます。
    戦後、国の政策として日本中に密植した杉やヒノキが荒れるにまかせて放置されています。日本国土に存在するバイオマス(樹木)は体積で38億立方メートル、年間に育つ量は1億立方メートルといわれていますがほとんどは活用されていません。
    外材に価格で競争出来ない、地形が急峻で、搬出にコストがかかりすぎる等々、理由は沢山ありますが現場を調査したり、林業関係者の方々のご意見を伺い、活用のための指針として以下の二つを掲げました
    (1) 樹木を建材の原料だけでなく、エネルギーの資源でもあるとの見方を普及する。
    そのために
    (2) 林業の分野に工業を参画させる。
    私たちは林業という業界に最先端の機械工学、ロボット工学を導入し、わが国の林業に適した林業機械を開発し、森林の手入れや間伐材の搬出の機械化、自動化すれば林業関係者の方々が直面している問題のいくつかは解決できるのではないかと考え、調査研究を行っています。

    諸問題の解決にむけて

    バイオマスエネルギーが真に有効活用され、地球温暖化の切り札として効果を発揮するためには「政治」「業界の姿勢」「外交」「官僚の縦割り組織」「消費者意識」などが抱える諸問題の解決が必須です。

    政治

    政治家のリーダーシップ、と国家間の利害を乗り越える話し合いの重要性を訴えたいと思います。ブッシュ大統領と中国の対立に象徴される国家間の利害の対立にはうんざりしています。そろそろこの問題を乗り越え、真摯な話し合いと公平な負担を合意することが政治家としての最低限の責務ではないでしょうか。
    そして、国内、国民に向けては、心ある科学技術者が奮い立ち、寝食を忘れて取り組むようなリーダーシップを是非とも発揮してほしいと思います。かっての池田隼人首相やケネディ大統領のように。世界としての、国家としての明確な目標設定、ゴールの姿、適切な開発費の投入、普及を促進する法整備があれば、世の中を変えることが出来るような発明や発見、技術開発が必ず実現すると思います。

    業界の姿勢

    業界が永年かけて築き、大切にしてきた利権の重みは理解できるが、地球温暖化に対してだけは歩み寄りをしてほしいと切望します。ブラジルにフレックス車(エタノールを何%混ぜても良い自動車)を輸出していながら、何故、日本ではエタノールを3%以上混ぜてはいけないのか、しかもETBEでなくてはいけないのか、誰しもが抱く疑問であり、ほとんどの人は業界の説明に納得していないでしょう。沖縄の宮古島をわが国の環境モデルケースにしようという取り組みが経産省、環境省等の主導で始まりました。島で採れたサトウキビからエタノールを作りガソリンに直接混合するE3を、島に19か所あるスタンドで販売しようとする計画でしたが、石油業界の協力が得られずとん挫してしまいました。発案者の小泉元首相が今年の2月に島を訪れ、「抵抗勢力に負けるな」と激励したとの報道がありましたが、激励の言葉だけではなく、自ら業界を説得してほしいと願わずにはいられません。
    明るいニュースもあります。日本経団連が強く反対し続けてきたキャップ・アンド・トレード方式の排出量取引制度の導入を容認する姿勢に変わりました。奥田トヨタ自動車相談役のリーダーシップに負うところが大きかったようです。これで、各企業の技術者は全力を挙げて自分の会社が有利になるような技術開発に取り組み、いたるところで開発競争が起こります。オイルショックの時のように競争によって全体の底上げが出来、地球温暖化防止に役立ついろいろな新しい技術が開発され、結果としてわが国の競争力が高まると思います。日本の技術者は必ず実現してくれるでしょう。技術者とは本来こういった人種なのです。

    外交問題

    IPCC総会では世界の科学者達が声をひとつに合わせたが、引き続いて行われたCOP13では政治家達が声を合わせることはできませんでした。政治の世界の方が難しいことは理解できますが、あからさまに損得勘定が見え見えの議論はそろそろ卒業して欲しいものです。やはり、最大の影響力を有し、最大の排出国であり、世界の警察を自任しているアメリカが先に襟を正すのが筋でしょう。新しい大統領には是非アメリカが期待されているリーダーシップを発揮して欲しいものです。

    官僚の縦割り

    縦割りになっているわが国の官庁組織は地球環境問題を効率よく解決するためには大変不都合です。なぜなら、バイオマスを育成するといったスタートから、最終の消費、即ちゴールの段階までには、ほとんど全ての省庁が関係しています。現状ではそれぞれ異なった見解、政令・省令、別々の許認可行政があり、良いことでも縦割りの壁に阻まれて実行できない、あるいは説得に膨大な時間がかかるといった問題が多々あります。
    直接混合対ETBE問題に対する環境省と経産省の姿勢の違いが典型的な例で、努力した人や組織が翻弄されることが頻発しています。
    気持ちよく努力し、効率よく成果を出すために省庁間の話し合い、組織横断的な意志決定を多くの科学技術者達が望んでいます。

    消費者も歩みよらなくては・・・・

    日本の消費者は品質に対して世界一厳しく、神経質である。たとえば、自動車でも、日本以外であればまったく問題にならないような、ほとんど気づかないような微小な塗装傷でも見つけ出し、クレームにします。マスコミも問題にして責任を追及します。わが国が世界一の品質を作りだした原動力でもありますが、日本の技術者が委縮している原因にもなっています。日本の技術者は長年苦しめられてきた経験から、少しでも品質クレームの危険があるようなことには絶対反対の立場になってしまいます。エタノールを3%以上混ぜてはいけない、との判断の背景には、消費者の反応を恐れてのことという見方もできます。IPCCの試算によれば、炭酸ガス濃度を450ppm(現在は380ppm)以下に抑え込めれば地球平均気温の上昇は2°C以下になり人類への深刻な影響は避けられるとのことです。地球温暖化防止という課題に限っては、450ppmm以下のレールに乗せるまでは、多少のことは我慢しようという消費者の歩み寄りも必要ではないでしょうか。